第78掌 一旦休憩
もう少しで王位継承編も終了です。
次はオークス 拠点と再会編 になります。
まあ、もう少し王位継承編も続きますのでお付き合いください。
第二段階の結果報告だけハフナーさんに済ませて宿に帰った俺達。正直ちょっと疲れたからね。特に前回と今回の作戦で俺達は人を殺しまくった。自覚はないかもしれないが、精神が疲れているだろう。地球じゃこれほどのことをやってのけたら国際指名手配だよ。ここが異世界で良かった。
部屋でゴロゴロしようと思ったらみんなが俺の部屋にやって来た。お前ら、今日くらいは自分の部屋で休めよ。
「一人でいると今日のことが思い出されてちょっと寝れそうにないです」
リリアスの言葉に申し訳なくなる俺とダンガ。グロいところをお見せしましたからね。あれは夢にでも出てきたら悲鳴もんのグロさですからね。正直、冷静になったらやっちまったなぁって感じもある。あの時は俺も大量虐殺で精神が傷つかないようにハイになってたからな。ちなみに、第一段階の王子の別荘襲撃はそうでもない。相手も殺し、殺される覚悟がある人間だと思ったからね。
でも、今回の相手は死ぬ覚悟などない貴族共。まあ、どんなに悪人だろうと後味は悪い。っていうか、ちょっと恥ずかしいよね。ピエロの恰好であんな芝居をしたら。中二病患者っぽいわ。
「まあ、今日はここでみんな一緒に寝るか」
俺は観念して言う。
「あ、俺は別に一人で大丈夫だから寝る時には自分の部屋に戻るわ」
え?
「寝るときは精々頑張れよ」
ニヤニヤしながら言ってくるダンガ。このやろぉ。
「っていうか、みんな大道芸人の恰好のままだけどいいの?」
アメリアがそう言って気付く。あ。そう言えば、疲れたからって特に着替えもせずに戻って来たんだった。気にする余裕もなかったけど、宿に人達もちょっと引いてた。ダンガなんて似合わないスーツ姿を血まみれにしているし、リリアスとアメリアは踊り子だし、俺は見た目じゃ誰か分からないピエロだ。ビビるのも仕方のないことだろう。
「すっかり忘れてたわ。しかも、この服、ハフナーさんからの借り物なのに」
「俺なんて血まみれだぞ!ヤベぇ、どうやって洗えばいいんだ!」
俺とダンガが慌てる。リリアスは恥ずかしさから俯いて真っ赤になっている。
「みんな、着替えてこい。ダンガの服は俺が何とかしてやるから」
「そいつは助かる!頼むぜ」
「私たちも一旦部屋に戻りますね」
「それじゃね」
みんな一旦自分の部屋へと戻っていった。
「やれやれ。MNDがいくら高くても、リリアスたちがいなかったらとっくに精神が摩耗していただろうな」
ベッドに寝っ転がりながらそう思う。いくらMNDが高くても、俺の世界じゃ人殺しは重罪なんだ。殺すなんて簡単に出来るはずがない。それが出来るのはあいつらのおかげだな。本当にこの世界に来て最初に仲間と一緒に旅をしようと考えて良かったぜ。リリアスとの出会いは俺にとって最良だったな。
そう考えていたら眠くなった。みんなが後で戻ってくるけど、来たらどうせ起こしてくれるだろう。まあ、起こさなくても今日はもう何もないだろうし、寝てもいいだろう。
そんなわけで俺は睡魔に身を任せ、眠りに落ちて行った。
・・・
タカキが眠りについてからリリアスが最初に部屋へと戻って来た。
「あれ?タカキさん?」
眠っていることに気が付いたリリアスはタカキの寝ている隣に寝転がる。
「ふふ。私も寝ちゃお」
そう言って、リリアスもタカキの横で幸せそうに眠りについた。
そしてリリアスが眠りについて五分ほど経った時、アメリアが戻って来た。
「タカキさん?リリアス?」
仲良く寝ている二人に笑みがこぼれる。でも、羨ましくもあるアメリアは開いている方のタカキの隣に寝転がり、同じように寝ることにする。
「おやすみなさい」
そして三人は眠りについた。
ちなみにダンガはこの光景を見てからそっと部屋から出て、自分の部屋へと戻った。
・・・
翌日。
俺が朝、起きると横から寝息が聞こえてくる。しかも、両側から。そっと左右を覗くとそこにはリリアスとアメリアがいた。って、なんで俺の横で二人とも寝ているの⁉
