破壊神
人間ではなくなってしまったかもしれない事実から現実逃避したいところだが、人生そんな甘くはない。
とりあえず俺の種族は鑑定しなくては、はっきりしないこの話。
今後の予定の一部に入れなくてはいけなくなった。
「それにしても、リンタロウ様の香りも凄いですが、この草花も凄いですねえ。これも最初の種族の影響でしょうか?」
「それは俺もよくわからない。最初の種族が生命を司るとは言うからその影響だとは思うが、その実際はどういう力を持っているかはカルバーアでも極秘にされていて詳しい内容は王や教会の教皇と神子くらいしか知らない」
おぉう…………。
なんか、俺ってもしかしたら凄くやばい種族になっちゃったかもしれない……?
「「リーン……」」
「ん?」
「これ……」
「やる……」
「これは」
なんだか大人しいと思ってた双子お兄ちゃんズがなんと、俺が咲かせたであろう花で冠を作ってくれていた。
急いで作ったのであろう。
ちょっとあちこちほつれかけてるが、立派な花冠だ。
「「元気でる……?」」
「あぁ……元気でる。ありがとな! のせてくれるか?」
「俺がのせる!」
「俺ものせる!」
こんなの嬉しくないはずがない。
さっき気落ちした俺を気遣ってくれるその優しさが。
優しさとはこんなにもあたたかいのか……。
今まで感じたことがない感覚なので少し、くすぐったさもあるが、とても良い。
俺は頭を差し出し、双子お兄ちゃんズに花冠をのせてもらうのだが。
ズル! ぽすん……。
「「っは!!!」」
「あ……あ、ははははは! ちょっと大きかったな!」
「やっぱり多いっていったじゃないかあ!」
「シャルルが大きなのばっかり集めるからだあ!」
「あー、はいはい。喧嘩しない、喧嘩しない!」
俺は喧嘩を始めてしまそうな双子お兄ちゃんズを抱き寄せて喧嘩しないよう抑えた。
というより抱き着いただけだけど。
もちろん寝ているプティ君は起こさないように注意したけどね。
傍で見ているイケメンとベルトラン君はなんだかすごーくあたたかーい目で見てくる。
なんだよ。
仲間に入りたいなら入れてやるぞ。
今だけだからな。
そんなこと思っていたら…………。
「ねえ! この香りはどーしたのー!?」
再びパルフェット様の降臨だ。
「へぇー、なるほどねー」
屋敷の中で執務を再開しようとしていたパルフェット様は突然強烈な、身に覚えのある香りが香ったことで、その原因が不思議になり再び登場した次第であった。
ついでにパルフェット様のお仕事を手伝っていたセリューさんまでも登場。
もちろん。
俺達はパルフェット様達にこの香りは俺の魔力が原因であることを説明した。
「びっくりしたよ。突然世界樹の果実の香りがするんだもの。――――で、いつまでこの香りを放っているつもりだい? この香りが世界樹の果実と同じなら、あまり香らせておくのはおすすめしないけど」
「え、まだ匂います??」
俺の言葉に全員が頷く。
うそー。
ていうか、匂ってちゃまずいの?
「母上、この香りって香っていたら駄目なのですか?」
俺が思ったことを代わりに聞いてくれるベルトラン君。
さすが。
「まあ、あくまで世界樹の果実と同じならって話だけど、あの香りには生物、特に私たちのように魔力のある生物を引き寄せるんだよ。魔力を持っていないモノも引き寄せるらしいけど魔力ありほどではない」
「まあ、所謂フェロモンみたいなモノだな」
「え゛……」
「なるほど!」
「ふぇろもん……?」
「なにそれ?」
さっきのごろにゃん事件には理由があった。
パルフェット様の説明にイケメンが分かりやすい単語で簡潔にまとめる。
どうやらイケメンもパルフェット様と同じことを思っていたらしい。
それを聞いたベルトラン君は納得のいった顔をしたけど、双子お兄ちゃんズはまだその言葉自体知らないっぽい。
「うん。どうやら心当たりあるみたいだね」
これまた俺達は先程のごろにゃん事件の事を、パルフェット様達に説明することになったのだ。
「皆様、強い香りを直撃されたので正気を失ってしまったのでしょうな」
状況を把握したセリューさんは納得のいった顔で頷くとパルフェット様に目配せをする。
それを受けたパルフェット様も頷いているが…………なんだろう?
「屋敷の中まで強く香ってきたもの。そんな強い香り、食べたことある私でも経験ないよ。それに、この草花。この牧草地には生息しないはずの花まである 私の性質特化の再生に似ているようで似てない。
世界樹の果実と同じ香りがするだけでなく、この再生にも似た力。そして、リン君の種族。これは公にしない方がいいよ。
リン君の身のため、知る人は限られた人物でないと」
「俺のため…………」
うん。
…………理由は分かる。
だって、人魚伝説みたいな理由で《最初の種族》は絶滅したって噂流して身を隠すくらいだろ?
