ファインダー
――金色。
サキが真っ先に感じたのは、色だった。
曙光に煌めく粒子が舞っている。暖かさすら感じさせる光の粒。サキとハナを取り巻くように、渦を為す。
大蛇が止まった。
否、動きを防ぐものがあった。
両刀。
手から落としたはずのサキの得物。
それらは黄金色に輝いて、ひとりでに中空に留まっている。微動だにせず、歪なる両顎の全てを受け止めていた。
「なに、これ⋯⋯」
思わず声が漏れる。
「わかん、ない⋯⋯」
傍らでハナが呟く。
ちら、と一瞥して、目を疑った。
「あんた、なに、その眼⋯⋯」
ハナの双眸が琥珀色に光放つ。虹彩は連なる輪を為してファインダーの如く転回していた。
顔を見合わせる。だが、自分に何が起こっているのか、ハナ自身にすら分からなかった。
不意に、大蛇が唸った。
2人は咄嗟に振り返る。
長大なる体躯しならせる。金属が軋みあう音を奏でながら、力込める。尾撃に転じるつもりなのか。アギトを即座に引いて、しなる鞭のように巨躯を巡らせた。
来る。
轟、と。
風切る音ともに、豪圧がきたる。
「だめ!」
ハナが叫ぶ。
金色が閃く。
何処からともなく、光の刃が尾に直撃した。横合いから薙ぐ、斬り落とす。
悲痛なる叫びを上げて大蛇がのたうった。
「あれ、ルカの――!」
光刃はまさしくルカの竹刀である。これもまた何の外力もなく、金の粒子に導かれるようにひとりでに動いたのだ。
「もしかして――」
サキはハナを見つめる。いや、その両眼を観察する。光の筋が放たれ、先ほどの得物の数々に通じている。本人はただ呆然と唖然と戸惑うだけだが、サキにはひしひしと夥しい鬼力が滲んでいくのがわかった。
ガキン、と醜い音。
敵はしかし、まだ動く。
蠢き、地を這いつくばり、反撃を繰り出す。
牙の一撃。浜辺を抉り喰らいながら、突貫する。大口が迫る。
サキが叫ぶ。
「ハナ!」
一か八かだ。
手を引く。
前へ突き出す。
「えぇ!?」
盾にされて驚く。
錆びた刃が眼前に――。
太陽色。一斉。
飛び来たる。
鉄塊の身体を連打する。
これは、分断された尾の残骸。
金色の粒子に満ち満ちて、大蛇を叩く。叩く。叩く。
間隙すら許さない。叫びすら打撃音に埋めていく。
瘴気放つ呪札の数々が引き千切れ、粉と化していく。
鉄鋼はバラバラに、解けた骸は更なる武器となって大蛇を打ちのめす。
ガキン、ガキン、と、一個、一個。またたく間に身体の体積を減らしていく。呪札に宿った怨嗟憎悪とともに鉄の巨体が砕けていく。
これで、最後。
1枚に残った呪札が、ノアの得物によって射抜かれた。




