光る画面
初夏。
太陽は日に日に高く、羽織る物も必要なくなったくらいに、動くとじっとりと汗ばんでくる陽気さが空気に満ちていた。
港地区から電車を乗り継いで1時間足らずの都市部。店や往来の喧噪の頭上にすら、太陽の光は強く降り注ぐ。雑踏は途切れを知らず、鬼たちの営みの熱気はゆらゆらと立ち込めるほどである。
ハナはその中を歩いていた。ふんふんと上機嫌に鼻唄を奏でながら、軽く両腕を振るってのしのし歩いている。顔は熱気によるものか、ほのかに上気し、頬の桃色がいつもより色づいて見えた。
スクランブル交差点。信号は赤。周りと同じように立ち止まる。
自動車の流れをぼーっと眺めていたかと思うと、ぴょこんと伸びをするように思い立ち、腕に提げた買い物袋に視線を落とした。
微かに開けて、中を覗く。
「ふへへ……」
にんまりと微笑む。戦利品がこの夏にもたらす希望と笑顔を今から想像して、ふんわりぽわぽわなお花畑が頭に幸せな霞をかける。
信号は青。ハナは、もちろん出遅れた。
——どん、と肩に衝撃。
「わわっ」
思わず前のめりになる。身体が靴音の流れに呑まれそうになるのを必死に引き上げ、いそいそと渡り切った。人通りの少ない建物の軒下でいったん落ち着く。
「ちょっと、痛かった……」
そんなことを呟きながら、ふと道行く鬼たちを眺める。
はっと気づく。みんな俯いてスマホに視線が吸い込まれている。前を見ているのか、見ていないのか、わからないが、それでも泳ぐように彼らは人込みを縫い進んでいる。
私にはできないなぁ、なんて考えながら、思わず口から零れる。
「なんだか、少し、恐いな」、と。
群衆が、ひとつの生き物のように、蠢いて見える。ひとりひとりであって、ひとつじゃない。みんな同じリズムで乱れを許さない。それを指揮するのが、光る画面たちだった。




