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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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アンダーマインの進化

ステータスアップのためスキルポイントを大量に消費した結果、悠太の手元に残されたポイントのストックはかなり心許ないものになっていた。


だが、東郷のアドバイスに従って敏捷性を引き上げたことは流浪人の初太刀を見切るという恩恵をもたらした。


「まぁ、ない袖は振れないしな。今は持ってる手札を磨く方が先決か」


夕食を終えた悠太はすぐさま静岡ダンジョンの第八階層へと舞い戻っていた。目標は定まっている。現在のスキルの底上げ、まずは罠使いにとって防御の要となる『アンダーマイン』のレベルアップだ。


第八階層の武家屋敷が立ち並ぶ薄暗い街道を進み、悠太は現れる流浪人を片端から罠にハメていった。


これまでは『バネ床』『キューブ』『落とし穴』の三連コンボで仕留めていたが、今回は流浪人が三段加速で突っ込んでくる初太刀を紙一重でかわした後、必ず意識的に『アンダーマイン』を発動させ、その足元へ紫の光の輪を絡め取らせるようにした。


「ギギッ……!?」


敏捷性を大幅に落とされ、スローモーションのようになった流浪人の攻撃を避けつつ、効果が切れたらすぐさまアンダーマインをかけ直す。そんな経験値稼ぎを何度も繰り返していると、待望のシステムアナウンスが悠太の脳内に響き渡った。


『【アンダーマイン】の熟練度が一定値に達し、レベル4に上昇しました』


「よし、あがった!」


静岡に来てから練習を重ね、レベル3まで上昇していたスキルレベルがようやく4になったのだ。

悠太はすぐに戦闘の合間を縫って、ステータス画面からスキルの詳細を確認する。


残念ながら効果時間である「120秒」という数値に変化はなかった。

二分間もデバフが持続すれば実戦では十分とはいえ、持続時間の延長を少し期待していた悠太はわずかに肩を落とす。

しかし、レベル4への進化に伴い、新たに特殊効果として『輪の数+1』が追加されていた。


「輪の数+1? どういうことだ?」


意味を確かめるべく、悠太はさきほどからレベルアップに貢献してくれている流浪人へと狙いを定める。


アンダーマインの効果が切れ、流浪人が砂利を蹴って、不気味な黒い影となり加速する。

一歩、二歩、三歩。

鋭い踏み込みとともに放たれる横薙ぎの一閃を、レベル5になった敏捷性を活かして背後にステップしながら鮮やかに回避。


「検証させてもらうぞ」


スキルを発動した瞬間、これまでは一つしか出現しなかった紫の光の輪が自らの目の前にぽん、ぽんと二つドロップされた。


悠太はその二つの光の輪を左右の手で一つずつ掴み取る。


もともとアンダーマインは、既にデバフ効果が適用されている相手には重複して作動しないという制約がある。

そのため、これまでは一つの個体に対して、同時に二箇所へデバフをかけることは不可能だったのだ。それが、この特殊効果によって追加された輪を使い、二箇所へのデバフが可能になった。


「試してみるか……」


悠太はまず、いつも通り右手に持った一つ目の光の輪を眼前の流浪人の脚めがけて投げつけた。


輪は吸い込まれるように細い足首へと絡みつき、流浪人の下半身の自由を奪う。急激に敏捷性を喪失した流浪人は、その場に縫い付けられたかのように突進の勢いを止められた。


ここまではいつもと同じ。


アンダーマインの効果は、その罠が命中した「部位」に強く依存する性質を持っている。

これまでは脚の敏捷性を奪ってどれだけ速度を低下させたとしても、それはあくまで移動の話。

上半身のとりわけ刀を振るう「剣速」まで低下させることはできなかった。

だからこそ、不用意に近づけば足が止まった流浪人からでも高速の凶刃が飛んでくる危険が残っていたのだ。


だが、今の悠太の左手にはもう一つの光の輪がある。


「こっちもくらえ」


悠太は流浪人が体勢を立て直し、怒りに任せ凄まじい風切り音とともに横薙ぎに振り抜いてくる「右腕」へと慎重に二つ目の輪を投げつけた。


パチン、と光の輪が流浪人の手首から肘にかけてを締め上げる。


空気を切り裂くはずだった漆黒の刃の軌道が、まるで水中で刀を振っているかのように、ぐにゃりと目に見えてスローダウンした。


「おぉ、めっちゃ効いてる!」


踏み込みの速度だけでなく、筋力が低下したことで最大の脅威であった剣速までもが同時に遅くなった流浪人は、もはや牙を抜かれた狼も同然。


蚊を叩くかのような緩慢な動きになった流浪人の攻撃を見切ることなど、今の悠太にとっては造作もないことだ。


「キューブ!」


悠太は流浪人の進路上に半透明の立方体を出現させ、その身を閉じ込めた。


以前ならキラービー以上に手数が多く、四方八方へ暴れ回る流浪人に対して、キューブの成功率は二割ほどと低かった。しかし、足だけでなく腕の速度まで完全に奪った状態の今、キューブの捕食成功確率は以前に比べて格段に上がっていた。


収縮するキューブになす術なく、流浪人の巨体をそのまま完全に押しつぶして仕留めると、床にはコロンと綺麗な魔石だけが転がった。


「今まではバネ床、キューブ、落とし穴の三連コンボでなんとか仕留めてたけど……アンダーマインを二箇所にかけてからキューブを使う方が、消費魔素がかなり節約できる。これ、めちゃくちゃ効率いいぞ!」


流浪人に対して、アンダーマインの消費魔素は以前と同じ50。

大掛かりな仕掛けをいくつも連鎖させる必要がなくなり、必要最小限の手数で確実に処理できる。


この「デバフキューブハメ」ルーティーンが確立されたことにより、悠太の第八階層ソロ狩りは、より低燃費な作業へと変貌を遂げた。

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