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『王環』―独りぼっちの死にゲー攻略―  作者: 玉葱将軍


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第一話


俺は霊馬の背にまたがった。


 黒い身体。


 小さな角。


 触れてみると、ちゃんと温かい。


「……本当に馬なんだな」


 ゲームでは何度も乗った。


 けれど、実際に乗ってみると不思議な感じがする。


 俺は手綱を握った。


「よし。行くか」


 霊馬が走り出す。


 風が頬を撫でる。


 広大な草原を少し進む。


 ゲームなら、ここからいろいろな場所へ行ける。


 でも、今はまず周辺を確認したい。


 俺は記憶を頼りに道を進んだ。


「確か、この辺に……」


 しばらくすると、小さな遺跡が見えてきた。


「あった」


 見覚えがある。


 ゲームでも序盤に立ち寄った場所だ。


 俺は霊馬から降りた。


「ここなら少し休めそうだな」


 遺跡の近くには、一人の商人がいた。


「おや。旅の者か」


「こんにちは」


「見慣れない顔だな」


 俺は少し驚いた。


「……普通に話すんだ」


「何を言っている?」


「いや、なんでもない」


 ゲームの商人なら、決まった台詞を何度も繰り返す。


 でも、この人は違う。


 普通に会話をしている。


 俺は商人から回復薬や旅に必要な道具、食料などを買った。


「いくら?」


「全部でこれだけだ」


 渡された金額を見て、俺は確認する。


「ゼン……」


 ゲームと同じ通貨だ。


 そこは変わっていないらしい。


 俺は買ったものを確認してから、ふと思った。


「そういえば、俺のステータスって……」


 意識を集中する。


 すると、頭の中に表示が浮かんだ。


 名前。


 レベル。


 HP。


 MP。


 筋力。


 技量。


 その他の能力値。


「……見える」


 ゲームと同じだ。


 自分の能力を確認できる。


 俺は自分のステータスを眺めた。


「技量寄りだな」


 ゲームをやっていた頃と同じ感覚。


 俺は長刀や刀を使うのが好きだった。


 ただ、今はまだ打刀しかない。


「そのうち、長刀も欲しいな」


 そんなことを考えていると、商人が口を開いた。


「そういえば、少し前にも似たような若者がここを通ったな」


「俺みたいな?」


「ああ。武器を持っていた」


「その人、どうしたんです?」


 商人は少しだけ顔をしかめた。


「すぐ近くで魔物に襲われてな」


「それで?」


「死んだよ」


「……」


 俺は黙った。


「そのあと、戻ってきたんじゃ?」


 ゲームなら、死んでも再び戻ってくる。


 それが『王環』だった。


 けれど商人は首を傾げた。


「死んだんだから、戻ってくるわけないだろう?」


「……」


 胸の奥が、少し冷たくなった。


「そう……ですよね」


 俺は無理に笑った。


 もしかして。


 この世界には、ゲームのような復活はない。


 つまり――


 一度死んだら、本当に終わり。


「……まあ」


 俺は自分に言い聞かせる。


「死ななきゃいい」


 それしかない。


 俺は立ち上がった。


 霊馬を呼び出す。


 黒い身体が目の前に現れた。


「やっぱり、呼び出せるんだな」


 霊馬はいつでも呼び出せる。


 そして、必要がなければ消すこともできる。


 これもゲームと同じ。


「よし」


 俺は霊馬にまたがった。


 目指す場所は決まっている。


 まずは、この地域を進む。


 そして――


 最初の王臣。


 そこへ向かう。


「行くか」


 俺は霊馬を走らせた。

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