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第79掌 謁見



 前回の報告から数日が経った。あれからハフナーさんは無事、王位継承者となり、王となった。王子は幽閉されているし、姫騎士は元々王弟側の陣営だったからな。もう邪魔をする者もいないだろう。


 新しく王になったハフナーさんのパレードも見学した。


 でも、もう少し報酬は先になりそうだ。王になって忙しくなるし、そんな暇もないだろう。俺達もまだ拠点をゲットしていないからな。ここからの出発はまだ先だ。


 そう思っていたら迎えが来た。どうやらハフナーさんが頑張ったらしい。俺達と会う時間を捻出したみたいだ。


 迎えの馬車に乗り込み、王宮へと向かった。


 王宮に入ると武器の類は没収された。まあ、当たり前だけどな。そもそも、俺には武器とか必要ないしな。ベルルクまでは素手だったし。・・・・いや、攻撃とかはしないよ?


 連れて行かれると謁見の間に入った。初めてだな。こういういかにも勇者の必須イベントみたいな場所。巻き込まれたクラスメイト達はすでに経験しているんだろうな。


「よく来た」


「はい」


 俺達四人はその場に跪いて首を垂れる。


「よい。そのようなことをする必要はない。君たちは余と対等な協力者なのだからな」


「しかし」


 俺がそう言うと


「いいのだ。そもそも君の方が余より格は上だろう」


「それ、言ってもいいんですか?」


「構わん。この間には君のことを知っている者しかいない」


 どうやらその通りらしい。ハフナーさんの話で驚くものはいない。


「分かりました」


 そう言って俺達は普通に立つ。


「それでは報酬の話をしよう」


 そう言うと兵士が前に出て来て紙を開き、そこに書いてある内容を読みあげる。


「タカキ殿が率いる冒険者パーティーであるグラスプに以下の報酬を与える。

 一、黒貨十枚を与える

 二、国に保存されている武具を一つ与える

 三、この国にある拠点を一つ与える

 四、緊急の場合、オークス王と対等な立場を与える

 以上である。」


 黒貨って確か一千万だっけ?それが十枚だから一億円くれるってこと⁉マジかよ。


「四はどういうことですか?」


 俺はそこに突っ込む。どう考えても王のすることではない。


「君の立場だとこのくらいはしておかないとな」


 ハフナーさんの後ろに控えていたのだろう、アルナスさんが答える。


「そうですか・・・」


 まあ、普通は神に準ずる相手に大きな態度は出来ないか。


「まずはこの場で黒貨十枚を与える」


 そうハフナーさんが言うと兵士が俺に黒貨の入った小袋を渡してくる。それを俺が受け取ると兵士は元の場所に戻った。


「残りの報酬はこの後、受け取るといい」


「はい」


「ではこれで謁見を終了する」


 そうハフナーさんが宣言して謁見は終わった。




               ・・・




 武器などを返してもらって王宮の控室の一室に案内された。


「ここでお待ちください。すぐに案内の者が来ますので」


 そう言ってここまで案内してくれたメイドさんは去っていった。


「期せずして拠点が手に入りそうだな」


 ダンガが嬉しそうに言う。まあ、これで自分の店の開店も近づいたからな。


「リリアスも良かったな」


「はい!念願の拠点が手に入るなんて夢にも思いませんでしたから!タカキさんについて来て本当に良かったです!」


 と、そこでノックされる。部屋に案内してくれる人が来たようだ。


「はい。どうぞ」


「失礼するよ」


「アルナスさん!」


「やあ、タカキ君」


「案内の者ってアルナスさんなんですか?」


「ああ。それともう一人」


 そう言うとドアの陰から気まずそうにマリアーヌが出てきた。


「マリアーヌ、ほら」


「うぅ・・・。あの時はごめんなさい」


 そう謝って来た。


「ふ~ん。まあ、今回は許すよ。ハフナーさん達には言ったけど次はないってことだけ知っておいてくれたらいい」


「ああ。そのこともちゃんと伝えている。もう自分の感情だけで暴走するようなことはさせない」


「分かりました。信じますよ」


「それじゃあ案内しよう。さあ、こっちに」


 そう言って案内されたのは王宮の庭にある倉庫。どうやらここに武具があるらしい。


「ここ、随分古いけど、大丈夫なの?」


 アメリアが心配そうに聞く。


「宝物殿とかはここに置いてありますよと言っているようなものだからね。あえてこういう倉庫に置いてあるのさ」


 まあ、しっかりと考えているね。


「この中から好きなものを選んでくれ」


「ここはリリアスが貰うべきだな」


 俺がそう言う。


「え?私ですか?」


「ああ。俺達は固有スキルを持っているが、リリアスにはない。これはいざという時に危険なことになりかねないからな。ここはリリアスが持つべきだ」


「わ、分かりました」


 そう言ってリリアスの武具をみんなで探し出した。


「これは剣。・・・これは鞭。・・・これは刀⁉日本人としては見逃せないな!」


「どうかしたか?」


 近くでリリアスにぴったりの武具を探していたダンガが聞いてくる。


「いや、俺の世界の国にある伝統的な武器があったからついな」


「ふ~ん。どんなのだ?」


「これだ」


 そう言って刀を見せる。


「これは、何か武器として使えるのか?こんな細い武器、すぐに折れてしまうぞ」


「これは斬れることを突き詰めた武器なんだ。詳しくは知らないけど、この武器を使いこなせれば斬れないものはないかもしれない」


 この世界には魔法とかもあるからな。組み合わせればどんなものも斬れるだろう。


「まあ、今は気にしないでいいだろう。俺にはダンガの武器があるし、リリアスの武具を探そう」


「ああ。そうだな」


 そう言って再び探すことを再開する。


 しばらく探しているとついに見つけることが出来た。


「これだ!見つけたぞ!」


 みんなが俺の周りに集まってくる。


「どれですか?」


 リリアスに見せる。


「これは魔法媒体にもなる棒弓だ」


「???」


「見せた方が早いな。俺は疑似神眼で分かるけど、みんなには分からないからな」


 そう言って俺は一通り見せることにする。


「さあ、外に出てくれ」


 みんなを促して外に出る。


「これは棒にもなるし、弓にもなる変形型の武器だ」


 そう言って俺は棒から弓に変形させる。


「ほー。すごいな」


「そしてこの武器は魔法媒体になるから通常の武器よりも発動も速いし、威力も上がっている。これがいいと思う」


「タカキさんが言うならこれにします」


 嬉しそうに武器を俺から受け取るリリアス。


「この武器には名前がある」


「ネームドウェポンか!」


 ダンガが興奮した様子で叫ぶ。


「ネームドウェポンって?」


 リリアスが聞く。


「名前付きの武器はそれだけで名前なしの武器よりも強力なんだ。全てのパラメーターが上なんだよ」


「ほへぇ」


「俺達の中で初めのネームドウェポン所持者はリリアスだな」


「そうなるな。一番強力な武器を持っているんだ。これからも頼むぞ」


「はい!」


 ダンガと俺の言葉に力強く頷くリリアス。


「それじゃあ今日はここまでだな」


「はい。拠点についてはどうします?」


 アルナスさんの言葉に同意して拠点について聞く。


「それは明日にでも拠点の資料を持って君たちの宿に行くよ」


「分かりました。よろしく」


 それでその日は解散となった。




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