困惑!携帯電話盗みの現行犯!
「と、こんなことがあったんですよ」
次の日の、週初めの放課後。ハナはツクモ狩り部の部室で集まった面々——ユカ、ルカ、そこに加えてサキに自分が感じたことを話していた。
「なんか説教臭いなぁ、ハナも年老いたか~?」
ユカがからかう。
むー、とふくれっ面になるハナ。
「ねぇそう思わない、サキちゃん」
「ええ、そうね」
サキはスマホをいじりながら応える。
どうやら、というか見るからにスマホに夢中だ。
「サキちゃんまで……」
ハナはがっくりと肩を落とす。
「みんなスマホを通して繋がっていると思っているけど、実際には目の前の人とすら心が繋がってないって私は思うの。ね、このサキちゃんのように!ね!」
びしぃ、と人差し指を突きつけるも、サキは全く気にせずスワイプを繰り返していた。
「ねー!ノアちゃんもそう思うでしょー!」
ハナは出し抜けに窓枠から乗り出し、その階下に叫ぶ。
「なにかしら~!?聞こえな~い!」
下では作業着姿のノアがタールに汚れながらたまちゃんの整備を行っていた。作業に没頭していて、というか、距離がありすぎて聞こえていない様子だった。
「まぁ、確かに不意に思うときはあるけど」
「でしょ!?ルカちゃん!!」
ずい、と顔を近づける。鼻息が顔にかかる。
「みんな歩く時間も惜しいくらい忙しいんじゃないか?それこそ誰かと連絡とっているとか、急ぎの用事とかな」
「うーん、そうかなぁ……?」
腕組みをして今一度悩む。確かにそうかもしれない。彼らの画面を覗き見たわけではないし、そんな考え方もあるのかもしれない。
そう思うと、なんだか、仕方のない話のように思えてきた。
そこに。
「あーッ!」
とサキが怒りに叫ぶ。
「な、なに!?」
ハナが振り向くと、そこには古いガラパゴス携帯に手足が生えたようなツクモガミが窓枠に乗っていた。半透明の黄金色の腕で、サキのスマホを頭の上に抱えている。そして、ピッと軽い電子音を鳴いたかと思うと、窓の外へ飛び出した。
「ちょっとーッ!!」
サキが窓枠を乗りだして行方を視線で追う。
「まだ予約確定してなかったのにッ!」
「予約?何の?」
ハナが素っ頓狂に訊ねると、サキはそれこそ鬼の形相と虎の勢いで振り返った。
「ドーナツッ!」
「ふ、ふぇ!?」
「1日限定20食の!夏限定フレーバーの!!」
このッ!とサキは窓から外へと部室を飛び出した。
追いかけて窓から見送る3人。
サキはたまちゃんにうまく着地して、転がるように駆けだしていた。
「すげー身体能力……」
気づけば、校舎中から同じような悲鳴が上がる。至る所からガラパゴス携帯もしくは古びたスマホのツクモガミたちがスマホを抱えて校庭から校門へ、そのまま外へ大挙を成して走っていった。
「姉さん、事件です」
大江がいつの間にかみんなの背後にいて、どこかの俳優をモノマネしているかのように、淡々と声を出した。
「な、なんすか、大江ちゃん」
「いや~、なにやら校内が騒がしいと思ったら、ツクモガミ関連だとはねぇ~」
大江が、にぱ、と破顔し、頭をぼりぼりと掻いた。
「なんか町中で起こってるらしいよ、がんばってくれたまえ」
「マジかよ」
「とりあえず、サキを追おう。あの様子じゃ、何をしでかすかわからないぞ」
「ツクモ狩り部出動だねっ!」
こうして、ツクモ狩り部の活動が始まった。
それぞれ得物や荷物を準備して、部室を後にする。
あっ、とハナは思い直して、戻る。
昨日買って持ってきていた買い物袋を持って、みんなの後を追った。




