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異世界とこちらの世界 終編





 そうか……。

 もし、俺が今考えていることが可能であれば、手錠を外すことができる。

 加えて手錠が外れたその先も憶測すると、それが実現すればこの場を逃げ出す事が可能かもしれない。

 もっと欲を出して考えてみると、捜索してくれているかもしれない味方に、俺達の居場所を知らせることができる未来も見えてくる。


 だがしかし、ここまでの内容はあくまでも俺の憶測。

 必ず俺の考えが成功し、俺もプティ君も助かると確実に胸を張って言えることではなくて、一か八かの賭けになってしまう。

 そして、賭けるのは俺とプティ君の今後の人生だ。

 俺の憶測を実行するにあたって、自分の人生を賭けるというのは自己責任だから覚悟を決めればすぐにでも行動を起こして構わない。

 けれど、これから先の人生が俺よりも長いはずの、プティ君の大事な未来を俺なんかの一存で決めてしまいたくはない。

 という気持ちが葛藤し、これからの行動の決断に迷いを生じさせる。








 悪い事に、今までの人生において、俺以外の人間の未来を俺が独断で決めるような出来事がなかったのだ。

 俺以外の存在に、俺の希望や願いを託し行動することもできなかった。

 俺はずっと、人じゃなくてモノと思われているんだと、そう感じていたからだ。


 俺の話や希望などは、基本、誰にも聞き入れてもらえない。

 話をしても希望しても、結局は否定され曲解され誤解され、俺の思いを正しく聞き取ってくれる者が居なかったから。

 誰かの未来や考えを変えること、決断する選択なんてできなかったのだ。

 成長するにつれて周りからどんどん孤立していた俺は、自分の希望や願いを込めた未来を託せる者なんていなかった。

 俺の人生は自分のものではない、俺以外の周りの願望、企み、考えなどに使用されるモノの一部だったから。


 だから、向こうの世界ではモノとして死ぬのかと、悔しいが絶望してた。


 まあ、絶対に周りの思い通りなんてなりたくなくて、二十歳を機に逃げ出して、ずっと籠の中の鳥でモノだったから、憧れていた一人で世界中を旅して周って満足したら死んでやろうなんて思ってたけどな!


 それが突然異世界に転移して、生まれる世界が違いましたなんて言われて、周りの俺に対する目線がガラリと変わっちゃって、選択肢を与えられて。


 この世界なら、俺の腐った人生を一からやり直せるんだ。

 生まれて初めて自由に話をして、意見を言って、希望を見出して、もっともっと先の未来を考えて自分の為にいろんなことを自由に使っていいんだって。

 視界や音や、香りや、感触や、味覚とか。

 闇より黒くて醜い汚泥に塗れていたそれらが、こっちの世界で過ごしていくにつれて洗い流されて、日に日に輝いていくのが温かくて、眩しくて。

 その輝きを出せたのは、洗い流すのを手伝ってくれたプティ君達のおかげなんだ。


 俺以外の人を生まれて初めて、心の底から大切だという気持ちさせてくれた人達と俺にとって、大切な宝物と感じさせてくれた存在の未来を、俺一人で決断しなくてはいけない。

 さらにその先の未来の救出を、本当に来てくれるかも分からない俺以外の誰かに託さなければならない。


 自分以外の他人の事を考え、他人の事を決め、他人に託す事がこんなにも怖いだなんて知らなかった。

 知ろうともしてなかった。


 俺って、なんでこんなにちっぽけなんだろ。

 今まで自分は何でも出来るとか思い上がってたのが恥ずかしすぎる。

 本当に大事な時には、何にも出来ねえじゃん。

 だっさ…………。











「……リ、にぃちゃ」

「っ! プティ君? 大丈夫?」



 俺が物思いにふけっていた感覚は長いけど、実際にはそんなに時間は経っていないみたいで逃走準備のできている荷馬車までは、まだ少し距離がある様子。

 思考の海にどっぷりと浸かってしまっていた俺を引き上げたのは、腕の中で辛そうに眠っていたはずのプティ君だった。



「に、ちゃ…………ぃたい、いたいのとんでけ…………」

「ぁ…………」



 熱に浮かされて身体も動かせず辛いはずなのに、プティ君は俺に優しく笑顔を見せ、さらには重だるく動かしにくいであろう手を伸ばして俺の頬を撫でて労りの言葉をかけてくれた。



