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願い

 詣でというものは、誰がどんな願いをしたのかを言い合うことが常である。秘密の共有とまではいかないが、心内を隠さぬことは、関係性をそれとなく測る指標にもなっているだろうか。

 そこまで深く考えずとも、話題にすることは珍しくない。

 それはツクモ狩り部の5人も例外ではなく、合わせた手を解いて散策に戻るときには、ハナが開口一番そのように聞くのであった。

「みんなは何をお願いしたの?私はね!みんなずぅっと仲良くできますようにって!」

「ハナちゃんらしいわね〜」

 ノアがぽわぽわ微笑みながらハナの頭を撫でる。ハナはその手のひらに頭頂部を擦り付けるように甘える。まるで、猫みたいだ、とサキは思った。

「ノアちゃんは?」

「私もみんなと仲良しでってお願いしたわ〜」

「ノアちゃんらしいね!」

 今度はハナがノアの角を撫でくりまわす。あらあら〜、と微笑みながら受け入れている。

 ユカと話をしていたサキが出し抜けに笑った。声を出して腹を抱える。

「なになに、どうしたの?」

 ハナとノアが食いつく。

「だって聞いてよ、ユカったら保育士になりたいんですって!あのユカが!」

 サキは涙を出して笑っている。

 対してハナの表情が、ぱっと花開く。

「わぁ!似合ってる!」

「⋯⋯えぇ?」

 思いがけない言葉にサキの笑みが止まる。

 ルカとノアもさも当然のように頷いている。

「面倒見いいもんな」

「目に浮かぶわ〜、ユカちゃん先生〜」

「えぇ!?」

 サキは驚き、素っ頓狂な声をあげた。

「ほれみろ、アタシにぴったりだろって」

 ユカはふんぞり返り、鼻を鳴らす。

「で、サキは何をお願いしたんだよ。どうせ美味しいものいっぱい食べられますように、とかしょうもないことだろ〜」

 拍子抜けするかのように肩を落としたサキにユカが問い詰める。

 何だか見下すような視線に負けん気がかま首をもたげた。勢い良く言葉が吐き出される。

「失敬な!私は――!」

 ここで、4人の顔がとても近くて、思わず喉が詰まった。

 眼差しが凄まじくキラキラしている。あのつっけんどんで偏屈なサキが何をお願いしたのか、興味津々といった様子だ。何が飛び出すかワクワクさえしている。

「私は――」

 再度、二の足を踏んだ。うんうんと勢い良く頷く4人の圧が強すぎて言えないのか、後退りしはじめていた。

「――」

「あっ!逃げた!」

 そのまま踵を返して、歩き出した。

 4人が追いかける。喧騒渦巻く境内。周囲の目もあるために早足の追いかけっこ。次第に本来の理由すら失って、追いつ追われつ戯れに、そこはかとなく笑みを湛えて、橙色の中を踊った。


 サキは、何も願っていなかったことに気づいた。

 彼女は手を合わせながら、目を瞑る4人を薄目で伺っていた。何を考えていたか、何を思っていたか、思い出せないほどに見つめていたことだけは覚えている。

 冷たい空気に冴えているはずの頭は、提灯の灯りにぼやかされたように浮ついていて、鐘の音すら遠くに聞こえていたのだった。


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