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『王環』―独りぼっちの死にゲー攻略―  作者: 玉葱将軍


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第十話


街道へ戻った旺樹は、少し離れた場所から周囲を見渡していた。


 昨日まで戦っていた兵士たちの姿はない。


「……やっぱりか」


 昨日倒した兵士たちは、どこにもいなかった。


 ゲームなら、しばらく時間が経てば敵は元の場所に戻っている。


 だが、この世界では違う。


 倒した敵は、消えたままだ。


「リポップ……しないんだな」


 旺樹は改めて周囲を見た。


 敵はたくさんいる。


 それでも、一度倒した敵が復活する様子はない。


 それどころか、倒した敵が持っていた武器や装備も、残る場合と消えてしまう場合がある。


「完全にゲームと同じってわけじゃないか」


 これはかなり大きな違いだ。


 敵を倒せば、その場所の危険は確実に減っていく。


 逆に言えば、今いる敵をどう倒すかが重要になる。


 旺樹は街道の先を見る。


 そこには、まだ騎士たちが残っていた。


 数えてみる。


「……七人」


 そして、ゾンビ犬が一匹。


 その中には、ひときわ目立つ男もいる。


 騎士長。


 昨日の戦いでは姿を見ただけだった。


「真正面からは……きついな」


 七人に犬一匹。


 しかも、あの笛を持った兵士に見つかれば、一気に全員に知られる。


 そうなれば、昨日と同じように逃げることになる。


 いや。


 今日は少し違う。


 霊媒クラゲがいる。


「……まずは笛持ちからだな」


 旺樹は長刀を抜かず、慎重に街道を迂回する。


 敵の視界に入らないように、建物の陰を使って進んでいく。


 そして――


 見えた。


 笛を持った騎士。


 周囲を警戒しているが、旺樹にはまだ気づいていない。


「よし……」


 旺樹は背後へ回り込む。


 足音を殺す。


 一歩。


 また一歩。


 十分に近づいたところで、長刀を構えた。


 そして、一気に踏み込む。


 ザシュッ!


 致命の一撃。


 騎士は声を上げることなく、その場に崩れ落ちた。


「……よし」


 旺樹は素早く周囲を確認する。


 誰にも気づかれていない。


 そのまま騎士の身体を処理し、次の標的を探す。


 二人目。


 こちらも問題なく背後を取ることができた。


 同じように致命の一撃を入れる。


 静かに倒れる騎士。


「これで二人」


 残りは五人。


 そして、ゾンビ犬が一匹。


 旺樹は次の標的を探した。


 そして目に入ったのが――


 犬を連れた騎士だった。


「あいつだな」


 犬がいる以上、近づくのは少し厄介だ。


 旺樹は周囲に落ちていた石を拾う。


 いつもの方法だ。


 少し離れた場所へ、石を投げる。


 カツンッ。


 音が鳴った。


 騎士がそちらを見る。


 そして、こちらへ歩いてくる。


「よし……」


 旺樹は身を潜める。


 騎士が近づいてきた。


 あと少し。


 あと一歩。


 旺樹は一気に飛び出した。


 長刀が閃く。


 致命の一撃。


 騎士の身体が大きく揺らいだ。


 その瞬間だった。


「ワォォォン!」


「え?」


 ゾンビ犬が大きく吠えた。


「こいつ、吠えられるんだー……」


 そんなことを考えたのも束の間。


 遠くから足音が響いた。


「……やば」


 残った四人の騎士が、こちらへ走ってくる。


 その中には、騎士長もいる。


「一気に来たか……」


 旺樹は長刀を構える。


 逃げるか。


 それとも――


 クラゲを見る。


「……この人数なら」


 旺樹は霊媒クラゲを召喚した。


 ふわりと、半透明のクラゲが姿を現す。


 赤い酸の霧が周囲に広がった。


「頼むぞ!」


 騎士たちが迫ってくる。


 クラゲが一人の騎士へ向かい、酸の霧を浴びせる。


 その隙に旺樹が横から斬り込んだ。


 一人。


 続いて二人。


 クラゲが敵の注意を引き、旺樹がその隙を突く。


 昨日までとは違う。


 一人で全員を相手にする必要がない。


「いける……!」


 さらに一人を倒す。


 残るのは騎士長だけ。


 そう思った瞬間――


 ザンッ!