「とんでけ、いたいの……とんでけー」



 ゆっくりと、凍り付いていた俺の脳と心を温めて溶かしていくのは、プティ君の言葉と弱々しいけど限りなく優しい、俺の頬を撫でてくれる小さな手だった。











 何やってんだろ…………。

 俺、馬鹿だなあ。

 自分がこんなに愚かだったなんて、初めて気づけたよ。



「大丈夫だよ、プティ君。大丈夫だからね。……ふふ、っていうか、そのおまじないこっちでも使うんだね」



 そう、大丈夫。

 必ず、プティ君をあの温かい場所へ帰してあげる。


 俺は強い決意を心に固め、普段より体温の高い腕の中にいるとても大事な、優しいぬくもりをもっと強く感じたくて柔らかい彼を抱えなおし、苦しめないように気遣いながらもギュッと抱き込んだ。

 そして、抱き込んだことによって近くなったプティ君の耳にだけ届くようにそっと声を出した。



「プティ君、先に謝っておくね、ごめん。ちょっと辛いかもだけど絶対助けるから、我慢してね」

「ぅ……?」



 言っている意味が分からないという顔でプティ君に見つめられたが、その表情があまりにも可愛くて仕方がない。

 突然の可愛さの供給に耐えるため、にやける口元を自分の掌で覆って、プティ君から少し視線を逸らして、可愛いの供給に感謝をし、自分の決意をより強固にする俺。


 よし、めちゃくちゃ元気と勇気と可愛いを貰えたので!

 潔く! やってやろうじゃねえの!!











 決意が出来た俺は、前後に居るリーダーの男とフードの男の様子を、気配だけ探ってみる。

 こちらが怪しい行動しないか、変な抵抗をこれ以上しないかと警戒されているのは当たり前だが、それはあくまで俺の身体の動きに対しての警戒だ。

 なので、目に見えない身体の中の動きであれば、あいつ等は気づけないのではないのだろうか。

 想像ではあるが、さらに魔力制御装置を付けられているので、漏れ出てすらいないであろう俺の魔力の動きは、おそらく分からないのではないかというこの状況。


 今しかないよな……。


 やったことないけど、やってみるしかない。

 俺は吹き出そうになる冷や汗さえ、犯罪者達に見られたら勘ぐられるのではと、汗が出てしまわないように慎重に抑える。

 気持ちが焦って走り出しそうな心臓の音は静かにさせる為に、水を浴びせるイメージで落ち着かせて、その反対にこっちの世界に来てから初めて知った、自分の身体の中にあるその存在を勇ましく苛烈になるように燃やしていく。

 目立たぬように、身の内に忍ばせながら、粛々と。


 初めての事をやる時というのは、どうしてこうも良い意味でも悪い意味でも気持ちが高揚してしまうのだろう。

 その高揚のせいで、犯罪者達に気取られませんように。

 思考の海に沈んでしまっていた時と同じで、慎重に事を進めているので感覚的には時間が長く感じているけど、実際に経過しているその間の時間は約三分程。


 もう、これくらいでいいのでは?

