7 『メイドさん天国』
煙花四月。城へと上がる。
白い霧の中、霧と見間違うような白い花が咲く道。
けぶる花々が風に散る。
霧は薄くなって数百m先まで見える。霧と花の組み合わせは幻想的だ。
白いのが好きなのかな、と思う。
エイプリルという少女は颯爽と道の先頭を歩いている。
水取は小人と並んでついていった。
小川があり橋を渡ったところで迎えがきた。
これまた白い馬車だ。
馬車の御者は骨だった。目の所には布を巻いて目隠ししている。
馬は甲冑を着込んでいて肌は見えないが目が光ってるのでこれも化け物だろう。
へえ。スケルトンか。
骨格標本と違って綺麗な服を着てる。
どうやって動いてるのだろう。筋肉的なのはないよねえ。
「お前様の国から来た者はすぐそういう疑問を持つどすなあ」
小人が疑問に答えた。
透明な魔力が筋肉の代わりに覆っているのだという。
だから関節技も通用するとか。
「こうやって理屈に対しての説明が生まれるべ」
しみじみと小人がいう。科学とは疑問への説明なのだ。
「乗って」
エイプリルに促されて馬車に乗った。
対面にエイプリルが座る。小人が水取の横によじ登って足をぶらぶらさせている。
馬車は予想外に快適だった。衝撃が直で響くかと覚悟してた。
さすが魔法の馬車という事だろう。良い仕事をしている。
エイプリルは本をどこからか取り出して読みふけっている。挿絵が綺麗。
外国の絵本みたいだ。
「やっぱり元の世界へ帰る流れ?」
「帰りたくないのどすか?」
窓の外の花景色を見ながら小人が言った。匂い立つような白い花の道。
「そういう訳じゃないけど。もう少し見て回りたいというか」
「帰りなさい。きっとここは貴方の思っている世界じゃないから」
本をめくりながらエイプリルがそっけなく言う。
「さっきの魔女を貴方は見た。あれに殺されると夢が夢だけじゃ済まなくなる」
「確かにその辺は言っておかんと駄目どすな」
う………。
「呼ばれたプレイヤーが試練にクリアしたギフトは元の世界でも通用する。
それじゃ失敗したリスクは? 貴方はその事を考えるべき」
淡々と仮面の少女が続ける。
少女が本を閉じて顔をあげた。
「水取くん。貴方が老人だったら私は止めない。でも貴方は若い。
その上住むところもあって食べるものにも困ってない。
死が常に身近にある国でもない。命をチップに差し出すのは間違い」
返答に窮した。
小人が助け船を出した。
「どうせこやつがプレイヤーになるのだし考えないようにしようぜ!」
「どうせじゃない。阻止する」
「安心おし。こやつは巨乳マニアどすから。
貧乳なら貞操の危険なしって事、うおっ」
小人がエイプリルに蹴られた。
「水取くん。さいあく」
とばっちりだ!! 何もしてないのに好感度がすごい勢いで下がり続けてる!
「む、胸なんて飾りだから! 小さくても気にしないから!」
「……っ。――本当に最低」
さらに好感度が下がった。どうすればいいの!
このテンプレ回答が新鮮だったらしい。
小人はどこからか矢筒を持ち出して叩いてた。平家物語か。
馬車が止まった。またすぐに走り出す。花のアーチをくぐる。
「関所を抜けた。もうすぐ城につく。ついたら改めて話」
「あ」
「なに?」
「コンビニ袋、どっかに落とした」
駄菓子、ぐっばい!
「おいどんのおやつを分けてやるべ。食後を楽しみにしとけ」
小人がバスケットを掲げてみせた。
どこにしまってたんだろう。バスケットには四葉の模様のタオルが掛けられている。
エイプリルが興味を示している気がした。くいしんぼうか。
城はヨーロッパ風。湖に浮かぶ霧がかった白い城。
跳ね橋を馬車が渡って中へ入る。窓から壮麗な城を楽しむ。
観光気分だ。
帰宅を告げる鐘が鳴った。雰囲気があって良いな。
中庭で馬車は止まった。
メイドが迎えに来た。
待ちに待ったメイドさん達だ。
黒髪のツインテールの娘と金髪ロングの娘さんだ。
黒髪の娘さんはツインテールを白い飾りリボンで結んでいる。
ロングスカートの可愛らしいメイド服を着込んでいる。
とくに黒い髪の方は胸もボリュームがある。
手には白い手袋。
そしてその顔は白い骨だった。




