ステータススキルの効果
如月と再会し、ダン研の訓練施設で自分のスキルを客観的に見つめ直した翌日。悠太は再び静岡ダンジョンの攻略へと戻っていた。
本格的な探索を再開するにあたり、東郷からの「ステータススキル底上げ」というアドバイスを早速実行していた。
今までは覚醒者キャンプの時の佐藤講師の教えを忠実に守り、スキル取得に大半のポイントを振り分けてきたが、これからはそれらのスキルを使いこなすための基礎能力向上も必要だと思ったからだ。
「罠スキルなのにこんな動き回ると思わなかったもんなぁ……」
貯め込んでいたスキルポイントを贅沢に300消費し、まずは自分の戦闘スタイルにおいて命綱となる『敏捷性』を一気にレベル5まで引き上げた。
手痛い出費とはなったが、その効果は第八階層の砂利を踏みしめた瞬間にすぐさま実感することになる。
「いたいた…」
夜の武家屋敷の影から、赤い眼光を怪しく光らせた影の侍、流浪人がゆらりと姿を現した。
次の瞬間、流浪人の姿がブレる。
一歩、二歩、三歩。足を踏み込むごとにトップスピードへと至る三段加速。
初め、悠太は『パリィクロス』の自動受け流しがなければ確実に胴体を両断されていた。
知っていたのに避けられない。
それが流浪人のスピードだった。
だが、敏捷性がレベル5になった今の悠太の動体視力と身体のバネは、流浪人の三段加速による最後の最も鋭い踏み込みスピードに、何とか対応できるようになっていた。
漆黒の刃が首元を掠める刹那、悠太はビーシューズのグリップ力を活かして上体を大きく後ろへ反らし、初太刀を紙一重で回避する。
「ふぅ……ギッリギリだけど、これならパリィクロスを無駄遣いしなくて済むぞ」
スピードだけでなく何度か接敵を繰り返すうちに、悠太はこの厄介な影侍の行動パターンを掴み始めていた。
出現してからの距離やタイミングに多少のバラつきはあるものの、この魔物は戦闘開始の最初の一撃には、ほぼ確実にあの「三段加速」を使って間合いを詰めてくる。つまり、最初の一歩さえ見切ってしまえば、非常に素直で対策がしやすい相手なのだ。
慣れてしまえば罠使いにとっては絶好の獲物へと変わる。
悠太は流浪人が突進してくる軸線を瞬時に予測し、その初太刀の通り道になる地面へとあらかじめ先回りで罠を構築する。
ザッ、ザッ、ザンッ!
加速した流浪人が、悠太の手前の一マスを踏み抜いた瞬間、地面に潜んでいた不可視の『バネ床』が爆発的に起動する。
「ほい!」
ドゴォン!!
強烈なカチ上げを食らい、流浪人の黒い身体が成す術もなく空中へと跳ね飛ばされた。
だが、悠太のコンボはここで終わらない。跳ね飛ばされた先の空中、流浪人の自由が利かない放物線の軌道上に、二つ目の罠『キューブ』が出現。
キラービー以上に手数が多く、縦横無尽に刀を振り回す流浪人。
キューブでの捕獲成功率は二割ほどと決して高くはなかったものの、魔素消費はバネ床30、キューブ100、落とし穴250。もしキューブで仕留められればかなり効率はいい。
この安定したハメ殺しの連鎖を何度も繰り返したおかげで、戦闘中に脳内へシステムアナウンスが響き渡った。
『【バネ床】の熟練度が一定値に達し、レベル4に上昇しました』
窮地を何度も救ってくれた相棒のレベルアップ。悠太はすぐさまその詳細を確認した。
--------------
バネ床 Lv4
同時設置数:3 → 4
設置時間: 30秒 → 20秒
特殊効果: 『発動時の衝撃(中)』(NEW)
--------------
同時に仕掛けられる数が4つに増え、何より設置完了までの時間が20秒へと短縮された。
さらに、新しく付与された特殊効果『発動時の衝撃(中)』が、悠太にとって予想外の大きなメリットをもたらした。
システム上の説明には「発動時の衝撃が減り、近くにいる他の敵に気づかれにくくなる」という効果が書かれていた。しかし、実際に使ってみると、悠太はある素晴らしい副産物に気づいた。
これまでのバネ床は、発動時の勢いと衝撃が強すぎたため、跳ね上げる角度を調節しようとしても、結局は垂直方向へと強引に固定されてしまうことが多かった。
だが、この『発動時の衝撃(中)』という特性によってバネの出力のブレが抑えられ、出現時間を変更する際の角度調節がやりやすくなったのだ。
いまままでは勢いがありすぎて垂直でしか固定できなかったものが、より緻密な角度コントロールが可能になった。
「これは汎用性がありそうだな」
第八階層の戦い方にも完全に慣れ、新スキルの挙動もバッチリ掴んだ悠太は、数日ぶりに『KYチャンネル』の動画撮影用ドローンを起動した。
フルフェイスのハロウィンマスクとローブを身に纏い、撮影用のパフォーマーへと変身する。
アンダーマインの鈍足デバフを組み合わせた四連コンボも織り交ぜ、流浪人が面白いように罠にハマり翻弄されていく様子をドローンは余すことなく上空から記録していった。
結局、その日は合計十体ほどの流浪人を危なげなく狩り尽くし、転送装置を使ってアパートへと戻った。
手元に残ったのはそれなりの数の魔石と良い具合に撮れた新しい動画素材。
ジャージに着替えてベッドに寝転びながら、悠太は動画の反響を期待しつつ口元を緩めるのだった。
--------------
【あとがき】
いつも応援ありがとうございます!
本当にたくさんの皆様にフォローやPVをいただき、嬉しすぎて作者のモチベーションは日々限界突破しております!
ただ、今まで1日2話ペースで爆走してまいりましたが、こんなタイミングでストックがだいぶ減ってきてしまいました(泣)
なので、今後は【1日1話(毎日19時更新)】のペースに変更させていただこうと思っています。
ペースは少し落ちますが、今後とも応援よろしくお願いいたします!
もし面白いと思っていただけましたら、各エピソードの下にある【★評価(右のほう)】も宜しくお願いいたします。