 

 身体の中で煌々と燃えるその存在に、身の内に秘め続けることが困難に感じてきたその時。











「おい、お前。何を考えてる」

「っ!」



 俺の背後に居たフードの男から、突然声をかけられる。

 ……ていうか、こいつ、喋れたのかよ。

 でも、フードの男の問いかけは当たり前か。

 さっきまで小さな抵抗とかをやってた奴が、三分程とはいえ何もしなくなったのだから。


 しまったな。

 つい集中しすぎた。



「…………あんた、喋れたんだ」

「答えろ。何を考えた」



 苦し紛れに話題を逸らそうとしても、そりゃだめか。

 ここまでだよなあ。

 でも、準備はできた。

 










「………………べーっ! 誰が答えるかよ!」

「っチ! シェイ!」



 何かを察したフードの男が大声を上げて、俺の前を歩いているリーダーの男に伝えようとするが、そんなの大人しく待つわけないだろ。








 その瞬間、俺は身の内で燃え上げれるだけ燃え上げさせた自分の魔力を、力の加減なんて考えずに思いっきり身体の外へと放出した。











 バキィィィン!!!!


 









 激しい破壊音と共に俺の手錠は粉々に破壊され、力一杯身体の外へと放出された俺の魔力は勢いの凄い衝撃波となって近くを歩いていた犯罪者二人を一気に吹き飛ばした。

 腕の中に居たプティ君はできる限り守りたいと思い魔力を放出したおかげか、俺の魔力放出にぽかんと驚いた顔をしてしまっているが、影響がなかったのかどうやら無事の様子。

 腕の中のプティ君が無事だと確かめられた事で、少しだけ安堵の息を吐く。

 けど今はそんな油断も危険な状況なので、すぐさまキュッと身を引き締めて、現状把握のために周りを見渡す。



「ぁ……うわー、ちょっとやりすぎた?」



 辺りを見渡すとそこは、イキイキとした草花や木々が踊る摩訶不思議な光景が広がってしまっていた。


 俺の周りどこを見ても薄暗い森の中であったはずの光景は消え去り、何故かちらほらと光を発している植物もいるおかげか周囲の明るさが増してしまった森。

 今更やっちまったなと思っても後悔はしない。


 吹き飛ばしてしまった犯罪者達はどうなったか。

 確認のために周囲を深く探ろうとしたその時、腕の中にいるプティ君の重さがぐんっと増した事でプティ君が気を失ったことに気づいた。



「プティ君!!」



 慌ててプティ君の顔を覗き込んで容体を見てみると、何故か熱にうなされていた時とは違う頬の赤みと表情で、目を回してしまっているではないか。



「きゅぅ…………」

「しまった! プティ君! 大丈夫!?」



 さっき確認した表情では影響がないと判断してしまったから油断した!

 そういえば、俺の魔力は匂いがするとか言われてたっけ?

 もしかして、匂いに酔った?

 というかこの場合は、魔力に酔ったと言った方がいいのか。


 体調が悪い所に、さらに魔力酔いという負担がプラスされた事でプティ君は目を回してしまったのだと推測はできるけど……。

 そんな魔力酔いを起こしたなんてファンタジーな症状。

 今まで一般ピーポーだった俺だぞ。

 どう対処すればいいかなんて分からないに決まってる!

 ただでさえプティ君くらいの年齢の子が熱を出してしまった際の対処法なんて詳しくないのに、そこにファンタジーな異常事態が起こってしまえばもう手に負えない。



「どうしよう。早く、誰かに診てもらわないと」



 吹き飛ばしてしまった犯罪者共の存在なんて頭から吹き飛んでしまった俺は、その場を走って逃げようと一歩足を踏み出したその時。

 ガサガサっと大きな音を立てて、前方からリーダーの男が吹き飛ばされた先から草花をかき分けながら這い出てきたではないか。



「っくそ、いったい……何をした…………」



 一瞬捕まるかもしれないと身構えたが、何やらリーダーの男の様子がおかしい。

 息も絶え絶えで起き上がる事ができないのか、こちらに向かって這いつくばって来て絞り出された声が、なんか今にも息絶えそう。


 もしかして、こいつも魔力酔いしてるのか?

 じゃあ、フードの男も?