「!」


 騎士長の槍が、クラゲを貫いた。


 半透明の身体が大きく揺れる。


 そして――


 ふっと消えた。


「クラゲ!」


 召喚できない。


 消えた霊媒は、すぐには戻ってこない。


 旺樹は歯を食いしばる。


「……やっぱり、そう簡単にはいかないか」


 目の前には騎士長。


 手には長い槍。


 そして左腕には盾。


 ここからは――


 一対一だ。


 騎士長が槍を構える。


「来い……!」


 旺樹も長刀を構えた。


 騎士長が踏み込んでくる。


 槍が伸びる。


「速っ!」


 旺樹は身体を横へずらす。


 槍の穂先が頬のすぐ横を通り過ぎた。


「長い……!」


 長刀よりも間合いが広い。


 下手に近づけば、槍の餌食になる。


 距離を取れば、こちらから攻撃できない。


「厄介だな……!」


 再び槍が突き出される。


 今度は横へ跳んでかわす。


 そして、隙を見て斬り込む。


 だが――


 ガキンッ!


 盾に阻まれた。


「くそっ!」


 盾を持っているせいで、攻撃を当てても簡単には崩れない。


 長刀で盾を弾こうとする。


 だが、騎士長は身体ごと盾を支えて耐えている。


「こいつ……強いな」


 ゲームでは何度も戦ってきた。


 動きも知っている。


 それでも、実際に相手にすると違う。


 槍のリーチ。


 盾の防御。


 そして、こちらの攻撃を見てから動く判断力。


 簡単には崩せない。


 旺樹は一度距離を取った。


 息が上がる。


「焦るな……」


 無理をする必要はない。


 相手の動きを見る。


 槍を構え直した。


 次に来る。


 旺樹はそう判断した。


 騎士長が踏み込む。


 槍が突き出される。


 旺樹は紙一重でかわした。


 そして――


 一歩、踏み込む。


 盾の横。


 わずかに身体が開いている。


「ここだ!」


 長刀を振り抜く。


 ザシュッ!


 騎士長の身体から血が飛ぶ。


 それでも倒れない。


「まだか!」


 騎士長が槍を振り回す。


 旺樹は後ろへ跳ぶ。


 そして、もう一度構えた。


 何度も攻撃をかわす。


 何度も斬り込む。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 騎士長の動きが鈍っていく。


 旺樹自身も限界に近づいていた。


 腕が重い。


 呼吸が苦しい。


 それでも、以前とは違う。


「……レベルを上げたおかげか」


 長刀が手によく馴染んでいる。


 以前よりも振りやすい。


 動きも少し軽く感じる。


 技量を上げた効果が、確かに出ている。


「これなら……!」


 騎士長が最後の攻撃に出る。


 槍を大きく構えた。


 旺樹は待った。


 まだだ。


 もう少し。


 そして――


 槍が突き出される。


 旺樹は身体を横へ滑らせた。


 槍が空を切る。


 その瞬間。


 長刀を鞘へ戻す。


「終わりだ」


 戦技――居合。


 一瞬の間。


 そして。


 ズバァッ!


 騎士長の身体が大きく揺れる。


 そのまま、ゆっくりと地面へ倒れた。


「……はぁ……」


 旺樹は長刀を下ろした。


 終わった。


「……前回、逃げて正解だったな」


 もし昨日、無理に戦っていたら。


 クラゲもいなかった。


 レベルも低かった。


 そして、あの人数を相手にしていた。


「たぶん、死んでた」


 旺樹は倒れた騎士長を見る。


 そして、その身体に何かが残っていることに気づいた。


「……これか?」


 拾い上げる。


 一枚の地図だった。


 広げてみる。


「……おお」


 そこに描かれていたのは、街道周辺だけではない。


 広い土地。


 森。


 街。


 城。


 そして、その中心には――


 忌鬼の戦士、イメイ。


「忌鬼の戦士、イメイの領地……」


 旺樹は地図をじっと見つめる。


「これで領地内で必要なものの場所が、ある程度分かるぞ」


 旺樹は地図を大切にしまい、街道の先を見た。


 いよいよ――


 イメイのいる城が近づいてきた。

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