繋がる
ところ変わって、桜家。
机の上で、ピロリんとスマホが鳴る。
どうやらSNSの通知のようだ。
ハナの祖母が台所から声を掛ける。
「おじいさん!ハナからですよ、きっと!」
祖父がいそいそと取り上げる。老眼鏡をかけ、持ち上げるように目線を合わせる。
パタパタとやってきた妻がのぞき込んで嬉しそうに声を上げる。
「綺麗な花火の映像ですよ、おじいさん!」
「写真もあるぞ!これがハナのお友達か~!」
「やさしそうなかわいい子たちですねぇ!」
「そうだなぁ」
そうだ!、と妻は手を叩く。
「こっちも写真を撮って送ってあげましょうよ!」
「えぇ、写真かい?」
「いいから、貸してくださいな」
パシャリと慣れた様子で、ツーショットの撮影を終えると、ハナへ送信した。
「“たのしんできてね”、っと……」
『うん!』と元気よく、ぺこりのスタンプと共に返信。
「ほっほっほっ、文章でも楽しさが伝わるのぉ」
「そうですねぇ、おじいさん」
「なぁ、ばあさんや」
出し抜けに夫が至極真面目な調子になる。呼びかける声は何処か寂しげな色を含んでいる。
「やっぱり、ハナに伝えた方がいいんじゃないか?」
「また、その話ですか」
妻は台所へ逃げるように向かっていく。
「それ以前に、ばあさんの齢じゃ、まだ早いと思うんじゃよ」
「本当はね、おじいさん」
とんとん、と夕飯の準備を再開しながら背中越しに話す。
「私もハナのお友達の名前すら、段々思い出せなくなっているんですよ。同じお花を買ってきてしまったのもありました」
「だからって、いくらなんでも……」
「今までハナのお陰で幸せな時間をいっぱい過ごせました。子といつか離れてしまうのは、鬼としての宿命だと思っているんです」
「鬼としての宿命……」
はきはきと話す妻に、もごもごと言いよどむ夫の姿があった。だが、老体に奮起して、喉元から滑らせる。
「だったら、なおさらじゃないか。ハナももう大きい。心構えくらいさせてやるのが、育て親としての恩情じゃろうて」
ぽりぽりと自らの角を掻きながら、夫は小さい声で話す。
「いいんです。あの子は今、とっても楽しくて幸せな時にいるんですよ。曇らせたくない。彼女の明るい笑顔を最期の時まで見ていたいのです。それに“この笑顔の娘は誰なんだろう”なんて思いたくもありませんからね」
「そうか……」
「そんな悲しい顔をなさらないで、まさか、おじいさんが一番残念がっているんじゃありませんか?」
見なくてもわかります、と少しからかうように微笑む声。
「そりゃあ……、そうじゃろう……」
——長年、連れ添った愛する伴侶。失うのは辛い。
だが、返す言葉は戯れには応じなかった。ただ悲しく、寂しく、消え入りそうな呟きだった。
「お前の“魂巡り”までもう幾月もないのか……」
ただただ、泣きそうな声だった。
夕餉の準備は進む。何事もなく。普段通りの手つきで、温かく。




