光の花
その夜、鬼ヶ島に光の柱が立ち伸びた。
島中の鬼たちがそれを見上げる。
光の先から、着信メロディーが歌う。夜空に光の花が咲く。一輪、また一輪と、咲き乱れる。
忘れ去られた電波塔を昇って、ツクモガミたちが空へ飛び出していく。
そして遥か上空で光る。残ったわずかばかりの充電を最期の輝きへと変える。
編隊を組んで、配置を考えて、それぞれがタイミングを合わせて光る。
すると、大きな大輪の光の花が夜空に満開に開いたのだった。
「はい、そっちの黒いのはこっち!ああっと、そこの赤いのは反対!」
その基部ではツクモ狩り部の面々が指示出しを行っていた。
「七番から十二番のスマホは先頭だ!間違えるなよ!」
ルカの鼓舞にあいあいさーと敬礼して走っていく。
「充電少ない子たち~、集まってね~」
ノアはたまちゃんを簡易の充電器にして、ツクモガミたちの電源にチャージしていた。
「そこ!半音高い!やり直し!」
サキは指揮棒片手に即席の音楽教師と化していた。
「みんなーーっ!!次が最後!でっかいの打ち上げるよーーっ!」
総指揮官のハナが現場に声を響かせる。
最後の一団が胸を張るように勇ましく塔を昇って行った。
「がんばってね!!」
ツクモ狩り部の応援を受けて、頂上から勇ましく飛び降りた——。
——今まで見たことがないほどの満開の桜。その花火はもはやそう形容するしかないだろう。桜をイメージしたメロディーも一役買っている。花輪は桃色に夜空を彩り、そこから舞い落ちたひとひらは、黄金色の流れ星となって町中に降り注ぐ。地に落ちてふわりと霞に消えていく。
みんな見上げていた。綺麗、とつぶやいて。
「スマホがあったらなぁ……」
なんていう鬼もいた。
「フリッカー現象って知ってます?」
そんな鬼の背後に大江が立っていた。
「はい?」
「光源が目に見えない速さで点滅している現象のこと。電子製品特有のヤツですね」
そして、二人して花火を見上げる。
「あの花火はね、綺麗に撮れないんです。記録に残せないんです」
「なるほど、乙なもんですな」
「そう、酒のあてにちょうどいいんです」
「てゆうか、酒くさ!!」




