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常火の里  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


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第六話「二つの道」


---


炎が語ったのは、二つの方法だった。


——巡りを延ばす方法は、山の四隅にある。巽山の東西南北、それぞれの頂に、この火と同じ根を持つ小さな火がある。その四つの火が生きている間、巡りは続く。しかし今、影の根がそれらの火を一つずつ消している。西が消えた。北が消えた。東が消えれば、もう延ばすことはできない。


「四隅の火を守れば、巡りが続くんですか」


——守るのではない。繋ぎ直すことだ。根が切った繋がりを、もう一度結ぶ。それができれば、この巡りはもう少し続く。


「もう少し、とはどのくらいですか」


——分からない。巡りに決まった長さはない。二人が望む限り、続くかもしれない。


ハルはミナを見た。ミナは書き続けていた。


「もう一つの方法は」とミナが聞いた。


炎が静かになった。


——この火を、消すことだ。


「この常火を?」


——そうだ。私を消せば、巡りは終わる。二度と始まらない。この里も、この火の中にある無数の記憶も、すべて本当に消える。


「あなたは、消えることを恐れないんですか」


長い沈黙があった。


——恐れる、という感覚があるかどうか、私には分からない。ただ、これだけは言える。あなたたちの記憶も、ここで消える。次の巡りで出会うことも、なくなる。


ハルはその言葉を、しばらく胸の中で転がした。


次の巡りで出会うことも、なくなる。


「繋ぎ直す方法を、教えてください」とハルは言った。


——東の頂に、まず行け。そこにまだ火が残っている。根が届く前に、この火から分けた光を持っていって、繋ぎ直せ。


「どうやって光を持っていくんですか」


炎が揺れた。そして、中央から一粒の光が分かれた。橙と金の、小さな火の粒だった。宙に浮いたまま、ゆっくりとハルの方へ漂ってきた。


——手のひらで受けろ。消えないようにしながら、東の頂まで持っていけ。


ハルは両手を差し出した。


光の粒が、手のひらに落ちた。


熱はなかった。しかし、確かな重さがあった。生きているもののような、かすかな脈動があった。


「これを、東の頂へ」


——急げ。夜明けまでに着かなければ、根が先に届く。


ハルはミナを見た。


ミナはすでに立ち上がっていた。紙と筆をしまいながら「行こう」と言った。


---


社殿を出ると、夜空が広がっていた。


星が出ていた。その星の光が、心なしかいつもより弱く見えた。あるいは、手のひらの光が眩しすぎて、相対的にそう感じるのかもしれなかった。


東の頂は、里から見て右手の山だった。参道を戻り、里を抜けて、東の山の登山道を探さなければならない。


「道は分かる?」とミナが聞いた。


「猟で何度か東の裾野までは行った。頂上まではない」


「地図はある」とミナは言った。「里の全体図を、来て間もない頃に書いておいた」


やはり、とハルは思った。


参道を駆け下りた。影の根は相変わらず動いていたが、行きより数が減っているように見えた。根の勢いが、奥宮へ向かうことよりも、別の方角へ向き始めているのかもしれなかった。


東の方角に。


「急ぐぞ」とハルは言った。


「分かってる」とミナは答えた。


---


里を抜けるとき、一つだけ気になることがあった。


西の外れと北の外れ、家が消えた場所を横切った。真っ暗な夜の中でも、そこに何もないことが分かった。家があったはずの場所に、地面だけがあった。


しかし、それだけではなかった。


地面から、何かが漂っていた。


光ではなかった。煙でもなかった。強いて言えば、温もりのようなものだった。その場所に確かにあったものの、残り香のような。


ハルは立ち止まった。


手のひらの光の粒が、その温もりに反応するように、かすかに強く輝いた。


「田之助さんの家があった場所」とミナが言った。


「うん」


「常火の中にいると言っていた」


「うん」


ミナは少しだけ目を伏せた。「ここにも、いるのかもしれない」


ハルは何も言わずに、その場所に向かって軽く頭を下げた。


それから走り始めた。


---


東の山の登山道は、里の外れに古びた石標が立っているだけで、道らしい道はなかった。


ミナの地図を頼りに、草を分け、岩を越えて登り始めた。月明かりが頼りだった。手のひらの光も、足元を照らすのに少し役立った。しかしその光を使うたびに、脈動が弱まる気がして、ハルはなるべく光を閉じ込めるように手を丸めた。


「重くなってきた」と途中でミナが言った。息を切らしながら、しかし確かな足取りで登りながら。


「山道が急になってきたから」


「そうじゃなくて」ミナは立ち止まって、息を整えた。「さっき炎が言ったことを、ずっと考えてた」


ハルも立ち止まった。


「どのこと」


「毎回離れる、というところ」


夜の山の中で、風が吹いた。木々が揺れた。


「毎回離れるって、どういう意味だったんだろう」とミナは続けた。「死ぬということ? それとも、別の意味で離れる?」


ハルは手のひらの光を見た。かすかに脈打っている。


「分からない」と正直に言った。「でも、今回は試してみたいと思ってる」


「何を」


「離れない巡りが、できるかどうかを」


ミナは少しの間、ハルを見ていた。夜の山の暗がりの中で、彼女の表情は読めなかった。しかし次に言った言葉は、はっきり聞こえた。


「それを言ってほしかった」


それだけ言って、ミナはまた歩き始めた。ハルも後を追った。


---


頂上に着いたのは、夜明け前の一番暗い時間だった。


息が白く、手足が冷えていた。頂上は狭く、岩がごつごつと露出していた。木がなく、空が広かった。


そして、あった。


岩の割れ目の中に、小さな火が揺れていた。常火と同じ橙と金だったが、今にも消えそうなほど小さかった。周囲を、影の根が囲んでいた。根が少しずつ、火に向かって迫っていた。


「間に合った」とミナが言った。


ハルは走った。


根を踏み越え、岩を飛び越え、火のところまで辿り着いた。根の一本が、炎に触れようとしていた。


手のひらを開いた。


持ってきた光の粒が、岩の割れ目の火に向かって、自ら引き寄せられるように動いた。


二つの光が、触れた。


瞬間、強い輝きが頂上を包んだ。橙と金が混じり合い、弾けた。根が後退した。一本、また一本と、炎から離れていった。


火が、大きくなった。


常火と同じ、安定した橙と金の炎が、岩の割れ目から静かに揺れ始めた。


ハルはその場に膝をついた。


疲れではなかった。何か大きなものが、胸の中を通り過ぎていったような感覚だった。


「繋がった」とミナが後ろから言った。


「うん」


夜明けの空が、東から白み始めていた。山の稜線が、少しずつ色を取り戻していた。


ミナが隣にしゃがんだ。小さな火を一緒に見た。


「残り、南と東か」とハルは言った。「いや、今繋いだのが東だから、残りは南だけ」


「そして西と北は、もう根に消された」


「南を守れれば、四つが揃う」


「急がないと」とミナは言った。「根は今夜にでも南へ向かうかもしれない」


「分かってる」


ハルは立ち上がった。夜明けの風が頬を撫でた。冷たく、しかし清かった。


「ミナ」と言った。


「何」


「次の巡りでも、こうして一緒に走れるといいな」


ミナは少しだけ間を置いた。それから言った。


「次じゃなくて、この巡りで十分よ」


ハルは笑った。


ミナも、わずかに笑った。


二人は頂上を後にして、南の山へ向かって歩き始めた。夜明けの空の下、常瀬の里が眼下に広がっていた。田畑も、川も、家々も、まだそこにあった。


まだ、そこにあった。


---


(第六話 了)


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