金童子
「彼らの救助をしたのは君たちだと聞いている」
金童子は生徒たちを顎で示す。
「協力に感謝する」
深くお辞儀する彼に、つられてハナもおずおずと頭を下げた。
ただ、と言って顔上げた表情は厳しい様子を滲ませていた。
「だが、誰に唆されたかは知らんが」
と、大江をちらりと見る。
「危険なことは控えてほしい」
「あ……ご、ごめんなさい……」
いかめしい顔つきに思わず恐縮してしまう。
しっかりした顎は太く、眉間やほうれい線の皴も深い。まるで本で見た鬼の顔にそっくりだ。罪を咎め、罰を下す、地獄の獄卒。そんな印象が強い。
「いや、謝らなくていい。先日の工場跡地での事件も君たちが解決してくれたことは知っている。今回も考える前に身体が動いたのだろう。高校生にしては豪傑な女性たちだ」
そこまで言って金童子が破顔した。がはは、と快活に、豪快に笑った。
打って変わって人懐っこい笑顔を前に、なんだか大型犬のような鬼だとハナはぼんやり思った。
「後のことは我々に任せてもらいたい」
「で、でも、友達がまだ……」
「案ずるな、大江から聞いている。赤井由佳と黒川早紀だろう。彼女らの救助は最優先事項だ」
「は、はい、ありがとうございます」
よかった、と安堵のため息が深く滲む。
「ときに君たち」
出し抜けに金童子が訊ねる。
「お札のようなものを見かけなかったか?」
「お札、ですか……?」
ハナの首を傾げる様子に、「いや、いいんだ」と手を上げて制した。そのまま、腕を組み、しばらく思案した。
「どうしました?」
「ん、ああ。何でもない」
ハナの呼びかけにどこか上の空で返答する。
「とりあえず、君たちは安心して休み給え」
そう言って、お辞儀をする。踵を返す。歩き去ろうとする。
「あ、あの!」
ハナはその大きな背中に小さく叫んだ。
金童子は少し驚いたように振り返ると、次にきちんと向き直った。
「どうした?」
「私、あの子たちの——雪だるまたちの想いがわかったんです」
ハナの言葉に金童子の表情はいっそう影深いものになった。逡巡するかのような沈黙。真っ直ぐとハナを見つめる。
「やはり、君が例の――」
そう小さく呟いた。
え?、と聞き返す間もなく、金童子は言葉を繋いだ。
「聞かせて欲しい、ツクモガミの想いとやらを」