落ち着け。未成年である俺は酒などは飲まないようにしている。つまり酔った勢いでヤッちまうことはまずないはず。記憶にないということはすでに俺は寝ていたということになる。この左右で寝ている二人もついつい眠くなって寝てしまったということなのだろう。
二人を起こさないようにそーっと起き上がり、部屋を出る。一階の食堂に降りるとダンガが朝食を取っていた。
「よう。昨日はお楽しみでしたね」
「それはどう考えても違う!っていうかお前も俺の部屋に来たんだろ?起こせよ」
「いや、せっかく気持ちよく寝ているところだし、起こすのも悪いと思っていたからな」
「いや、起きた瞬間、かなり驚いたし、起こしてもらった方が有難かった」
「そいつは悪かったな」
あまり申し訳のなさそうにはしていない様子で謝ってくるダンガ。これは楽しんでいやがるな。ついついジト目で見てしまう。
「そう睨むなって。それより今日の予定は?」
あからさまに誤魔化したな。まあ、いいか。
「今日はハフナーさんから結果報告を聞きに行くぐらいだ」
昨日は俺からの結果報告。今日はハフナーさんからの結果報告だ。
「そうか。お供はいるか?」
「いや、いいよ。みんな疲れているだろうし、俺一人で行ってくる」
そもそもこういう報告には俺しか行っていないしな。
「そうか。それじゃあリリアスたちのお守は任せておけ」
「ああ。頼むわ」
そして俺は外へと出た。
・・・
屋敷に着いた俺はハフナーさんとアルナスさんと共に屋敷の庭にある庭園でお茶を貰っていた。
「さて、報告を行おう」
「お願いします」
ハフナーさんが話を始めた。
「君が報告に来た後、姫騎士派の貴族が流れ込むようにしてやって来たよ。私の下に付くと言ってな」
「そうですか。では、これで指名依頼は達成ですね」
「ああ。ご苦労だった。報酬はマリアーヌにと思っていたのだが、前回の様ではな」
「まあ、そうですね。まだあの調子なんですか?」
「ああ。アルナスの婚約者としてしっかりしてもらいたのだが」
「え?」
初耳だわ。そうだったの?まあ、アルナスさんにやけにくっ付いているなとは思ったけど。そういうことだったわけね。
「君には言っていなかったね。だから前回の食事のときに父上が言っていただろう?自分の子供の相手には作法などを求めると」
「あー。確かに言っていましたね」
「あの時のマリアーヌの行動は礼儀に反していたからね。しかも神の使徒に対して」
「まあ、やっちゃいけないことですね。ヘタしたら国なんかあっと言う間になくなりますし」
「そ、そこまでの力を有しているのかい?」
俺の言葉に冷や汗をかくアルナスさん。
「まあ、可能です。それだけ危険な依頼を神から受けていますから」
「そ、そうか。出来ればその力をオークス王国に向けないでくれ」
「それは今後のこの国のアクションによって決まりますし」
「ああ。マリアーヌにはしっかりと言い聞かせておく」
ハフナーさんが厳しい表情で宣言する。
「ハハハ。お手柔らかにしてあげてくださいね」
「それで本当にお手柔らかにして、何かしでかしたらそれこそ取り返しがつかなくなるだろう?」
「まあ、そうですね。前回は一回目でしたから見逃しましたけど、次はありませんから」
まあ、何か理由があったら別だけど。
「だろう。だからお手柔らかにするわけにはいかん。あれでもこの国の王族だからな。失うわけにはいかん」
本当に最初の大人びていた美人のお姫様はどこに行ったのでしょうね?
「それでは次は報酬のときに会うことになりますか」
「そうだな。報酬というよりも褒章になってしまいそうだな」
「ハハハ。次に会う時にはあなたが王様ですか」
「そうなるだろう。まずは兄上に報告だがな」
現王様か。まったく姿を見せなかったな。どうしたんだろうか。
「それでは俺は宿に戻りますから」
「ああ。次は迎えを出そう」
「はい。よろしくお願いします」
「報酬もしっかりと用意しておこう」
「はい」
そして俺は宿に戻った。帰ったら昼間になっていた。リリアスとアメリアが俺の顔を見て恥ずかしそうにしていたのは、朝、俺の横で寝ていたことが俺にバレていると知っているからだろう。
まあ、しらばっくれておいたので大丈夫だろう。
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