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『王環』―独りぼっちの死にゲー攻略―  作者: 玉葱将軍


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第十四話


 トロールが武器を振り上げる


 旺樹は、その動きをじっと見つめた。


「……来る」


 巨大な武器が振り下ろされる。


 ドォン!


 地面が大きく抉れた。


 旺樹は横へ飛び退き、そのまま距離を取る。


 トロールの周囲では、霊媒毒娥がひらひらと飛び回っていた。


 小さな羽ばたきとともに、細かな鱗粉が舞う。


「効いてるな」


 トロールの動きが、ほんの少しだけ遅くなっている。


 大きな変化ではない。


 だが、確実に違う。


 ゲームのときに見慣れていた動きが、ほんの少しだけゆっくりになっていた。


「これなら、避けやすい」


 トロールが再び武器を振る。


 旺樹は一歩下がって避けた。


 そのまま長刀を構える。


「ここだ!」


 踏み込む。


 長刀がトロールの脚を捉えた。


 ザシュッ!


 浅い。


 だが、それでいい。


「一発入れたら離れる!」


 すぐに後ろへ飛ぶ。


 トロールが追ってくる。


 旺樹は走る。


 距離を取る。


 振り返る。


 トロールが武器を構えた。


「また来る!」


 振り下ろし。


 横へ。


 ドォン!


 地面が揺れる。


 その隙に、また踏み込む。


「今!」


 長刀を振る。


 今度は腕。


 刃が食い込む。


 すぐに離れる。


「よし……」


 攻撃を受けない。


 少しずつだが、確実に削れている。


 そして毒娥の鱗粉のおかげで、トロールの動きもわずかに鈍い。


「これならいけるかもしれない」


 旺樹はそう思った。


 だが――。


 トロールが突然、大きく身体を捻った。


「!」


 知っている動き。


 ゲームでも何度も見た。


「横薙ぎ!」


 旺樹は反射的に飛び退く。


 巨大な武器が目の前を通り過ぎた。


 その瞬間だった。


 ふわり。


 毒娥が旺樹のすぐ横を飛んだ。


「――!」


 次の瞬間。


 ドンッ!


 武器の先端が、ほんのわずかに毒娥へ触れた。


 毒娥の身体が淡い光に包まれる。


「毒娥!」


 光が弾けた。


 そこに、もう毒娥の姿はなかった。


「……消えた」


 旺樹は一瞬だけ動きを止めた。


 敵から狙われにくい。


 だからこそ、今のような偶然の一撃には弱い。


 ほんの少し掠っただけで消えてしまう。


「HP、ほとんどないって話は本当だったな」


 それでも。


 毒娥が作ってくれた時間は大きかった。


 トロールの動きは、まだ完全には元に戻っていない。


 わずかに鈍い。


「十分だ」


 旺樹は長刀を握り直した。


 トロールがこちらを向く。


 巨大な身体。


 巨大な武器。


 直撃すれば一撃で死ぬ。


 その事実は変わらない。


 だからこそ、無理はしない。


 攻撃を見て。


 避ける。


 隙ができたら斬る。


 そして、すぐに離れる。


 それを繰り返す。


「完全に動きを止めるまでは、無理か」


 旺樹は小さく息を吐いた。


 ここからは、自分一人。


 頼れるのは、自分の身体と、これまで何度も見てきたトロールの動きだけだ。


「……よし。ここからは俺一人だ」


 トロールが武器を構える。


 旺樹も長刀を構えた。


 次の攻撃を待つ。


 そして――。


 トロールが動き出した。

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