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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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瀬戸さん

夏休みの宿題はダンジョンに潜る合間の時間を使ってほとんど片付けていた。

いつもなら、午前中に使い果たした魔素を回復させる午後の時間は、家で静かに読書をしたり体を休めたりして過ごすのが常だった。しかし今日は、ポーチの中に眠る一本の『牙』が悠太を外へと連れ出した。


向かった先は東京ダンジョンの広大な敷地内に併設された施設、ダンジョン研究所——通称『ダン研』である。


ここは世界中のダンジョンから集められた情報を集約し、あらゆる調査や実験、新技術の開発を行っている覚醒者たちの聖地だ。物々しい警備を通り抜けて中に入ると、そこは役所の庁舎のように機能的な空間が広がっていた。壁の案内板には各課の名称がズラリと並んでいる。


(ええと……瀬戸さんは確か、ここだって言ってたな)


悠太は指で案内板をなぞり『R&D(研究開発)』と記載されたフロアを目指してエスカレーターを上がった。


フロアに足を踏み入れれば、そこはまるで未来のテーマパークのような光景だった。アーチ状にくり抜かれた巨大な入口が並び、その向こう側にはダンジョン産の素材で作られたと思われる多種多様な物品が展示されている。


鈍く光る黒銀の甲冑、見たこともない形状の弓、さらにはキャンプ用具のような日用品から、魔石を燃料に動くと思われる小型の乗り物まで。いたるところに未知の技術が溢れていて、悠太は思わず圧倒され足を止めた。


「すごいなぁ。ここ全部、ダンジョンのドロップ品で作られてるのか」


感心しながらも、キョロキョロと周囲を見渡し、キャンプで如月から紹介された瀬戸の姿を探した。


「確か、ここにいつもいるって聞いてたんだけど」


広大なフロアをしばらく歩き、最新の装備品が並ぶショップ風の展示エリアに差し掛かった時のことだ。

ショーケースの前で両手を前に揃えて組み、わずかに口を開けながら一点をボーッと見つめる小柄な女子生徒の姿が目に留まった。


「……瀬戸さん?」


悠太が声をかけると、女性は「はっ!」と肩を揺らし、現実に引き戻されたかのように驚いた。丸い眼鏡の奥の瞳が怯えるように悠太を捉える。


「あ、あの、キャンプの時の……甘露寺さん、ですよね?」


「うん。急に来てごめん。如月さんから、ここにいるって聞いてたから」


「あ、いえ、全然大丈夫です。ちょうどこの子のフラクタル化現象について一定の仮説が完了したところなので、タイミングバッチリでした!」


そう言うと瀬戸は、目の前にある爬虫類の皮のような素材でできた鎧を愛おしそうに撫でた。


「そ、そう?」


彼女は同級生であるのだが、キャンプの時と同様、終始丁寧な敬語で接してくる。


(ちょッと変わった人なのかな? とりあえずタイミング良かったならいいか…)


「何か私に用事ですか?」


と小首をかしげる瀬戸に、悠太は周囲に人がいないことを確認し、ポーチから布に包まれた牙を取り出して、彼女に差し出した。


「これ、今日の午前中に第二階層で拾ったんだ。ドロップ品だと思うんだけど」


瀬戸は慎重にそれを受け取ると、眼鏡を指で押し上げて凝視した。


「これは牙ネズミの門歯ですね。低層階ではたまに見かけるドロップアイテムです。正直、これ一つで何かすごいものが作れるというわけではありませんが……」


そう言って申し訳なさそうにしつつも、牙を光にかざして熱心に観察を続ける。


「でも、甘露寺さんが実際にドロップ品を持ち帰ってきてくれたことが嬉しいです。これ単体では矢尻の材料か、加工の練習用くらいにしかなりませんけど、数を集めれば何かの強化素材に混ぜることもできますから。もしよければ、私に預けてもらえませんか?」


「もちろん。そのために持ってきたんだ」


悠太の返事を聞くと、瀬戸は「ありがとうございます」と嬉しそうに微笑んだ。


(俺が持ってても仕方ないし、これからはある程度貯まったらまとめて持ってこよう)


自分の戦利品が生産系の手に渡り、何かの役に立つ。そんな新たな可能性に悠太は確かな手応えを感じた。


規定買取額の二千円を受け取り、悠太はダン研を後にする。


「ちょっと変わってそうだけど、瀬戸さんと話してるとなんか癒されるなぁ」


ダン研の喧騒の中、次はもっと価値のあるものを持ち帰ろうと密かに決意を新たにした。

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