74話 賢者タイム
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カンカンカンカンカンカンッ!
「ん゛…う…うるせ…」
あまりにもうるさい騒音で俺は目を覚ました。これはおたまでフライパンを叩いてる音か?……
「そろそろ起きてよ〜!もう10時だよ!いつまで寝てんのざこにぃ!」
「まだ10時だろ?もうちょい寝かせてくれ…」
眠すぎる……しかも体が重いしベッドから起き上がる気力すらでない
カンカンカンカンカンカンッ!
「お・き・ろ!お・き・ろ!さっさとお・き・ろ!しばくぞ!」
「おまえそれアレじゃね?引っ越しおばさんだろ」
思わず古すぎるネタにツッコミを入れたくなって、俺は上半身を起こした
「やっと起きた。もう遅い朝ごはんだけど作ってくれたんだから早く食べちゃってよね〜」
「……あいよ…」
返事はしてもベッドから出る気力が湧かない。もう少し惰眠を貪っていたい気持ちが強い
今日が土曜日だからとかそんなんじゃない。体が動きたくないと言っている
まるで賢者タイムと言ってもおかしくないレベルだ。なんか前にもこんな事あったよな?
「ゾンビとまでは言わないけど、なんかちょっと疲れてない?…」
「んあ?……そうか?…きのせいじゃね?」
心配してくれてるのが嬉しいだなんて事は秘密にしておこう
「そうかなー……ミツバチに栄養を吸い尽くされた花みたいな顔してるよ」
いやどんな例えだよ
「俺が花とか褒めすぎだろ。てか着替えるから部屋から出てってくれ」
「はーい、寝ないでよー」
はぁ…起きるしかないか。もう黒瀬と約束しちゃったしな
♢♢♢
俺が食卓テーブルの椅子に座ると、既にテーブルの上にはバターが染み込んだ厚切りパンが置かれていた
フォークでひと切れすくい口に運ぶと、カリッと音がして卵とバターの味がする
「いや美味いなコレ」
フレンチトーストってやつか?愛梨が洋食とか珍しいな
「でしょ!ルナちゃんが作ってくれたんだよ〜」
「……あぁ〜…そっか。ありがとなルナ…」
昨日から全然話してないし、気まずいと思ってたんだがそれは杞憂だった
何故ならソファの背もたれに肘を乗せ、頬杖してこっちをニヤニヤ顔で見つめてくるからだ
「気にしなくていいよ〜。ご馳走してもらったし今日くらいはね〜」
「ん?いや俺は何もご馳走してないが…」
朝から会話噛み合わないとかどうなってんだ。俺がご馳走した世界線から来たのかおまえは……
「えぇ〜そう?結構頑張ってたと思うんだけど…」
頑張ってた?昨日の初デートが失敗した件か?そもそも話したっけ?いや話してないはずだ…
「何のことだ?」
「ナデナデしたらビクっ!てして可愛かったもんね〜」
まさかルナの奴……俺が寝てる間に頭撫でてたのか?
「寝てる間に人の頭撫でんなよ…」
「別に頭とは言ってないし〜。でもれんれんってば最近負け癖ついてきて偉いと思うなぁ〜」
ニヤニヤ顔で何か言っているが、心あたりもないし言っている意味がさっぱり分からない
てか俺が負け癖?この前四つん這いになってた俺に完全敗北してた奴の言うことか?
「アホ言うな。俺が負けたって証拠でもあるのか?ん?」
こんな時、適当に証拠見せろとか言っておけば大体黙るから大丈夫だ
「ん?」
するとどうしてか、ルナはソファから立ち上がって食卓テーブルの椅子に座る俺の前にまでやってきた
「証拠ならここにあるよー?」
そう言って指を指したのは自分のお腹だ。一体自分のお腹がなんの証拠になるんだ…
「いや……意味分からんが……」
「ん〜………でもだいぶ時間経っちゃったしもう無くなっちゃったかな…」
ルナはお腹の辺りを撫でて、少しだけ寂しそうに俯いていた
「はぁ……何が無くなったんだよ?」
イマイチ話についていけない。俺の頭がまだ寝てるからか?いや、起きてても無理か
「ん〜……れんれんがルナに負けた証拠………」
「いや無くなる証拠は証拠と言わんだろ…」
「でも頑張って反省してたもんね〜。えらいえらい」
「いやドコ見て言ってんだよ」
気付けばルナはしゃがんで、俺の股間に笑顔で語りかけていた
「れんれんのれんれんに言ってるんだよ?」
「おまえな…俺の股間に話しかけても意味ないっての。ちゃん目を見て話しなさい」
「えぇ〜いいじゃーん。なんか愛着湧いて来ちゃってさ〜」
愛着湧く要素ないだろ。見たこともないのに…
「…はぁ……まぁいいや。それよりさ、俺今日は用事あるから出掛けてくるな」
「え?……今日出かけるから昨日のうちにRINE送ったんじゃーん」
「俺にも色々あんの。明日行ってやるからさ」
「……絶対明日だよ。で?用事って?」
「桜丘学習図書館ってトコで勉強すんの。クラスメイトととな」
「…………ふーん。女の子?」
「まあそうだな」
俺がそう言った時、ルナはようやく立ち上がり、後ろを向いてボソボソと何かを言っていた
「…二発ぴゅっぴゅっしても全然元気じゃん…まぁほっといても大丈夫かな…」
「なんか言ったか?」
「べつに〜なんでも〜。愛梨ちゃーん!ルナとあそぼー!」
俺との会話に興味が無くなったのか、ルナは皿洗い中の愛梨に飛びかかっていった
「ちょ!ルナちゃん!お皿落としちゃう〜!」
「ごめーんね!愛梨ちゃーん!」
相変わらず仲良いなあの二人…そんなことより俺もそろそろ準備しよ
「よっこらせ」
椅子から立ち上がった時、少しだけ動く活力が湧き上がって来たのを感じた
「謎の賢者タイムもそろそろ終わりだな」




