第80掌 破片
あと二、三話でこの編も終わりかな~?
ちょっと自信ないですが、そのぐらいです。
この編が終わったらスキル・魔法・加護の簡単な説明を投稿します。
その後は閑話です。
次の日。
アルナスさんが昨日言った通り、拠点の資料を持って宿にやってきた。しかし、お迎えはした。なんせアルナスさんがやって来るだけで大騒ぎになるからな。もうこの国の次期国王であり、現王子なんだからそのくらいしないと民衆で埋め尽くされてしまう。
アルナスさんは民からかなりの人気を博していたらしいからな。前王子との比較もあったのだろう。まさに踏み台だな、前王子。俺なんか名前も知らないし。会うこともなかったからな。
「わざわざすまないな」
俺の部屋まで連れてきたらそう言ってアルナスさんは謝ってきた。リリアスたちはすでに俺の部屋にいる。というか、もはや恒例の行事みたいになっている。こんなんで拠点ゲットして大丈夫かな?せっかく自分の部屋が出来たのに俺の部屋にばかり来られても困るぞ。
「構いませんよ。むしろこれくらいしておかないと後々面倒になってきますから」
アルナスさんの握手会の交通整備なんてやりたくないぞ。
「そうか。それではさっそく本題に入ろう。これが現在、空いている拠点だ」
そう言って机の上に色々な資料を広げていくアルナスさん。それをわくわくしながら見つめるリリアス。今までの反応の中で魔法の次に興奮しているかもしれない。それくらいソワソワしている。
「見てもいいですか⁉」
そう言って許可を求めるリリアス。
「ああ。いいよ」
アルナスさんからお許しが出た。その瞬間喰い付くように資料を見始める。さて、俺たちもゆっくり見せてもらうか。
リリアス以外の三人も資料を漁り始める。なんだか、こういうのって自分の家を建てるみたいでドキドキするな。リリアスじゃないけど、結構楽しいかも。しかも仲間たちと住む家だ。俺も少し興奮してきた。
そこから四人であーだこーだと話し合う。アルナスさんそっちのけでだ。途中でしびれを切らしたのか、アルナスさんも話し合いの仲間入りだ。
そしてそれから二時間。議論に議論を重ね、ついに決定した。
場所は静かな住宅街にある大きな屋敷だ。広い庭付きだし、なかなか雰囲気もよさそうだ。訓練所がないのが残念だが、考えてみれば当たり前だ。戦いたければ依頼を受ければいいんだし、簡単な走り込みは庭や外・・・つまり王都を走ればいい。それに武器に慣れるのも庭で出来る。訓練所など必要ないのだ。
だが、俺たちは違う。訓練所が必要になって来る。なんせ人にはお見せできない秘密がたくさんあるし、ヘタに庭で訓練していたら高威力の魔法とかが飛んでくる。危なくて訓練も出来ない。
そんなわけで地下に自作することにした。俺の魔法で何重にも重ねて風とか水の結界を張れば大丈夫だろうし。まあ、地下を作るスキルなんて持っていないからな。ここはステータスと全掌握の出番だな。
「話すことはこのくらいかな?」
俺は区切りとしてそう切り出した。
「そうですね。あとはお引越しだけです!」
まあ、その引っ越しも収納袋に入れればすぐなんだけどな。安定の収納袋ですね。お世話になっています。
「ああ。そうだ。もう一つ報告があったんだ」
拠点の話が終わったのを見計らってアルナスさんが切り出した。
「なんですか?」
「ああ。神様の件だよ」
その一言で俺たちは真剣な表情になる。
「前王が継承争いになってから表に出て来なかったでしょ?」
「はい。不思議には思っていました。これだけ騒ぎを起こしたのですから何かしらのアクションは起こすのが普通です。なのに何もしてこないし、それどころか姿さえも見せない」
「ああ。昨日、前王の部屋で死んでいたよ」
「え?」
「上半身が破裂した状態でね」
お、俺が貴族たちにしたこと張りにグロいな。
「遺体を検分してみると何かの破片のようなものを発見した」
「破片?」
「ああ。その破片からは君や私と同じ雰囲気を感じたんだ」
「言っておきますが、俺は何もやってませんよ?」
「そんなことは分かっているさ。私が言いたいのはそういうことではない。これはおそらく神の眷属たちの仕業ではないかと言いたいのだ」
「確かに。恐らくですが、アルナスさんが感じた雰囲気というのは神力でしょう」
「神力?」
「はい。憶測になりますが、その破片は前神のものでしょう」
「⁉」
「神の眷属の破片ということはありえません。実験と言われればそれまでですが、そうでないなら埋め込むという危険な行為はするはずがないのです」
「なぜ、そう言い切れるのだ?」
「俺たちは王都に来る前にフェルゲンにいました。そこで神の眷属が憑りついている少年と出会い、戦いましたから」
そう。操ったりするなら憑りつけばいいのだ。埋め込む必要などない。ならば次に考えられるのは神の眷属たちの生みの親である前神のものということになる。
「それが本当なら気を付けなければならないな」
「はい。その破片も破壊するか、厳重に管理しなければいけないでしょう」
「悪いが破壊を頼めるか?」
「はい。勿論です」
「報酬は私が出そう」
「いりませんよ。今回のこの仕事は神の依頼の範囲内です。お代は神に請求しますから」
「そうか。ではありがたくその言葉に甘えよう」
「はい」
「破片は君が来るまでは厳重に管理しておく。いつなら来れる?」
「これから行きますよ。こういうのは早い方がいいですから」
「分かった。それでは行こう」
アルナスさんはそう言って先に部屋から出た。
「そういうわけで俺はちょっと行ってくるわ」
「気を付けてくださいね」
「サクッと終わらせて来い」
「頑張ってね」
それぞれの言葉を聞いてからアルナスさんと共に王宮に向かった。
・・・
「これが破片か」
「ああ」
俺は前王の部屋に来ていた。破片があるせいで掃除が出来ないらしく、散らかったままだ。破片の周りの前王の肉も床に落ちてあって存在感を出している。普通に気持ち悪い。あの形からして胸に埋め込まれていたな。
「それじゃあいきますよ」
「ああ」
「掌・・・・握っ!」
本気の掌握を行う。なんせ相手は破片と言えど神。侮ることは出来ない。本気を出しすぎて空間が歪み出す。それを何とか抑え込みながら破片を支配下に置き、そのまま消滅させる。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「ご苦労だったな」
「いえ・・・。このくらいなら全然大丈夫ですから」
「そうは見えないのだが・・・」
傍から見たら結構な酸欠気味なんだろう。まあでも、本当に大したことはないのだ。息を乱しているのは初めて本気で掌握したからだ。
「気にしないでください。それじゃ俺はこれで失礼しますね」
長居は無用とばかりにそそくさと帰ろうとする俺。
「あ、ああ。分かった。本当にありがとう」
それを止めることもなく、アルナスさんは俺を見送った。
今日はこのまま睡眠コースだな。宿に戻ったら三人を部屋から出してさっさと寝るとしよう。
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