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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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思わぬ連絡

アパートに帰り着いた悠太は、すぐに浴室へと直行した。第八階層で流浪人の冷たい風に晒され、緊張でじっとりと張り付いた汗を温かいシャワーで綺麗に洗い流す。


風呂上がり、冷蔵庫からキンキンに冷えた麦茶を取り出しグラスに注ぐと、一気に喉へ流し込む。


「プハーッ!……風呂上がりの一杯は最高だな!」


一息ついた悠太は、生き返ったような心地でソファに深く腰掛けた。


昨日のキラークイーン戦の動画、あの後さらに再生数が伸びているだろうかとスマホを手に取ると、画面を開いた悠太の目に飛び込んできたのは動画アプリの通知ではなく、珍しい相手からのショートメッセージだった。


差出人は如月。


(如月さんからなんて珍しいな……。なんだろ?)


メッセージを開くと、そこには「今度、ダン研に遊びに来てほしい」という彼女らしい簡潔な内容が綴られていた。


『ダン研』――正式名称、ダンジョン総合研究所。


探索者高校を卒業した如月は、探索者ギルドやダンジョン関連企業へは進まず、ダン研に『特別研究員』として招待されていた。

そこは国が直轄する将来有望な若手探索者を養成するための最高峰の機関だ。集められた若き才能たちは、日本の希望であり国家防衛の要でもある『DATダンジョンアサルトチーム』への加入を目指して日々過酷な訓練を積んでいる。いわば、選ばれた者だけが歩むことを許されるエリート街道だった。


そんな団体が、なぜか悠太にぜひ会いたいと言っているらしい。


「なんで俺に? データのサンプリングとかか?特殊なスキルだからな」


少し不思議に思いつつも、悠太の頭には先ほど立ち入った第八階層の光景が浮かんでいた。流浪人のあの異常な速度。

パリィクロスとデバフの組み合わせでなんとか一体は処理できたものの、この先ソロで安定して狩り続けるには明らかに物足りない。少し手詰まり感のある現状を打破するための、何かしらのヒントや知識が手に入るかもしれない。


「予定なんてダンジョンに潜る以外ないし…」


そう思った悠太は、二つ返事で承諾の返信をした。如月の都合も空いていたようで、トントン拍子に話が進み、急きょ明日の午後に訪問することが決まった。



翌日。


待ち合わせの時間は午後ニ時だったため、悠太は午前中の時間を利用して、久しぶりに実家へ顔を出すことにした。


ガラリと玄関の扉を開けると、平日のこんな時間に息子が帰ってくるとは思っていなかった母の志保が目を丸くして驚いていた。


「あら、悠太? どうしたの急に?」


「いや、ちょっとこっちの方に用事があってさ。はい、これ、お土産」


悠太は道中で買っておいた、うなぎパイの箱を差し出し、さらに「これ、結衣に渡しといて」とポチ袋を添えた。高校生になり、すっかり現金主義になった妹へのお小遣いだ。今日は学校があるため、残念ながら結衣の姿は家にない。


リビングのテーブルを挟み、お茶を飲みながら他愛もない世間話を交わす。


「実はね、最近ずいぶん体調が良くなってきたのよ。だから、家での内職はもうやめて、先月からお友達がやってる喫茶店で少しだけパートを始めたの。やっぱり、外に出て人と話すのって楽しいわね!」


嬉しそうに微笑む母の顔には、かつての心労からくる陰りは一切なかった。


「それもこれも、悠太がこうして仕送りをして助けてくれるおかげね。本当にありがとう」


「いや……俺はただ、自分のやれることをやってるだけだからさ」


面と向かって感謝されると、どうにも気恥ずかしい。悠太は頭を掻きながら、照れ隠しに立ち上がる。

だが、自分のダンジョンで稼いだお金が確実に家族の生活を支え、母に笑顔を取り戻している。その事実は悠太の胸に何物にも代えがたい確かな誇りと活力を与えてくれた。


実家を後にした悠太は久しぶりに東京ダンジョンの地上受付ロビーへと足を踏み入れた。


地下一階にある瀬戸のショップへ行く時は正面の受付を通る必要がないため、この賑やかなロビーに来るのは数ヶ月ぶりのことだった。


高く開けた天井、行き交う多くの探索者たち、巨大なモニターに映し出されるリアルタイムのダンジョン情報。最後に来た時と何も変わらない、どこかお祭り騒ぎのような活気に満ちた空間だ。


ロビーの片隅にある長椅子に腰掛け、スマホの時計を見る。約束の時間まであと十分ほど。


少し早いかと思っていると、自動ドアの向こうから、見覚えのある清楚な佇まいの女性が歩いてくるのが見えた。


如月だ。


髪を後ろで一つに結び、無駄のない洗練された歩調でこちらへと近づいてくる。エリート機関に所属しているとはいえ、その纏う空気や悠太を見つめる真っ直ぐな瞳は、以前パーティを組んだ時と全く変わっていなかった。


「お待たせ、悠太くん」


その変わらない、どこか心地よい声を聞いた瞬間、悠太の胸に安心感が広がった。


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