第二話
遺跡を出て、しばらく進んだ。
ゲームで見覚えのある道。
俺はその景色を眺めながら、霊馬を進ませていた。
「この辺だったよな……」
そう呟いたときだった。
道の先に、何かがいる。
一体。
いや。
「二体……」
腐った身体。
ふらつきながら歩いてくる。
ゾンビ。
その少し離れた場所には、犬のような魔物がいた。
ただの犬じゃない。
目が血走っている。
口から涎を垂らしながら、こちらを睨んでいる。
「狂犬か……」
ゲームで何度も戦った敵。
動きも覚えている。
俺は霊馬から降りた。
「ここで試してみるか」
打刀を抜く。
ゲームなら、いつものように戦える。
そう思っていた。
最初のゾンビが襲いかかってくる。
「!」
身体が勝手に動いた。
横へ避ける。
知っている。
この攻撃のあと、隙ができる。
「ここ!」
刀を振る。
ザシュッ!
「……」
肉を斬った感触が、手に伝わった。
血が飛ぶ。
「うっ……」
ゲームとは違う。
あまりにも生々しい。
それでも、止まってはいられない。
二体目が迫ってくる。
「くそっ!」
刀を振る。
避ける。
斬る。
ゲームで覚えた動きを使う。
敵の攻撃は分かる。
次に何をしてくるのかも、ある程度読める。
だから戦える。
けれど――
「痛っ!」
狂犬の爪が腕をかすめた。
赤い線が走る。
「……!」
痛い。
本当に痛い。
俺は思わず後ろへ下がった。
狂犬が追ってくる。
「来るな!」
ゲームなら何度でも死ねる。
でも、ここでは違う。
俺は必死に距離を取った。
そして、狂犬が飛びかかってきた瞬間。
身体を横へ逃がす。
そのまま刀を振り抜いた。
ザンッ!
狂犬が地面へ転がった。
「……はぁ……」
息が荒い。
残ったゾンビを確認する。
まだ動いている。
「……よし」
俺は距離を取りながら、一体ずつ倒した。
最後のゾンビが崩れ落ちる。
静かになった。
「……終わった」
俺は刀を下ろした。
手が少し震えている。
「ゲームとは……全然違うな」
敵を倒せた。
知識も役に立った。
けれど、これはゲームじゃない。
血も、痛みも、本物だった。
俺は深く息を吐いた。
「……でも」
周囲を見回す。
「勝てた」
その事実だけは、少し嬉しかった。
「これなら……なんとかなるかもしれない」
俺は打刀を鞘に戻した。
まだ先は長い。
最初の王臣に会うまで、道のりは続いている。
「行こう」
俺は霊馬を呼び出した。




