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『王環』―独りぼっちの死にゲー攻略―  作者: 玉葱将軍


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第三十一話


セイスベールの城を出た俺は、転移門を使って街へ戻った。


 向かった先は、マリの塔。


 転移装置に触れると、光に包まれる。


 次の瞬間には、見慣れた塔の最上階に立っていた。


「おや。戻ってきたか」


 窓際にいたマリが、こちらを振り返る。


「うん」


「ずいぶん早かったな。どうした?」


「ちょっと、話しておきたいことがある」


「ほう?」


 俺はセイスベールと話したことを、最初から説明した。


 彼女が王を嫌っていること。


 八人の子供たちが人質にされていること。


 そして、その子供たちが次のエリアにいること。


「なるほど……」


 マリは腕を組んだ。


「星霜の女王が、そんな事情を抱えていたとはな」


「ゲームでは、そんな話はなかった」


「お前が知っている世界とは、やはり違うのだな」


「うん」


 俺は頷いた。


「だから、次は子供たちを助けに行く」


「次のエリアへ?」


「そう。赤き荒野」


 マリは少しだけ目を細めた。


「……そうか」


「危ない場所なんだよね?」


「危険だ」


 即答だった。


「なら、準備はしておいた方がいい」


「俺もそう思う」


 そこで、マリが小さく笑った。


「なら、買い物でもしてくるといい」


「買い物?」


「回復薬も矢も食料も、必要なのだろう?」


「……そうだった」


 俺は苦笑した。


 確かに、セイスベールの城でかなり使った。


 特に回復薬は、最後の一本まで減っていた。


 俺たちは塔を出ると、街へ向かった。


 まずは回復薬。


 それから状態異常に備えた薬。


 食料。


 矢。


 洞窟で使った道具類も補充しておく。


「これで大丈夫かな」


「足りなくなってからでは遅いぞ」


「……もう少し買っとく」


 マリに言われるまま、必要な物を揃えていく。


 買い物を終える頃には、荷物もかなり増えていた。


 そして。


 街の外。


 赤き荒野へ向かう前に、俺は一度立ち止まった。


「……確認しとくか」


 ここまで来たんだ。


 今の自分が、どれくらい強くなっているのか。


 改めて確認しておきたい。


 俺はステータス画面を開いた。


 レベルは十八。


 最初に比べれば、かなり上がった。


 レベルアップで得た力は、主に技量へ。


 それだけじゃない。


 HPにも振った。


 そして、スタミナにも。


 攻撃力だけを伸ばしてきたわけじゃない。


 死なないために。


 戦い続けるために。


 必要だと思ったところへ振ってきた。


「……うん」


 次に武器を見る。


 長刀。


 強化レベルは四。


 攻撃力も、最初に手にした時とは比べものにならない。


 ただし、まだ派生はしていない。


 強化素材は少し残っている。


 今後、別の武器を手に入れた時のために残しておくつもりだ。


 そして。


 俺は王証を確認した。


 イメイを倒して手に入れた王証。


 そこには、力が刻まれている。


 筋力+十。


 体力+十。


 王証によって得られる能力は、重ねて効果を得ることはできない。


 今は、この一つだけ。


「……これも結構大きいな」


 最後に、霊媒を確認する。


 俺が持っている霊媒は五種類。


 霊媒クラゲ。


 攻撃と囮を担当する。


 霊媒狼。


 三匹の狼を呼び出し、高速で敵を攻撃する。


 霊媒騎士長。


 攻撃力は低いが、防御力が非常に高い。


 霊媒毒娥。


 敵から見つかりにくく、動きを鈍らせる支援役。


 そして。


 霊媒・祈りの巫女。


 戦闘はせず、俺の状態異常を治してくれる。


 ただし、どの霊媒も同時に呼び出すことはできない。


 一度召喚したら、次に召喚できるまで時間もかかる。


「……さて」


 赤き荒野。


 ここまでの場所とは、明らかに違う。


 本当なら、もう少しレベルを上げてから行きたい。


 装備も。


 武器も。


 もっと整えてから挑みたい。


 でも。


「八人が人質になってるんだよな」


 待っている時間はない。


 俺は長刀を腰に差し直した。


「……行くか」


 霊馬を呼び出す。


 黒い馬体が、俺の前に現れた。


 俺はその背にまたがる。


 目の前には、赤き荒野へ続く道。


 ここから先は、まだ知らないことの方が多い。


 それでも。


 行かなきゃならない。


 八人の子供たちを助けるために。


 そして。


 教皇を倒し、三つ目の王証を手に入れるために。


「……行こう」


 俺は霊馬を走らせた。


 赤き荒野へ向かって。

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