第七話
街道に出てから、旺樹は三人の兵士を見つけた。
三人とも、石畳の上を歩いている。
その中には、他の兵士よりも少し重そうな鎧を身につけた男がいた。
「まずは……一人ずつだな」
三人をまとめて相手にするのは危険だ。
旺樹は一番近くにいる鎧兵へ、ゆっくりと距離を詰めていく。
そして、隙を見て斬りかかった。
ガキンッ!
長刀が鎧を捉える。
「……っ」
斬れた。
だが、生身の敵を斬ったときとは明らかに違う。
刃は鎧を傷つけたものの、深くは入っていない。
「やっぱり、鎧があると通りにくいか……」
ゲームでは数字でしか分からなかった防御力。
それが今は、刃を通してはっきりと伝わってくる。
鎧兵が剣を振り下ろしてきた。
旺樹は横へ飛んでかわす。
そして、もう一度斬りつける。
やはり斬れる。
しかし、倒すには何度か攻撃を当てる必要がありそうだった。
「だったら……」
旺樹は長刀を構え直す。
戦技――居合。
一瞬、身体を沈める。
次の瞬間。
閃光のように刃を抜いた。
ズバッ!
今度は鎧ごと、鎧兵の身体を大きく斬り裂いた。
「……やっぱり、こっちは強い」
だが、戦技を使った直後。
身体に重さがのしかかってくる。
息が少し乱れた。
何度も連発できるものじゃない。
「便利だけど……頼りすぎるのも危ないな」
旺樹は残った二人を見る。
そのうち一人は、兵士と一緒に犬を連れていた。
「次はあいつか」
旺樹は少しずつ距離を詰め、兵士を誘い出す。
狙い通り、犬を連れた兵士がこちらへ向かってきた。
兵士の装備は、さっきの鎧兵より軽い。
その分、長刀の刃も入りやすかった。
旺樹は兵士の攻撃をかわし、反撃する。
だが――
「痛っ!」
足に鋭い痛みが走った。
犬が、旺樹の脚に噛みついていた。
「ぐっ……!」
思わず身体がよろめく。
痛い。
ものすごく痛い。
ゲームの画面越しでは絶対に分からなかった痛みだった。
「くそ……!」
振り払おうとするが、犬は離れない。
その間にも、もう一人の兵士が近づいてくる。
まずい。
このままでは挟まれる。
旺樹は懐から回復瓶を取り出した。
迷っている暇はない。
一気に飲み干す。
「……!」
みるみるうちに脚の痛みが引いていく。
噛まれた傷も、見る間に塞がっていった。
「すご……」
思わず呟く。
回復瓶。
ゲームでは何度も使っていた。
でも、現実で使ってみると、その意味が全然違う。
「これがあれば……即死しない限り、かなり無茶できるのか」
そう考えた直後。
犬がもう一度、旺樹の脚へ飛びかかってきた。
「そう何度もやられるか!」
旺樹は長刀を振り抜いた。
犬の身体が地面に転がる。
残った兵士が、こちらを見る。
旺樹も長刀を構え直した。
だが――
兵士は剣を構えなかった。
代わりに、服の中から何かを取り出す。
「……笛?」
兵士が、それを口にくわえた。
ピィィィィィッ!
甲高い音が街道に響き渡る。
「……え?」
遠くから、足音が聞こえた。
一つ。
二つ。
それどころじゃない。
街道の先から、次々と兵士たちがこちらへ向かってくる。
「まずい……!」
ゲームでは、こんなことはなかった。
敵を倒せば、それで終わりだった。
でも、ここにいる兵士たちは違う。
仲間を呼ぶ。
連携する。
旺樹はすぐに判断した。
「今は逃げる!」
長刀を納め、霊馬を呼び出す。
黒い霊馬が現れる。
旺樹は飛び乗った。
背後から兵士たちが迫ってくる。
「まずい、まずい、まずい!」
旺樹はそのまま街道を駆け抜けた。
今は戦うときじゃない。
まずは生き残る。
そう判断して、旺樹はその場から撤退した。