 










 という事は…………。

 










 俺のせいで完全に気絶してしまったプティ君には申し訳ないが、地面にそっと寝かせて待ってもらう事にして、身体を生まれたての小鹿のように震わせながら起き上がろうとしているリーダーの男に、俺は自分の怪我の事なんてすっかり忘れて素早く近づく。

 急に近づいて来た俺にリーダーの男は驚き、どうにか身体を起こそうとするが酩酊状態で思うように動かない身体で起き上がろうとしても、その度に倒れこむのを何度も繰り返すだけだった。

 

 まるで本物の生まれたての小鹿のようだ。


 今の状況や目の前の人物との関係性とかを無しにした普通の場合であれば、ちょっと同情してしまう状態であるリーダーの男の目の前にしゃがみこんだ俺は、制御装置の無い自由になった両手でバスケットボールを持つような形をとり、バスケットボールの代わりに自分の魔力を丸め固めたイメージの魔力ボールを作ってみた。


 魔力ボールなんて初挑戦だったけど、案外上手くいったな。



「……ちょ、ちょっと、それ、どうするつもりですか」

「ん? こうする」



 俺が作りだした魔力ボールを見て、嫌な予感を感じ取った勘の良いリーダーの男は俺から逃げようとするが、上手く操れない自身の身体のせいで逃げることは叶わない。

 もちろん、そんなリーダーの男に俺は容赦はしないわけだが。

 日本人特有のとりあえず謝っとく精神で心の内側で軽く謝り、立派に作り上げた魔力ボールをリーダーの男に思いっきりぶつけてみるのであった。


 俺が作った特性魔力ボールは、リーダーの男にぶつかるとまるで針で刺された水風船のように勢いよく割れ、中身の水が重力に従い下へ流れるように魔力がリーダーの男へとたっぷりと注がれた。

 そんな凝縮された大量の魔力を一気に浴びたリーダーの男は、声も出せずにぐらっと白目をむいて、これぞ見本だと言えそうなくらい見事な地面の突っ伏しを見せて動かなくなってしまった。


 あれほど見事な突っ伏しを披露したのだから大丈夫だとは思うが、念のため本当にこれ以上動かないか、肩を揺すったり、頭を突いてみたりしたが無反応。



「…………効果絶大じゃん」



 そう。

 双子お兄ちゃんズに名付けられた破壊神という名の通りに魔力制御装置を破壊できたら、魔力で身体強化して犯罪者達に捕まる前に逃げてしまおうという作戦だったのだ。

 まさか、俺の魔力の性質特化のおかげで、やっかいそうなリーダーの男を戦闘不能にできたという想像以上の成果を上げてしまうとは洋装していなかったのだが。


 一か八かの人生初の大博打。

 これは成功でいいのではないだろうか。


 しかし、まだフードの男という敵が近くにいる。

 そちらも対処しなければと、己の破壊神と呼ばれた魔力のおかげで少し自信がついた俺は、もしかしたらリーダーの男の様にフードの男も酩酊状態かもしれない。

 この絶好のチャンスを逃がさないように、されど油断大敵と警戒心をむき出しにしながらフードの男がどうなっているか、吹き飛ばしたであろう先へ確かめに向かったのだが。


 なんと、フードの男は吹き飛ばした先で一発ダウンしておりピクリとも動かなかった。


 それよりも、吹き飛ばしたはずなのに地面に伏せられた頭にはしっかりとフードが被さっているのが謎で、フードによって隠れている顔が見えないのがすごく気になってしまう。

 せっかくだから今のうちにその顔を拝んでおこうかという好奇心がチラリと頭の中を過ったが、今はそんな余裕がある状況じゃないし、この逃げる絶好のチャンスを逃すわけにはいかないのですぐさま諦めた。


 そして、何事も念には念を入れるべし。

 すぐさま俺は、特性魔力ボールをフードの男にも叩き込んで止めをさしておいた。


 とりあえず、現状で身近な危険人物が戦闘不能であることを確認した俺は、プティ君の元へと急いで戻る。

 姿が見えたプティ君の元へ近づくと、どうやら俺の魔力のせいで変化してしまったここら一帯の森の異常に敵の仲間達が気づいたのか、荷馬車がある方向から微かにそれらしい音が遠くから迫ってきていた。


 せっかく一番厄介そうな敵二人がぶっ倒れてくれたんだ!

