プロローグ
暗い。
何も見えない。
ただ、冷たい石の床に身体が横たわっている感覚だけがあった。
「……ん?」
俺はゆっくりと目を開けた。
最初に見えたのは、薄暗い石造りの天井だった。
「……ここ、どこだ?」
身体を起こす。
制服。
学校から帰ったときのままの姿だった。
夢……なのか?
そう思って頬をつねってみる。
「痛っ」
夢じゃない。
周囲を見回す。
広くはない石造りの部屋。
そして、正面には巨大な石の扉があった。
「……」
見覚えがある。
いや。
見覚えがあるなんてもんじゃない。
「ここ……」
俺は立ち上がった。
間違えるはずがない。
何度も見た。
何度も、この場所から始めた。
「『王環』……?」
その瞬間だった。
「目覚めたのですね」
女性の声が聞こえた。
「!」
振り返る。
けれど、そこには誰もいない。
「誰だ?」
「あなたは、王環を求めているのでしょう」
また声が聞こえた。
静かで、どこか不思議な声。
俺はしばらく黙り込んだ。
そして、正面の巨大な扉を見る。
「……本当に?」
胸が高鳴った。
もしここが俺の知っている『王環』なら。
この扉の向こうには――
広大な世界がある。
俺は扉に手をかけた。
「重っ……!」
ゲームではボタン一つで開いた扉。
現実では、両手で押しても簡単には動かない。
「くっ……!」
力を込める。
ギギギ……と、石が擦れる音が響いた。
少しずつ。
本当に少しずつ、扉が開いていく。
そして――
「……!」
光が差し込んだ。
眩しい。
思わず目を細める。
扉の向こうには、どこまでも続く草原が広がっていた。
遠くには山々。
森。
一本の道。
そして、その先に見える古い城。
「……」
言葉が出なかった。
ゲームの画面で何度も見た景色。
何度も走り抜けた場所。
何度も死んで、何度もやり直した世界。
それが今、目の前にある。
「本当に……」
俺は呟いた。
「『王環』だ」
背後から、女性が歩いてくる気配がした。
振り返る。
そこに、一人の女性が立っていた。
長い髪。
静かな瞳。
どこか現実離れした雰囲気を持つ女性だった。
「あなたは王環を求めている」
「ああ」
俺は答えた。
「七人の王臣を倒して、七つの王証を集める」
自分が何をするべきなのか。
それは知っている。
「その七つの王証を持って王都へ行く。そして、今の王を倒して王環を手に入れる」
女性は何も言わず、俺を見つめていた。
そして、少し離れた場所へ視線を向ける。
そこには一頭の黒い馬がいた。
普通の馬とは少し違う。
頭には小さな角がある。
「この子を連れていきなさい」
「馬?」
俺が近づくと、黒い馬は静かにこちらを見る。
「霊馬です」
「霊馬……」
ゲームで知っている。
けれど、今はまだ詳しいことを聞く気にはなれなかった。
俺は馬の隣に立った。
そして、もう一度世界を見る。
広い。
あまりにも広い。
これから自分が、この世界を歩いていく。
そう考えると、胸の奥から何かが込み上げてきた。
「どうかお気をつけて」
女性の声。
俺は振り返る。
「どうか……死なないで」
その言葉に、俺は笑った。
「大丈夫だって」
俺は胸を張った。
「俺、何周もしてるから」
俺はもう一度、広大な世界へ目を向ける。
知っている世界。
知っているはずの世界。
「よし」
俺は拳を握った。
「攻略開始だ」
新しく描き始めました。
コメントやリアクションもらえたら大変嬉しいです。
しばらくは、毎日19時頃に更新して行きたいと思っています。
拙い、読む辛い物語ではありますが応援よろしくお願いします!




