死中
まず、火砲が港を焼いた。
次に、陰陽兵の群れが海の底から這い上がり、逃げ惑う鬼たちを斬り伏せた。
輸送船のハッチが開け放たれ、足軽たちが雪崩込む。
そして、巨翼を広げて一騎の白き竜骸が街の中心部に砲火抵抗ものともせずに飛来し、肉を繋ぎ合わせて巨大化させた特注の陰陽兵たちを振り撒いた。
避難する鬼たちのただ中に落とされた屍肉の巨人は建造物の外壁すら破砕して衛士たちを追い詰めた。
ルカは港の前線で刀を振るう。
幾度も敵の刃が迫る。
その度に衛士の仲間が防ぐ。
時には身と記憶を削ってまでルカを、お互いを護る。
返す光刀で陰陽兵を切り裂いていく。
何十、いや何百だ?
あとどれくらい斬り伏せればいい?
時が、永く感じる。とても永く。肉体が、精神が、記憶が、疲弊していく。
竹刀が折れる。
膝をつく。
叫びが聞こえる。
今の声は誰のものだっただろうか。
分からない。
だが、諦めない。
「うおあぁああ!!!!」
咆哮して、突貫する。死中へ。
警官たちが一般市民をシェルターへ誘導する。悲鳴と怒号が行き交い、人混みは激流となって蠢いていた。
そんな流れを遡って、ハナは走っていた。
周囲の制止も構わず、走った。
先は、学校。みなの思い出の場所へ。
ハナは走る。みんなで並んで歩いた急勾配の坂道を。
猫を追って迷い込んだ路地裏を。
ツクモガミを追いかけ回した商店街を。
走る、走る、走る。
ハナは、泣いていた。
泣きながら、走った。
わんわんと、子供のように。
里で親を斬られて、独りぼっちに残された。
あの頃の子供のように、わんわんと、わんわんと。
いくつもの思い出が遡る。
学校に近づくほどに、胸の内が熱くなっていく。




