第五話
洞窟を出てから、俺は少し離れた場所で足を止めた。
霊馬を休ませながら、これからのことを考える。
「さて……」
ここから先、どう進むか。
俺は『王環』を何周もしている。
だから、最初の地域についてはかなり詳しい。
道も分かる。
敵の配置も覚えている。
どこに何があるのかも、大体は頭に入っている。
「なら、まずはいつものやり方でいいか」
俺は自分のステータスを確認した。
筋力よりも技量。
重い武器を振り回すより、素早く動いて攻撃する。
今の俺には、そのほうが合っている。
「やっぱり技量特化だな」
長刀を抜く。
細身の刀身を眺める。
さっき使ってみた感じでも、扱いやすかった。
間合いも長い。
敵に近づきすぎずに攻撃できる。
「これをしばらく使おう」
当面の武器は決まった。
次に考えるのは、能力値だ。
技量を優先して上げる。
ただし、技量だけを上げればいいわけじゃない。
「体力も必要だよな」
実際に戦ってみて、それはよく分かった。
一撃を受ければ痛い。
敵の攻撃を全部避けられるとは限らない。
なら、多少の攻撃には耐えられるようにしておきたい。
それに持久力も必要だ。
走る。
攻撃する。
回避する。
全部、身体を使う。
「技量を中心にして、生命力と持久力も上げる」
ゲームの頃から使っていた、俺の基本的な育て方だ。
次は装備。
重い鎧は必要ない。
さっき試してみて分かった。
あんなものを着て戦ったら、敵の攻撃を避ける前に自分が動けなくなる。
「軽い装備でいい」
俺は持っている防具を確認する。
防御力だけを追い求めるより、今は動きやすさを優先する。
攻撃を受けない。
それが一番の防御だ。
「タリスマンも……」
いくつか候補が頭に浮かぶ。
序盤で手に入るもの。
技量型と相性がいいもの。
持久力や装備重量を補助してくれるもの。
「まずは、あれを取りに行くか」
ゲームでは、序盤に手に入れておくとかなり楽になる。
ただ、全部を一気に集める必要はない。
今の目的はあくまで一つ。
「最初の王臣まで行く」
俺は地図の代わりに、頭の中にある記憶を辿った。
この先には、いくつかの道がある。
ゲームなら寄り道して装備を集めることもできる。
でも今回は違う。
死んだら終わりだ。
無理に危険な場所へ行く必要はない。
「安全に取れるものだけ取って、先に進む」
何周もした経験があるからこそ分かる。
序盤は欲張らないほうがいい。
今の自分に必要なものだけを揃える。
それで十分だ。
「……よし」
方針は決まった。
長刀を使う。
技量を伸ばす。
生命力と持久力も少しずつ上げる。
軽い装備で動きやすさを確保する。
必要なタリスマンを集める。
そして――
「最初の王臣、忌鬼イメイのところまで行く」
名前を口にすると、少しだけ緊張した。
ゲームでは何度も倒している。
けれど、ここでは本物だ。
それでも。
「まあ、俺なら何とかなるだろ」
俺は長刀を腰に戻した。
霊馬の背にまたがる。
「まずはイメイだ」
手綱を握る。
黒い霊馬がゆっくりと歩き出した。
俺は前を見た。
知っている世界。
知っている道。
知っている敵。
そのはずだった。
「……行くか」
霊馬の歩みが少しずつ速くなる。
俺は最初の王臣、忌鬼イメイの待つ場所へ向かって進み始めた。




