新たな旅路
あの後、ヨルが休んでいる間は、先に休ませてもらった俺とゼン、村の人達と都心部の衛生兵さんとで治療や、サシニアの魔草の駆除などを手分けして作業をこなしていた。
ゆっくり休めたヨルは、夕方頃には顔色も体調も良い状態で起きてきて。
「リンタロウ! ゼン! すまない! この村のみんなの治療があらかた終わるまで、俺、ここで治療を続けてもいいか。もし、先を急ぐのなら、俺を置いて行ってもらって構わない」
と、真剣な顔をして言うので、俺とゼンは責任感のあるヨルならそう言うであろう事を想定していた為、ヨルが起きてくるまでに答えは決まっていたんだ。
「ヨル、水くさい事言うなよ。俺達も乗りかかった船だ。最後まで一緒に治療とか手伝うさ」
「リンタロウ。ゼンも、いいのか?」
「あぁ、ヨルが起きてくる前にこうなる事を想定して、リンタロウと話し合って決めていたんだ。ヨルならそういうだろうから、一緒に最後まで治療して一緒に都心部へ向かおうと」
「二人とも…………、ありがとう!」
「おわぁ!」
「おっと」
俺達の言葉に感動したのか、ヨルが思いっきり俺とゼンに抱き着いてきた。
ぎゅうぎゅう俺達の事抱きしめながらありがとう、ありがとう。と何回も言っている。
ありがとうと言われる所までは予想通りの展開だったが、さすがにここまで喜ばれる反応は予想してなかった。
けど、ここまで喜んでくれると俺達も嬉しい。出会った理由は突然で、突拍子もなかった事とはいえ、長くもないが、短くもない時間をヨルとは一緒に旅してきたんだ。もっとヨルに教えてもらいたいこともあるし、俺としては前の世界と違って、同年代の人間とこういう普通の触れ合いができる経験がすくなかったから。ヨルみたいな存在はとても貴重で大切な存在にいつの間にかなっているのを自覚したのがヨルともっと一緒に旅を続けたいと思った理由の一つだ。
都心部で待ってくれているらしい、アンドレ君の事もあるから急がないといけないかもしれないけれど。それに関しては気にすることはないとオベールさんからのお言葉もあるし、元々急がないといけない旅でもないのだ。俺達はもう少し、この村に滞在することになった。
それから数日後。
「本当にありがとうございました」
「気にすることはない! 俺達も滞在中世話になったしな!」
村の病人たちの状態も安定し、あの一番重症だった子供も無事に立てるほどに回復したのを見届けて、俺達は再び都心部へ向かう事に。
今は村長さんや病院の医師の先生など村人に見送られている。
その中には、あの一番重症で右目まで負傷していた子供の姿も。
「兄ちゃん、本当にありがとう。俺達を救ってくれて」
「俺はお前達がここまで元気になってくれた姿を見せてくれたことが一番嬉しい」
ヨルと一番重症だった子供がそう話している間に、俺は少しだけ、まだこの村に残るというオベールさんと話をした。
「オベールさんすみません。後の事全てお任せする形になってしまって」
「構わない、元より私たちの仕事であったところを君達に助けてもらったのはこちらだ。我々もあと三日ほどすればサシニアの駆除などを終えて都心部へ帰る予定だ。それまで君達が滞在していれば都心部の城へと会いに来るといい」
「いいんですか?」
「あぁ、今回のお礼もしたいし、君は新しいパルフェットの息子という事は、私にとってリンタロウは新しい甥だという事だ。話を通しておくからぜひ、会いに来てくれ」
「ありがとうございます! ぜひ、伺わせていただきます」
まさかお城へお誘いいただけるなんて! 都心部だし、そりゃあ一国のお城があるのは想定してたけど、お城に伺える機会が実現するだなんて思ってもみなかった! 遠目で見て終わりだろうと思っていたから。
前の世界だとそういうお城系は観光名所に必ずなってるものだし、入れる機会なんてそうそう貰えるものじゃないだろう。
前の世界ではこういう旅や、観光なんかもした事ないから、そんな貴重な経験ができることが本当に嬉しく、あとでゼンに都心部で手続き終えれたら観光やいろいろ勉強するために数日滞在できないか相談しよう。
俺と話した後は、オベールさんはゼンとも少し話して、最後にヨルとも話していた。
「君の知識には本当に私も勉強させてもらったよ、ありがとう。本当に、私と一緒に働いてほしいくらいだった」
「すまない! それはないな! 俺は英雄王のような素晴らしい剣士になるんだ!」
「そうか。やはり気持ちは変わらないか。先程リンタロウにも話をしたが、もしよければ、数日後になるが一度都心部の城の私の元へと来てくれ。今回のお礼もぜひ三人共にさせてほしい」
「わかった! また都心部で会おう!」
そしてついに、お別れの時間に。
「滞在中は良くしてくださりありがとうございました。温泉また入りに来ます」
「こちらこそ、君達には感謝しかない。我々を助けてくれて本当にありがとう。どうか道中無事で」
村長さんに、最後、俺達の滞在中、治療のお礼という事で。寝泊まりする場所や、温泉や食事など無料でもてなしてくれたことに感謝を述べた。
