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ぶれいくたいむ

『ぶれいくたいむ』





「ちゃっきー、手紙来てるよー」

「ほう! なんじゃろう」


穏やかな春の日差しの下で畑仕事に励む一匹と一人の所へ少女と犬が駆けていった。

男たちはクワで畑を耕して良い土を作ってる。

畑は整然として良く手入れがされていた。

少女は片手にバスケット、もう片手に大きなヤカンを持っている。

透明感のある赤紫色のセミロングの髪が風にさらさらとたなびく。

アメジストを溶かしたような髪の色と瞳、華奢な体にとても大きな胸の少女だ。

黒い三角の並んだカチューシャと白いセーラ服のワンピースを着ている。

犬は毛並みの良いふさふさの犬で尻尾をご機嫌に振りながら舌をハッハッとだして

スキップをしながら少女の周りをぐるぐると回っている。


「お昼だし一息入れようか」

「今日の飯は何かいのう」

黒い髪の男が首にかけたタオルで汗を拭き、小人に声を掛ける。

太陽の日差しに汗が輝く。

世界が一瞬止まる。男があまりに美しかったので見とれてしまったからだ。


小柄な少女が走る。胸が弾む。

こちらの少女も美しい娘だ。耳が長いのは妖精族だからである。

一種の清涼な美しさがあるのは妖精族だからだろう。

妖精族(ニンフ)は宝石から作られた存在だからだ。


「はい、これ手紙。そして麦茶」

「葉露どんありがてぇ」

「はい。ハヴェルも麦茶。おふたりともお疲れさまです」


大きなヤカンは氷が入っていてキンキンに冷えている。

一匹と一人は渇いた喉を潤す。健康的な美味しさ。


木陰のベンチへ移動して皆でサンドイッチを摘まむ。

一個だけ凄い辛いマスタードがたっぷり塗られたドキドキする奴だ。

畑の事や家の事、手紙を届けに来たドワーフの行商人の事が話題になった。


なおこの世界のドワーフは車輪とネジが付いたブリキの玩具みたいな外観である。

地層から発掘して発生する。


「さて。このあからさまに読みたくない手紙を開ける時が来たどすな……!」

くちびるを真っ赤にはらした小人が手紙を掲げた。

犬がキラキラした目で見上げて鼻先で小人を何度もプッシュした。

葉露が駄犬を抱きかかえる。ふさふさの尻尾が顎をくすぐる。


ハヴェルが手紙に目を細めて言った。

「魔力がすごいね。――席を外した方がいいかい?」

「大丈夫やで。差出人は緑の女王だし爆発はしないじゃろう」

手紙を小人が開くと文字が空中へ整列していく。

文字がドミノのように倒れ、倒れ際に声を発した。


「凝った作りの手紙どすなあ。暇人にちがいねえ。普通に書けばええのにな」

「そうだね。――長くなりそうかい?」

「来年の葡萄の花が咲く頃には戻ってくるべさ。

 今年は無理じゃろうなあ。頼んだ!」

「うん。頑張るよ」

「葉露どん、魔法のバスケットにおいどんの好きなのを詰めて持たせてくんろ。

 出発は三日後で良いじゃろう」


「うん。気をつけてね」

「土産話を二人とも楽しみにすると良いべ」


畑の傍らで穏やかに旅支度の計画が練られていく。

これは物語の少し前の出来事である。


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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、葉露が普通に喋ってる!
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