 また捕まってたまるか! このまま逃げてやる!


 俺はすぐさま身に着けていた仕事用のつなぎの上を脱ぐと、地面に寝かせていたプティ君を背中に背負い手錠はわざと付けたままにして彼の腕を俺の首にかけた。

 手錠に繋がっている鎖だけ邪魔だったので、試しに魔力込めて引きちぎろうとしてみたら簡単にちぎる事が出来た。

 今だけ破壊神でよかったと本当に思う。


 手錠のおかげでプティ君に力が入っていなくても、俺の首から腕がすり抜けない事を確認したら、一度は脱いだつなぎの上部をプティ君の上から被せるようにもう一度着る。

 子供とは言え俺と合わせて二人分の体積が増した分、前がなかなか閉まりにくいが大きめのつなぎだったおかげで無理矢理チャックを閉めることができた。

 これで服の上からプティ君の身体を後ろ手で支えることで、魔力を使って走っても振り落とさず、木々や草花の合間を縫っても知らぬうちに傷つける危険も少なくなければ、いざという時に両手も空くのでかなり自由が利くはず。


 これは以前、災害後の特集ニュースを見た時に知った知識だ。

 こんなところでこの知識が役に立つだなんて、思いもしなかったけど。


 もしかしたら、敵が後ろから攻撃を仕掛けるかもしれない危険もあるが、俺達は商品だ。

 プティ君の姿が見えないのに迂闊に攻撃してくることは少ないだろう。

 と、思いたい…………。

 とにかく今は、少しでも早く、この場を離れて逃げなくては。



「プティ君、お待たせ。皆がいるお家へ帰ろう!」



 気絶してしまったプティ君から返事はない。

 迫りくる喧噪を背に、俺は背中の温もりをしっかりと抱え、魔力を脚に集中させて走り出した。


 どれくらいの距離を魔力操作でスピードを上げながら走り続けられるか、試した事ないのでわからない不安を抱えて走り続けいるのに、かなりの距離を進んでも俺の魔力で変化した森の範囲がまだ抜け出せない焦燥感がより不安を煽るのが何とも言えない。


 けど、俺が抱えているのは不安だけじゃない。

 希望もある。


 月明かりが届きにくいただの薄暗い森だった場所に、これだけ広範囲を走っても終わらない俺の魔力で光る草花が生えた状態であれば、暗闇の中でさぞかし目立っているはずだ。

 俺達の味方がもしも探してくれている場合、遠目でも変化に気づいてくれる確率が上がるかもしれない。

 実際、犯罪者共のお仲間は異変に気付いてこっちに向かって来ていた。


 こんな広範囲で摩訶不思議な光る草花まで生やす予定は無かったが、それはそれで好都合。

 これが、俺の最後の博打だった。



「はぁっ! ……誰でもいい! 気づいてくれ!」



 いつ限界がくるか、いつ敵が追い付いて来るか。

 いつこの不安と焦燥感が終わるかも分からないこの時間が、じりじりとにじり寄って恐怖へと姿を変えてくるのが、まるで心を誰かに少しずつ握り潰されているようだった。


 でも、そんなのに負けるわけにはいかない。

 俺には、守らなくちゃいけない命がいるんだ。

 逃げ切らないといけない、絶対に!


 でも、もし…………。

 もし、誰か助けに来てくれるのなら。











「気づいてくれ! ――――――――ゼン!!!」



 誰も答えてくれない森の中を、俺は生まれて初めて命を懸けて走るしかなかった。











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