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写真に写るもの

 攻守が転じる。転じる。転じる。

 幾度となく、攻防を繰り広げていただろうか。

 4+1対1の戦いはやはり数の多い方が有利だった。

 たまちゃんが体当たりで化けネコを押し留めた。

 クソデカ招きネコは前足を繰り出そうと大きく振り上げる。そこへトンファーロープッ!という叫び声とともに、一本のトンファーが投げ込まれる。勢い良く放たれた柄の端には麻紐が巻き付けられている。綺麗な円形を描いて、前足をお縄にした。

 化けネコの視線がちらりと動く。

 麻紐のもう一方の端を、しっかりと握り込んだユカ、ルカ、サキがいた。

「行くぞー!オーエス!」

「オーエス!」

「オ、オーエス⋯⋯!」

 変な掛け声とともに引き手繰る。

 既にたまちゃんに押し留められていた大ネコはぎりぎりと前足を引っ張られる。抵抗しようと力込めると、その隙をたまちゃんがぐいぐいと鋼鉄の身体を押し込んでくる。

「な、なぁご⋯⋯!」

 次第に立ち上がるような姿勢となり、それでも必死に耐える。ぷるぷると力は拮抗し、帳尻が均一となる。

「ノアーッ!」

 ルカが叫ぶ。

「がって〜ん!」

 力抜けるような間延びした掛け声とともに、弾丸が連続した。

 竿立つ巨ネコの後ろ脚を連打した。

「ん、なぁ〜ご!?」

 支えをスかされた巨体が後ろへ倒れる。

 ず、震。

 此度も砂煙。だが、4度目のこれはツクモ狩り部の勝機に傾いていた。

「よっしゃー!!」

「やったわ〜!」

 ガッツポーズをとって喜ぶユカとノア。

 しかし——。

「あ!サキ!!」

 ルカが呼び止める間もなく、サキは仰向けに倒れ伏したツクモガミへと走り出していた。

 赤いマフラーが動線となって、先頭では白刃が咲くように閃く。

 十文字の構え。

「これで、終わり——!!」

 サキが腕交差して振り被る。目前、眼前、大きな猫眼にサキの姿が映る。

「だめーーーーーーっっっ!!!!」

「——ッ!?」

 白刃は振り切られず。両手広げて立ち塞がったハナの鼻先を掠めて止まる。刀に反射した光が彼女の頬を、つぅ、と照らす。

「どいて、ハナ。ソイツ切れない」

 サキは代わりに言葉で斬りつけた。だが、ハナは真正面からサキを見つめたまま動かない。

「これ!」

 サキの険しい表情を看破するように1枚の写真を突きつけた。

「何よ、これ」

 駄菓子屋のレジ奥に、うつらと座る老婆鬼の姿。

「あ、ウメばぁだ」

 ユカが覗き込んで素っ頓狂な声を上げる。

「見ろ、ユカ」

 ルカがある一点を指差す。レジ横の一箇所。大きな招きネコの置物。

 倒れ伏した巨大ネコを見やる。

 毛並み、形、表情。一緒だ。

「あらあら〜、じゃあ、あの子の正体って〜⋯⋯」

 ノアが頬に手をやって困ったような声を上げた。

「そうだな」

「うん、間違いない」

 ウメばぁの膝の上、丸まった猫の姿。駄菓子屋の至るところで猫たちが戯れているのだった。

「どういうこと?」

「この子はね、ウメおばぁちゃんのツクモガミなの。大切な思い出と感情なの!」

 サキだけが、ひとり、眉をひそめた。関係ない、と言わんばかりに、じりじりと近づいていく。

「駄目だよ、サキちゃん!」

「はぁ!?意味わかんない!」

「大切な思い出なの!壊しちゃだめ!」

「そんなことあるわけないじゃない!思い出が形になる?感情が物に取り付く?ありえないッ!」

 サキが、きっ、と振り返る。

「それに、思い出がなんで襲い掛かってくるのよ!?」

「守ってたんだよ!」

「そんなわけ——」

 ハナの言葉を裏付けるような光景に、サキは目を疑った。

 猫たちが招きネコに寄り集まっていた。ペロペロと労るように陶器の身体を必死に毛繕いしている。すりすりと体を擦り付ける。これは親愛の証なのだろう。

「そういうこった」

 ユカがぽんぽんとサキの肩を叩いた。

「仕切り直しだな」

 ルカも竹刀を戻しながら、踵を返す。

「ユカちゃん、明日からまた聞き込みよ〜。一緒に頑張りましょうね〜」

 ぼろぼろになったたまちゃんを撫でながらノアが微笑んでいる。

 えぇ、まじっすかー!、と笑い合う声が遠ざかっていく。

「サキちゃん」

 ハナが至極真面目に顔を突き合わせる。

「帰ろう」

「⋯⋯勝手にすれば」

 サキは、ぷいとそっぽを向いてずんずんと帰路へと足先を転じた。

 一人残されたハナはしばらく猫たちを見つめていた。

「またね」

 そう軽く手を振ると、にゃあ、とそのうちの一匹が答えてくれた。

 


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