恐怖!集団猫隠しの巻!
別日の放課後。
ここはツクモ狩り部の部室。
既にハナ、ユカ、ルカ、ノアの4人が集まっていた。
長机にはいつものように茶菓子と湯呑みが人数分置かれて、味気ない部室を彩っていた。
「というわけで!今回はこちらでございます!」
ユカが、バン!と勢いよくホワイトボードを指し示す。そこには大きく、大胆に、厚顔無恥に、黒マーカーでこう書かれている。
『恐怖!集団猫隠しの巻!』。少しヨレヨレで見栄えが悪く、とても上手い文字とは言い難い。
タイトルの下では、ハナがせっせとイラストを書き込んでいる。丸と円オンリーで描かれたゆる〜いキャラクター。これもまたブサイクで大手を振って可愛いとは言えなかった。
「ハナ、何書いてんの⋯⋯?」
ユカが振り返って困惑気味に訊ねる。
「猫ちゃん!可愛いでしょー?」
「猫⋯⋯?」
ルカが訝しげに首を傾げる。猫には見えない。太ったたぬきにしか見えない。
「あら〜、すっごく可愛いわ〜」
ノアだけが、にこにこと頷いている。
「でしょー!」
ハナは嬉しそうに身体を揺らす。
「ノア⋯⋯、あんまり甘やかすなよ」
ユカが軽く頭を抱える。
「と、とにかく!今回は猫横丁で起こっている大量猫消息不明事件を追っていくぞ!」
と、ユカが仕切り直し、ルカに合図を送る。
ルカは頷き、資料を配りだす。
「既に被害件数は確認できる数でも20件は越えている」
淡々と進める。資料には飼い猫の行方を捜す張り紙のコピーが猫の名前で五十音順にまとめられている。
「ツクモガミの関与はわからないが、普段お世話になっている商店街のピンチだ」
「そう!」
ユカが言いつなぐ。パイプ椅子に片足を乗せ、拳を高く上に掲げる。
「最近、きちんとした活動ができていない我々の出番というわけだ!」
威風堂々、威勢旺盛、やる気満々で宣言する。
するとノアが、何気ない調子で口を挟んだ。
「活動報告書出さなくちゃ、廃部になっちゃうのよね〜」
「ぐっ⋯!」
勢いが、一瞬に消えた。ノックアウトされたように、パイプ椅子にへたれ崩れる。
「その通りでございます、ノアねぇさん⋯⋯」
がくっと深くうなだれる。ルカが肩を叩いてなだめる。
「でも、みなさん、かわいそうね〜、困ったわ〜」
落ち込む部長を尻目にノアが頬に手を当てて、眉をひそめる。
「可愛い猫ちゃんたちを攫うなんて、卑劣な奴だね!」
ハナが資料を食い入るように見つめながら、ふんふんと鼻息荒く怒っている。
「犯罪性があるのかはこれから調べるけどな。まずは情報収集からだ」
ルカはページをめくり、数多くの張り紙に目を通していく。あらかじめ連絡先にマーカーで線が引いてある。
「え、ルカさん」
ユカが改めて手元の紙束をぱらぱらとめくる。
「これ全部聞いていくんすか⋯⋯?」
「やろうって言ったのお前だろ?」
「えーでもー!」
ハナが出し抜けに勢いよく立ち上がる。椅子が大きな音を立てて転がった。
「現場百回だよ!ユカちゃん!がんばろーっ!おーっ!」
「お〜っ!」
突きあげる拳にノアも続く。
「ノアはたまちゃんに乗るじゃん!」
ユカが突っ込む。
ノアは頬に手を当てて当然のように微笑んだ。
「あらあら〜、だって一人ぼっちは可哀想だし〜」
「いいから行くぞ!時間がもったいない!」
痺れ切らしたルカが資料をまとめて席を立つ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ~、ルカ殿~!小生行きたくないでござる~」
「猫ちゃんたち!待っててね!絶対助けてあげるからねっ!」
「ハナちゃん、元気いっぱいね~。私もがんばっちゃうぞ~」
と、ツクモ狩り部はわちゃわちゃと商店街に繰り出した。




