第十九話
イメイが踏み込んでくる。
旺樹は長刀を構え、真正面から迎えた。
その瞬間、アジュールの魔法が飛ぶ。
いくつもの光弾がイメイへ向かって走った。
イメイが盾を構える。
光弾が盾にぶつかり、弾ける。
「今です!」
アジュールの声。
「クラゲ!」
旺樹が叫ぶ。
霊媒クラゲが赤い霧を吐き出した。
イメイの動きがわずかに鈍る。
その隙を逃さない。
旺樹は一気に踏み込んだ。
長刀を振り抜く。
イメイは盾で受けようとするが、完全には防ぎきれない。
刃が身体を捉えた。
「ぐっ……!」
イメイが後ろへ下がる。
そこへアジュールの魔法が飛ぶ。
イメイは盾を構えながらかわし、すぐに旺樹へ向かって走り出す。
速い。
やはり速い。
だが、三人で戦うことで、その動きに対応できている。
クラゲが赤い霧を浴びせる。
アジュールが魔法を撃つ。
旺樹がその隙に斬り込む。
イメイの攻撃をかわし、距離を取り、また攻撃する。
少しずつ。
確実に。
イメイの体力を削っていく。
「このままなら……!」
旺樹は長刀を握り直した。
イメイが踏み込んでくる。
旺樹は攻撃をかわし、そのまま懐へ入り込んだ。
「ここだ!」
長刀を振り抜く。
イメイの身体が大きく揺れた。
そして――。
片膝をつく。
「今だ!」
旺樹は一気に距離を詰める。
「これで終わりだ!」
長刀を振り下ろす。
致命の一撃。
確かな手応えがあった。
イメイの身体が崩れ落ちる。
「……勝った?」
旺樹が息を切らしながら呟く。
アジュールも杖を下ろす。
クラゲも赤い霧を止めた。
終わった。
そう思った。
その瞬間だった。
倒れていたイメイの身体から、凄まじい魔力が噴き出した。
「……え?」
旺樹が目を見開く。
イメイがゆっくりと立ち上がる。
さっきまでとは明らかに違う。
身体から黒い魔力が溢れ出している。
そして、手にしていた斧と盾が消えた。
「……マジか」
旺樹の額から冷や汗が流れる。
頭の中に、嫌な記憶が蘇った。
そうだ。
あった。
ゲームでも――。
第二形態があった。
「やっぱり……第二形態あったかぁ……」
思わず声が漏れる。
イメイが手をかざす。
その手の中に、魔力が集まった。
次の瞬間。
何本ものナイフが現れる。
「……!」
イメイが腕を振る。
ナイフが一斉に飛んできた。
「危ない!」
旺樹が横へ飛ぶ。
ナイフが地面に突き刺さる。
一本、二本ではない。
何本も。
まるで雨のように降り注ぐ。
「魔法まで使うのかよ!」
旺樹は走る。
その背後で、イメイが手を握った。
巨大な魔力が集まる。
形を変えていく。
現れたのは――巨大なハンマーだった。
「なんだよ、それ……!」
イメイが振り回す。
地面が大きくえぐれる。
旺樹は間一髪でかわした。
その威力を見て、背筋が冷たくなる。
さっきまでとは別物だ。
速い。
そして強い。
何より――。
「くそ……!」
旺樹は歯を食いしばる。
イメイがハンマーを構え直した。
その視線が、旺樹ではなくクラゲへ向く。
「まずは――」
イメイが腕を振る。
巨大なハンマーがクラゲを捉えた。
赤い光が弾ける。
霊媒クラゲが消えた。
「クラゲ!」
旺樹が叫ぶ。
その直後。
イメイの視線がアジュールへ向く。
「次だ」
魔力で作られたナイフが飛ぶ。
「おっと!」
アジュールが杖を振る。
魔法で防ごうとするが、すべてを防ぎきれない。
ナイフがアジュールを捉える。
その身体が魔力の霧へと変わっていく。
「これは……少々、分が悪いですな」
アジュールが苦笑する。
「アジュール!」
「心配はいりません」
霧が消えていく。
「また、どこかでお会いしましょう」
その言葉を最後に、アジュールの姿が消えた。
静かになった。
旺樹は長刀を握る。
目の前にはイメイ。
もう、クラゲもいない。
アジュールもいない。
イメイが巨大なハンマーを肩に担ぐ。
そして、笑った。
「ここからは――」
旺樹をまっすぐ見据える。
「一対一だな」
旺樹は長刀を構え直した。




