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『王環』―独りぼっちの死にゲー攻略―  作者: 玉葱将軍


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第二十二話


 イメイを倒した。


 その余韻が、まだ身体に残っている。


 旺樹は城の中を歩いていた。


 長い廊下を抜ける。


 やがて、外へ続く大きな門が見えてきた。


 門の前には、一人の男が立っている。


 鎧を身につけているが、こちらへ武器を向ける様子はない。


 旺樹が近づくと、男が声をかけてきた。


「お前……」


 男は旺樹の顔を見る。


「まさか……イメイを倒したのか?」


「ああ」


 その答えを聞いた瞬間。


 男の表情が変わった。


「そうか!」


 嬉しそうな声が響く。


「やったのか! あのイメイを!」


 旺樹は少し驚いた。


「そんなに嬉しいのか?」


「ああ。俺は、あいつが大嫌いだった」


 男は吐き捨てるように言った。


「この城にいる者の中にも、あいつを憎んでいる者は多い。だが、逆らうことなんてできなかった」


「……そうか」


「だから、お前には感謝している」


 男はそう言って、門へ向き直った。


「ここから先へ行くんだろう?」


「ああ」


「なら、気をつけろ」


 男が門の向こうを指差す。


「正面から出ると、矢が飛んでくる」


「矢?」


「大量にな。知らずに進めば、まず助からん」


 旺樹は思わず苦笑した。


「……あったな、そんなの」


「知っているのか?」


「まあな」


 ゲームでは有名な場所だった。


 門を出た瞬間、大量の矢が飛んでくる。


 初めて通ったときは、何が起こったのかも分からず死んだ。


 何度も挑戦して、矢が飛んでくる位置も、タイミングも覚えた。


「裏道もあるぞ」


 門番が言う。


「少し遠回りになるが、そちらなら矢は避けられる」


「敵は?」


「いる」


「多い?」


「ああ」


 旺樹は門の向こうを見る。


「じゃあ、正面でいいや」


「本当に行くのか?」


「ああ。ここは知ってるから」


 門番は少し不思議そうな顔をした。


 だが、すぐに笑った。


「そうか。なら、無事を祈っている」


 門番が門の前に立つ。


 そして、大きく息を吸った。


「Open the gate!」


 勢いよく叫ぶ。


 重い門が、ゆっくりと開いていく。


 旺樹は一歩踏み出した。


 その瞬間。


 ヒュンッ!


「来た!」


 一本の矢が、目の前を通り過ぎる。


 続けて二本。


 三本。


 次々と矢が飛んでくる。


 旺樹は走った。


 右へ。


 左へ。


 少しだけ速度を落とし、飛んでくる矢を見てから、再び前へ。


 ゲームで何度も見た光景。


 矢の軌道。


 発射される間隔。


 安全な場所。


 全部覚えている。


 だから、避けられる。


 矢が地面へ突き刺さっていく。


 一本が頬をかすめた。


「っ!」


 痛い。


 だが、止まらない。


 そのまま走り抜ける。


 しばらくして、ようやく矢が飛んでこなくなった。


 旺樹は足を止めた。


「……抜けた」


 振り返る。


 イメイの城が見える。


 何度もゲームで訪れた場所。


 何度も死んだ場所。


 そして今。


 そこを本当に、自分の足で越えた。


「……終わったんだな」


 小さく呟く。


 しばらく城を見つめたあと、旺樹は前を向いた。


 その先には、見たことのない景色が広がっていた。


 巨大な湖。


 どこまでも続く水面が、陽の光を受けて輝いている。


 湖の向こうには、白い建物がいくつも見えた。


 さらにその奥には、空へ伸びる巨大な塔。


 湖畔には緑が広がり、風に揺れる草が水面へ影を落としている。


 鳥の声が聞こえる。


 水の音もする。


 旺樹はしばらく、その景色を眺めていた。


「……綺麗だな」


 自然と、言葉がこぼれた。


 さっきまでいた場所とは、まるで別世界だった。


 荒れ果てた城。


 血と戦いの続いた道。


 そして、その先に広がる静かな湖。


 旺樹はゆっくりと歩き出す。


 ゲームでは何度も見た。


 何度も通った。


 それなのに。


 今、目の前にある景色は、ゲームで見ていたものとは少し違って見えた。


 風が吹く。


 水面が揺れる。


 草が揺れる。


 それ以外には、何もない。


「……本当に、ここまで来たんだな」


 旺樹は小さく呟いた。


 そして、湖の向こうへ続く道を歩き始めた。


 次の土地へ。


 湖と魔術の国へ。

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