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『王環』―独りぼっちの死にゲー攻略―  作者: 玉葱将軍


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第十一話


騎士長を倒したあと、旺樹は街道をゆっくりと見回した。


 さっきまであれだけいた騎士たちは、もういない。


「……終わったな」


 少し休んでから、周囲を探索することにした。


 ゲームでは、敵を倒したら先へ進むことばかり考えていた。


 だが、ここは現実だ。


 使えるものがあるなら、拾っておいたほうがいい。


 少し歩くと、街道の端にボロボロの馬車が止まっていた。


「そういえば……」


 旺樹は馬車の後ろへ回る。


 記憶にある。


 ここには宝箱があった。


「やっぱりある」


 宝箱を開ける。


 中に入っていたのは、鉄球のついた武器だった。


「モーニングスターか」


 鉄球に鎖がついていて、その先には柄がある。


 振り回して使う武器だ。


 旺樹は持ち上げてみる。


「重いな……」


 少し振ってみる。


 扱えないわけではない。


 だが、長刀ほどしっくりこない。


「たぶん使わないな」


 それでも、旺樹はモーニングスターをしまった。


「売れそうだし」


 昨日、商人が言っていた。


 使わないものでも、売れそうなものがあれば持ってきてくれ、と。


 ゲームでは、アイテムを拾っても必要なもの以外は放置することが多かった。


 だが、今は違う。


「そういえば……これもゲームとは違うんだよな」


 ゲームでは、敵を倒して得られるポイントと、買い物に使うポイントは同じだった。


 敵を倒せばレベルを上げられる。


 そして、そのポイントで武器や道具も買える。


 だが、この世界では違う。


「レベルは勝手に上がる」


 さっきもそうだった。


 戦っているうちに経験を積み、自然とレベルが上がった。


 けれど、買い物はそうじゃない。


「お金を払って買う」


 つまり、現実のお金が必要になる。


「だったら、売れるものは売ったほうがいいな」


 旺樹はモーニングスターを見ながら頷いた。


 今後、武器や道具を買うこともあるだろう。


 そのためにも、お金は必要だ。


 街道の探索を続ける。


 騎士がいなくなったことで、今まで近づけなかった民家にも入れるようになった。


 どの家もボロボロだった。


 家具は壊れ、床には埃が積もっている。


「ここにも何かあるかな」


 一軒ずつ中を確認していく。


 そして――


「ん?」


 ある家の奥で、地下へ続く階段を見つけた。


「地下か」


 慎重に階段を下りる。


 薄暗い地下室。


 そこには、小さな宝箱が置かれていた。


「これもゲームにあったな」


 宝箱を開ける。


 中に入っていたのは、一つの指輪だった。


「タリスマン……」


 手に取って確認する。


 炎を思わせる模様が刻まれている。


「火属性の攻撃力を上げるやつか」


 旺樹は少し考える。


「俺、魔法使わないんだけどな」


 技量特化。


 今のところ魔法を使うつもりはない。


 当然、このタリスマンも自分には必要ない。


 それでも、旺樹はしまった。


「まあ、確認にはなるし」


 ゲームにあったアイテムが、本当に同じように存在している。


 それを確かめられただけでも意味はある。


「今まで拾ったものも、売れるなら商人に持っていこう」


 地下室を出る。


 街道へ戻った旺樹は、少し離れた場所から門を見つめた。


 その先には、城へ続く道がある。


 そして――


 その道にいる敵のことを、旺樹は知っている。


「……トロール」


 ゲーム序盤。


 何度も何度も殺された敵。


 巨大な身体。


 長い腕。


 見た目からは想像できないほどの素早い動き。


「騎士長でも、結構ギリギリだったんだよな……」


 旺樹は自分の手を見る。


 長刀を握る。


 さっきの戦いを思い出す。


 槍の間合い。


 盾。


 攻撃をかわすタイミング。


 何度も攻撃して、ようやく倒すことができた。


「このまま行って、トロールに勝てるか?」


 答えは、すぐには出なかった。


 ゲームなら分かる。


 何度も戦って、動きを覚えている。


 でも、この世界では一度死んだら終わりだ。


「……どうするかな」


 旺樹は地図を取り出した。


 騎士長から手に入れた、イメイの領地の地図。


 街道だけではない。


 領地の中には、いくつもの場所が描かれている。


 もしかしたら、まだ使える武器やタリスマンがあるかもしれない。


 もっとレベルを上げることもできる。


 回復瓶だって、もっと買っておいたほうがいい。


「このまま門をくぐるか……」


 旺樹は門を見る。


 その先には、トロールがいる。


「それとも、一度戻って整えるか……」


 地図を見る。


 せっかく手に入れた。


 使わない手はない。


「……うーん」


 旺樹は腕を組んだ。


 ゲームなら、迷わず進んでいた。


 でも今は――


 一度死んだら、終わりだ。


「ちゃんと考えたほうがいいな」


 旺樹は地図を見つめながら、その場に立ち尽くした。

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