疑問!消えたビニール傘の行方!
二日後。
ユカはやはり仁王立ちで部室に居た。
「てゆうことで今回は!」
音を立ててホワイトボードを叩く。
『疑問!消えたビニール傘の行方!』。勢いだけで書き殴った下手な文字が白板いっぱいに場所を占領している。
「この事件について調査していくぞ!」
「私知ってるよ!」
ハナが負けじと手を上げる。得意げな表情で言い放つ。
「犯人はサキちゃんだよ!」
「何言ってんのよ」
腕組みしたサキが、はぁ?、と返す。
「だってまだ傘返してもらってないもん!」
「な!?か、返すつもりはある!」
身を乗り出して口ではそういうものの、返すつもりは毛頭なかった。
言えない。結構お気に入りの傘になっているなんて言えない。
自宅の鏡の前でくるりと一回転して「いいじゃん」なんて言っていたのなんて、絶対に言えない。
「ウソだよ!」
即座に看破する。
「今日も差してきてたじゃん!私、未だにレインコートなんだよ!」
「あ、あれも可愛いじゃない!なんか……こう、可愛いじゃない!」
ハナのレインコートとは鳥獣戯画のカエルが布面いっぱいに踊り狂っているやつのことだ。サキが言い淀むほどに意味が分からなくて、可愛くないはずだった。
「よよよ、ノアちゃん酷いと思わない?」
大げさな動きでノアに泣きつく。
「そうねぇ~、返さなきゃ、めっ、よ。サキちゃん?」
「ぐっ!わかったわよ、返せばいいんでしょ、返せば!」
なでなでされながらハナは、ちらとサキを見る。
「ひとつ利子返しして」
「はぁ!?」
「相合傘」
「なんでアンタなんかと!」
「びえーん」
「わ、わかったわよ!やめろそれ!」
「あの~……話続けて、いいっすか?」
乳繰り合いにユカが言葉を挿し込む。しばらく黙って見ていたがさすがに限界らしい。表情には微かに呆れた色が見える。
「うん!いいよ!」
対してハナは満面の笑みで顔を上げた。
ぐぬぬ!と下唇を噛むサキにルカが資料を手渡した。
「ビニール傘についてだが、校内の備品紛失届け数と猫横丁での在庫状況を調べてみた。グラフの通り確かに港地区全体で傘不足に陥っていることは推測できるな」
横軸は日付、縦軸はビニール傘の数量を示す。そして二つの折れグラフの線がある時点を境にジェットコースターのように落ちくぼんでいる。どうやらユカの直感も当てにならないわけではないらしい。
ルカの報告にユカはふふん、と自慢げに鼻下を擦る。
「だけど本当にツクモガミさんのせいなのかしら~?」
「いい質問です、ノアねぇさん」
ユカが不敵に笑う。ポスターを取り出し、長机に広げる。
『劇場版超力戦士デッカイジャ—:崩壊魔人の逆襲』の販促ポスターだ。
一同が、おぉー、と声を上げる。
「あ、こっちじゃねぇや」
ユカが裏面にひっくり返す。
手描きの円グラフが2個並んでいる。線はよれよれで綺麗な丸とは言い難い。
「校内で生徒、教師、校長問わずアンケートを取ってみました。まずこちらの円グラフは、最近、傘を無くしましたか?です」
文字を見ると『はい』の回答が八割を超えていた。図的には九割近くに見えるが、適当に描いたためだろう。
「で、次が、ビニール傘でしたか?」
「すごい!『はい』が100%だよ!」
「そうなんです」
ユカがうんうんと何度も頷く。
「絶対おかしいだろ?ビニール傘だけみんな無くしているんだ。これは作為的なものを感じるぜぇ……」
「母数は?」
サキが突っ込む。
「12、いや、14人くらい」
「……」
サキの冷たい視線。
ルカが頭を軽く抱える。
それでも!、とハナが紙面を叩く。
「傘がなくなっているのは事実だよ!なんとか解決しないと!」
「まぁ、そうだな。ウメばぁさんの件でも、ツクモガミは特定の物事に執着しているようにも思えるしな」
ルカもまた賛同するように立ち上がる。
「じゃあ、決定ね~!ツクモ狩り部、ファイッ、オ~!」
ノアが腕を大きく振り上げる。みんなで活動できるのが楽しみなようだ。
「じゃあ、サキちゃん、一緒にくっついて行こうね~」
にまにまとハナがサキにすり寄った。
「うえぇ……」
心底嫌そうに、ため息を吐くのだった。