村長さんはおおらかでとても良い人で、その人柄のおかげか、村中の皆さんがとてもいい人たちばかりだった。
「お前達! 傷が癒えてきたからといって、薬を塗るのを忘れたりするんじゃないぞ! 最後までしっかり治療するように」
「わかったよ! ヨルの兄ちゃん! 本当にありがとう!」
ヨルは最後まで怪我人の心配をしていて、本当に責任感があって優しい奴だ。
ゼンはなんでか、いつの間にか村の子供達から、冒険者であることから尊敬のまなざしで見られていて、大人気になっていた。
「ゼンさん! ぜひまた村へと来てください!」
「俺達またゼンさんの冒険の話聞きたいです!」
「またいずれ、近くをリンタロウと寄った時にまた来るよ」
やっぱり、S級冒険者というのは皆憧れるものなんだなぁ。
この世に五人しかいないんだもんな。そりゃそうか。
「じゃあ、皆さん! お元気で!」
「早く良く治すんだぞー!」
「世話になりました」
「こちらこそ」
「皆さん都心部までお気をつけて!」
「本当にありがとうございました!」
こうして俺達は村を出て、都心部への道を再度歩き始めたのである。
都心部までまだまだ道のりがかかるのかと村を出る前に、旅の打ち合わせでゼンに確認した際。ここからもう少し移動した先に大きな町があるらしく、なんと、そこから乗り物に乗って移動するそうだ。
その名も『新魔法石式魔道列車』。
最近できた最新式の列車らしく、話を聞く限りでは、日本の新幹線というより、リニアモーターカーに近いようで。
確か、前の世界での新しく開発された超電導リニアは磁力で移動しているが、新魔法石式魔道列車は魔法石の力によって動いているらしい。
何それ、楽しみが過ぎるんだけど。と、その時の俺は宇宙を見た。
しかも、なんと寝台列車らしく、一泊二日で都心部に着くそうだ。
これにはヨルも大興奮で、ヨルも今まで住んでいた村から遠くに出るのが今回の旅が初めてだし、もちろんそういった乗り物にも乗ったことないのだ。だから、カリスタに乗るのにも初めは大興奮していたし。
俺とヨルは興奮冷めないまま歩くので、新魔法石式魔道列車のある町に向かうのは、たぶん今までの旅路の中で一番早かったと思う。
予定通り、二日の旅路を進み終えた先には。
「へ……これが、列車…………?」
「わぁっ!! 凄いな! リンタロウ! ゼン! こんな大きな乗り物に乗るのかぁ!!!!」
「ヨル、あまり遠くへ行くな、はぐれるぞ」
大興奮のヨルは、駅に停車している列車に大興奮して近づこうと俺達の傍を離れようとするのでゼンがそれを止める。
けど、俺はそんなのそっちのけで唖然としてしまっていた。
なぜなら、俺が思っていた列車とは形がかけ離れすぎていたからだ。
列車というか一番前の車両はまるで4階建ての豪華客船のような、しかし、その後ろには2階建ての列車のような車両が数台つながっている、とても大きな水陸両用の列車だったのだ。
「なんだよゼン! こんな水陸両用の船か列車かよくわからん物に乗るとは聞いてないぞ!」
「ん? 言ってなかったか? ここから先、都心部までは海を越えなければいけないからな。陸も海も走れるこれに乗って行くのが一番安全で楽なんだ。カリスタの旅の疲れをとる事もできるしな」
「お前はそう、いつもどこか言葉が足りないんだよ。あと隠す」
『言ったつもりになって言葉が足りないのは申し訳ないから謝るが、別に隠していることはないんだがなぁ』とかなんとか言ってゼンは、とぼけているけど。
結構、お前が隠しているせいでお前の情報、知らないの多いからな! 俺! 年齢とか! S級冒険者の事とか! いろいろまだ絶対隠しているだろ!!
とまあ、そんなこと心の内で叫ぶしかないんだけれど。本人はあれで本気で隠しているつもりはないらしいし。聞かれなかったから言わなかっただけとか、言ったつもりだったとか、様子を見て後でいうつもりだったっていうやつで、本気で隠しているつもりないらしいし。聞けばほとんど答えてくれるし、俺も気になることは都度聞いて、解決するようになったし。
でも、なんでか分からないけど、年齢に関してはあいつ本当に毎回『俺、何歳だっけ』ってとぼけるの止めてほしいんだけど。
「さぁ、チケットを用意しよう。まだ朝日が昇ったばかりだ。列車がこちらに来ているタイミングで良かった。列車の部屋が空いていれば、これに乗ってすぐに都心部へ向かうことができる」
「わかった、行こう。ヨルー! 列車のチケット買いに行くぞ! 戻ってこーい!」
「おぉーう!!!」
人ごみに紛れて見えなくなりそうなヨルにそう声をかけて呼び戻す。
それにしても、まさかの海も走れる列車とは。
でたよ、ファンタジー。
こんな大きな列車に乗って一泊二日。
これだけ大きな列車だ。中にもいろいろと目新しいものがあるかもしれない。
少しワクワクとした気持ちを持ちながらチケット売り場へと行き、俺達は無事に今日の分の列車のチケットを購入できてたので、列車に乗車することになったのだ。




