工場跡にて
港に近い場所にその焼け焦げた工場は存在していた。
もはや残る熱などありはしない。危険を示す規制線が貼られ、雨風に野ざらしにされて久しい。黒ずんだ外壁、割れた窓、一部が崩落した屋根、内部は放置された重機や機材でめちゃくちゃな有様だった。
そこへ大型トラックが何台か乗り入れた。
重機を降ろしながら、若い作業員が先輩に尋ねた。
「ここ、ずいぶん放置されてたんすね」
先輩が荷解きをする手を止めて工場を見上げる。
「ああ。一年前の火事からずっとだ」
「火事?」
「そう、小さな町工場。機材のトラブルか何かで爆発炎上。作業中の夫婦が亡くなって、娘さんも巻き込まれて重傷」
「うわぁ、ひどいっすね……」
「その後も現場検証だの、保険だの、相続だの、色々あったみたいでな。建物も危険だから立入禁止。結局、解体まで一年かかったってわけだ。まぁ、よくある話さ」
若い作業員が焼け跡をぼーっと見つめる。
「じゃあ、今日が初めての本格的な解体ってことっすか」
「そういうこと」
先輩がヘルメットを被り直す。角を穴に通して、ぐっと紐を締める。
「これはここだけの話なんだがよ」
「なんすか、いつも以上に恐い顔して」
「夜な夜な奥から、女の鳴き声みたいなのが聞こえてくるんだとか」
「ひ、ひぃ~」
がははとリアクションに満足したかと思うと、いつのまにか荷解きを終えていた。
「まあ、噂は噂、事情は事情。俺たちは仕事。さっさと終わらせて、帰るぞ」
「了解っす!」
それぞれ重機に乗り込んでいく。エンジンが唸る。アームが動く。
焼けた工場へ近づいていく。
ふと、後輩が気付く。
「なんだ、光?」
黄金色の粒子が目の前を漂っていた。




