解決
――自販機は常にそこでみんなを待っていた。
早朝、長い階段を登りきって、汗だらけの補充員。自販機を満杯にして、よしと汗を拭う。動作確認のためにボタンを押す。目覚めのコーヒー缶。飲み干して笑う。その笑顔が嬉しくて、7777。驚いて、だが、のちに笑顔。
お昼、長い階段を登りきって、喉が渇いた子供たち。自販機のボタンを押す。冷たい、つめた~いジュースを飲み干して、笑う。その笑顔が嬉しくて、7777。驚きと歓喜の声。みんな笑顔。
夜、長い階段を登りきって、荷物を持った大人たち。茣蓙を引いて、酒の宴。宴も酣、自販機のボタンを押す。お酒の缶缶を抱えて、顔を赤らめて笑う。その笑顔嬉しくて、7777。豪快で快活な笑い笑顔。千鳥足でいくつか落としながら、ふらふらと。みんな笑顔。
自販機はそこにあった。みんなを待っていた。いつしか、誰も来なくなった。だけど、みんなを待っていた。
笑顔が見たくて、ずっと待っていた――。
――夕陽がびしょびしょに濡れた自販機を照らしていた。もう電源も落ちて、動くことはない。もつれ合ったコードももはや解けて、ただの自販機に戻っていた。
だけど反射する輝きだけが何処か誇らしげだ。
カシャとカメちゃんを構えて、ハナが撮る。
「うへぇ⋯」
その後ろ手でユカが靴を逆さに、泥水を落としながら、眉をひそめる。
「身体中ベッタベタだ〜!」
「ベッタベタで済んでよかったな」
スカートの裾を絞りながらルカが言う。
「こっちはコーヒー塗れだよ」
「あはは」
ユカが真っ黒になったルカを笑う。
「クリーニング代が高く付くなぁ〜!」
ルカは無言で、ユカを泥水とコーヒーが混ざった溜まりに引きずり込んだ。あぁ〜!ユカが叫ぶ。
「みんな〜、お紅茶入ったわよ〜」
ノアはほぼほぼ汚れはなく、たまちゃんの背中をテーブル代わりにしてお茶会の準備をしていた。
隣では濡れた上着や靴下などを脱いだサキが豪華な茶菓子に目を輝かせていた。
ハナは自販機を見つめていた。横顔が夕陽を受けて黄金色に輝く。
「ハナ!早く来なさいよ!ノアが、みんな揃わないと始めないって!」
サキが急かすように大声を上げた。
「またね」と自販機に笑いかけ、仲間たちの元へと走った。
その言葉は水溜まりに波を描き、反射した景色を揺らし続けていった。




