相合傘
じめじめ、じとじと。
雨は熱気の中を降り続ける。雨粒は意気揚々と固い舗装路を叩き、逆に砕かれて飛沫となって足元を濡らす。敗退した流れの一列は排水口へ次から次へと呑み込まれていく。反響は環境音となり、梅雨の訪れをまざまざと知らしめていた。
「いやぁ〜、ルカが通りがかってくれて助かったよ」
帰り道、青い傘の下、ユカがあっけらかんと言った。
「もうちょっとそっちに寄れよ、濡れるだろ」
ルカとユカの相合い傘。
「傘立てに入れてたビニール傘が消えるのってなんなんだろうなー」
ユカが呟く。
「どうせ誰かに持ってかれたんだろ」
ルカが肩をぐいと押し込みながら、答える。
「角が引っかかって破れたりとかするからな。出先で急に降られたりでもしたら買っていくだろ?安いし、壊れやすいし、ビニール傘は消耗品なんだろうな」
「でもなぁ」
ユカは不服そうに、ちらりと通りを見やる。
道端には折れた傘、まとめて捨てられているビニール傘。
消耗品。使い捨て。
だけど、実際に雨風を凌げてるのは傘のお陰だし。
「なんだかなぁ、だからって他人の持ってくなよなぁ」
「そうだな、こうして迷惑被ってるわけだし」
「アタシのこと、迷惑って言ってますかぁ〜?」
「そうです」
「へぇへぇ」
ふたりは猫横丁のアーケードに入る。
ルカはバサバサと傘の水気を払いながら、ふぅと一息ついた。
「ここで解散って言ったらどうする?」
「困る〜」
「だろうな」
はぁ、と溜息。
「お前タオル持ってないか?」
「お、あるよ、貸したげる」
「どうも」
濡れた髪や肩を拭くルカを、ぼんやりと見つめ、ふと、視線を周囲に巡らせる。
何だか、雨宿りしている鬼が多い気がする。誰も傘を持たず、天候を見上げて眉をひそめている。店先で傘を買っていく鬼もやけに多かった。傘売り切れの札が並ぶ。
「妙だな⋯⋯」
顎に手をやり、考える。
こんなにも大量の鬼が傘を忘れるなんて。もう梅雨の時期だというのに、天気予報をチェックし忘れたなんて到底思えない。
もしかして。
「ツクモガミのせいじゃね!?」
「何が?」
アーケードを包む雨音は次第に強く、防ぐものが無ければ帰り難いものにしていった。




