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『王環』―独りぼっちの死にゲー攻略―  作者: 玉葱将軍


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第二十話


 イメイと向かい合う。


 先ほどまでとは、明らかに違う。


 斧と盾は消えている。


 代わりに、イメイの周囲には黒い魔力が渦巻いていた。


 旺樹は長刀を構えたまま、頭の中で攻撃パターンを整理する。


 まずは――ナイフ投げ。


 魔法で作り出したナイフを、何本もこちらへ飛ばしてくる。


 ゲームでは、何度も受けた。


 今のレベルより低い頃でも、一発なら耐えられたはずだ。


 もちろん、ゲームでは痛みなんてない。


 こっちで食らったら、絶対に痛い。


 でも――。


「最悪、一発なら食らえる」


 問題は次。


 イメイが大きく跳び上がる。


 そのまま巨大なハンマーを振り下ろす。


 あれは食らったら終わり。


 ただし――。


「隙は大きい」


 攻撃の後。


 あそこが狙い目だ。


 そして通常のハンマー攻撃。


 突進からの薙ぎ払い。


 それから、ナイフを両手で振り回すように連続で攻撃してくる。


「……あとは、これらの組み合わせか」


 旺樹は小さく呟いた。


 ここまで来たら、もう驚くことはない。


 攻撃の種類は分かっている。


 あとは、見極めるだけだ。


「とりあえず……」


 旺樹は長刀を握り直した。


「挑戦した回数なら、王環で一番戦った相手だ」


 一度、深く息を吸う。


「落ち着いていこう」


 イメイが動いた。


 ナイフが飛んでくる。


 旺樹は身体を横へずらした。


 一本。


 二本。


 三本。


 すべてかわす。


 続けてイメイが踏み込んだ。


 巨大なハンマーが横薙ぎに振られる。


 旺樹は後ろへ下がる。


 そのままイメイの横をすり抜ける。


 長刀を振る。


 浅い。


 だが、確実に入った。


「……そこだ!」


 旺樹が距離を取る。


 イメイが振り返った。


 再びナイフ。


 旺樹はかわす。


 しかし――。


「っ!」


 一本だけ、肩をかすめた。


 鋭い痛みが走る。


「痛っ……!」


 ゲームでは感じなかった痛み。


 だが、今は違う。


 それでも動きを止めない。


 イメイが追撃してくる。


 旺樹は後ろへ跳び、攻撃をかわす。


 そして隙を見つける。


 斬る。


 離れる。


 またナイフをかわす。


 斬る。


 離れる。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 イメイの体力を削っていく。


 だが、その代わり旺樹も無傷では済まない。


 ナイフが何度か身体をかすめる。


 そのたびに、痛みに耐えながら回復瓶を飲んだ。


 残りは――。


 一本。


「……あと一本か」


 瓶を確認する。


 イメイの体力も、かなり減っている。


 もう少し。


 あと少しで倒せる。


 そう思った。


 だから――。


 欲が出た。


 イメイがハンマーを振り上げる。


 旺樹は攻撃をかわす。


 その隙に斬り込む。


 あと一撃。


 そう思った。


 もう一度。


 もう一撃だけ。


「ここで……!」


 踏み込む。


 だが。


 イメイの身体が沈んだ。


「――!」


 まずい。


 突進。


 そこからの薙ぎ払い。


 分かっていた。


 知っていた。


 何百回も見てきた。


 なのに――。


 避けるのが、一瞬遅れた。


 巨大なハンマーが旺樹の身体をまともに捉えた。


「がっ……!」


 身体が宙を舞う。


 地面に叩きつけられる。


 息ができない。


 身体が動かない。


 なんとか起き上がる。


 視界が揺れている。


 残った体力は、ほとんどない。


 ナイフが少しかすっただけでも、もう死ぬ。


「……くそ……」


 旺樹は震える手で最後の回復瓶を取り出した。


 蓋を開ける。


 飲もうとする。


 その瞬間。


 イメイが目の前に現れた。


「させるか」


「……!」


 旺樹は慌てて後ろへ下がる。


 だが、身体が重い。


 スタミナがない。


 次の攻撃を避ける余力もない。


 イメイがゆっくりと笑った。


「惜しかったな」


 その声が聞こえる。


「お前も、私のコレクションに入れてやるよ」


 イメイが跳ぶ。


 高く。


 異常なほど高く。


 巨大なハンマーを振り上げる。


 あの攻撃だ。


 直撃すれば――死ぬ。


 旺樹は動けなかった。


 避けられない。


 逃げられない。


 そして――。


 これ、死んだな。


 そう思った。


 その瞬間だった。


 頭の中に、聞き慣れない感覚が響いた。


 ――霊媒、召喚可能。


「……え?」


 考えるより先に、身体が動いた。


「来い!」


 魔力が弾ける。


 旺樹の前に、大きな盾を構えた騎士が現れた。


「我が主――!」


 霊媒騎士長。


 騎士長は一歩前へ出る。


 巨大な盾を構えた。


 次の瞬間。


 イメイのハンマーが振り下ろされた。


 轟音。


 巨大な衝撃が周囲に響き渡る。


 だが――。


 騎士長は倒れない。


 盾一枚で、真正面から受け止めていた。


「……!」


 イメイの目が細くなる。


 判断は早かった。


 正面からでは倒せない。


 ならば――。


 イメイが一気に踏み込む。


 騎士長の横を抜ける。


 盾の裏側へ回り込む。


「なっ……!」


 騎士長が振り返ろうとする。


 だが、遅い。


 イメイの攻撃が騎士長を捉えた。


 身体が大きく揺らぐ。


「我が……主……」


 それでも騎士長は、最後まで旺樹の方を見ていた。


 そして――。


 親指を立てる。


「……!」


 その姿が、光となって消えた。


 イメイが振り返る。


 そして、目を見開いた。


 そこには――。


 回復瓶を飲み終えた旺樹が立っていた。


 息を整える。


 身体の痛みはまだ残っている。


 だが、動ける。


 長刀を握る。


 イメイを見る。


 もう逃げない。


 もう、回復瓶もない。


 頼れる仲間もいない。


 残っているのは――自分だけ。


 旺樹は静かに長刀を構えた。


「……ここからだ」


 イメイもハンマーを構える。


 互いの視線がぶつかる。


 最後の戦いが、始まった。

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