そんなのが現実に目の前にいたら……百パーセントマズイだろう。
死亡フラグしか立たん。
「リン君は賢いから、理由は分かるみたいだね。ゼン君とベルトランは言わずともわかるだろうけど、問題は………………。お前達!」
「「ほっ!! 俺?」」
パルフェット様は俺の顔を見て俺が理解できているのを把握し、イケメンとベルトラン君は俺よりも前に思っていたことなのか承知済みといった顔をしていたので何も言わなかったが。
問題は双子お兄ちゃんズらしい。
「お前達、このことは誰にも言ってはいけない! 絶対に!」
「「なんで??」」
「お前達はリン君が危ない目に合ってもいいというの? お前たちの好奇心旺盛でお喋りなところが全部ダメとは言わないけど。そのせいで大きな怪我をするだけじゃなくて、リン君がもしかしたら消えていなくなっちゃうかもしれないんだよ!」
「っひ! ……や、やだ」
「……リン、消えちゃうって、死んじゃうの…………?」
初めは何が悪いか分かっていない双子お兄ちゃんズ達であったが、凄い剣幕で子供に言うには刺激の強い言葉を言うパルフェット様に事が大きな事だと分かったみたいで。
怯えて泣きそうだ。
そ、そこまで言わなくても……パルフェット様。
でも今は口を挟むべきではないと分かるから言わないけど……。
「そうならないように、しっかりとリン君をお前達が守ってあげるんだよ。プティのように」
「「……っ!! 守る!! 俺達、お兄ちゃん!!!」」
「うん。いい子!」
パルフェット様は最後にそう言うと双子お兄ちゃんズをギュッと抱きしめた。
双子お兄ちゃんズが事を理解したのは良かったが。
パルフェット様。
俺、プティ君と同じ立ち位置って……。
一応双子お兄ちゃんズよりも年上で俺の方がお兄ちゃんだと思うのですが…………。
「よし、じゃあリン君。この魔力収めようか」
………………え。
「あの……収めるって、どうすれば?」
「そこはゼン君先生に任せます。あとよろしくね」
私は仕事に戻るからー!
そう言うとパルフェット様はセリューさんを連れて颯爽と屋敷に戻ってしまった。
「…………行ってしまった」
「母上は前からああいうところがあるので、気にしないでください」
ベルトラン君や双子お兄ちゃんズは慣れたモノなのだな。
「じゃあ、これをどうにか収めようか」
「「俺達が教えようか??」」
「俺も兄弟の中では魔力操作得意な方なので協力します」
その後、俺は眠っちゃっているプティ君をベルトラン君に変わって抱っこしてもらい、魔力操作をイケメンを主軸に双子お兄ちゃんズ、ベルトラン君にも協力してもらって教えてもらうのだ。
…………………………が。
「リン」
「お前」
「「やっぱりどんくさいな」」
「ぅぐっ……」
「これは……、ちょっと」
「さすがのベルトラン君でもフォローが難しいな」
俺は魔力操作で魔力を収めるよう努めたのだが、全くもって収まらず魔力がダダ洩れだった。
イケメンが魔力解放の時のように自分の魔力で魔力の操作の補助をしてくれたり、双子お兄ちゃんズが見本を見せてくれたり。ベルトラン君もコツやイメージを教えてくれたりしてくれたので、感覚やイメージはできていると思うのだが。
どんなに魔力を収めようと皆のアドバイスの通り試みても、俺の魔力が収まる様子はなかったのだ。
俺の魔力の匂いは少し収まった気がすると、ベルトラン君が苦し紛れに言ってはくれたけど正直そんなに変わってないと思う。
しかもだ。
俺の魔力がダダ洩れのせいか、俺がちょっと歩くたびに新しい草花がどんどん動く先々で生えてしまい、牧草地だったはずなのにちょっとしたお花畑ができてしまった。
あと、草花が生えるだけでなく、やっぱり遠目で見た牧草地が生き生きとしていたのは見間違いじゃなかったらしく本当にエネルギッシュに漲っていた。
俺、今まで大体の事はすぐにできる方だったんだけどな……。
「これだけの魔力を出したままというのも、魔力が枯渇してしまって危険な状態になるはずなのですが…………」
「リンタロウは魔力の量も人族の平均よりも多いようだな。枯渇する気配がない」
「どーすんだよ!? これ!?」
ダダ洩れとかなんかちょっと響きも嫌だし、歩けば草花生えてくるとか俺何処にも行けないじゃん!
「リーン! あっちにも花生やそう!」
「もっと生やそう!」
双子お兄ちゃんズはもう俺に魔力操作を教えることに飽きたらしい。
そっちのけで花畑を広げるのを勧めてくる。
「困りましたねえ。これを止めない事には…………」
「これは、俺も予想外だったからなあ…………」
「俺が一番思ってるよ!!!!」
このどうしようもない状況に俺は誰よりも頭を抱えた。
その時――――――――
「あぁもう。そんなことだろうと思ったよ」
「「あ、母上」」
…………パルフェット様?
仕事に戻っていたと思ったパルフェット様が、何やら小さな箱を持ったセリューさんを連れてもう一度戻ってきたではないか。
「はい。これ使って」
「?? これ、ブレスレット?」
セリューさんが持っていた箱の中から一つのブレスレットを取り出したパルフェット様は、それを俺に差し出してきた。
ちょっと俺には大きい気がするけど。
「これを手首に付けると……」
「ん? …………おぉ! サイズがピッタリになった」
パルフェット様がブレスレットを俺の手首に付けると、ちょっと大きかったブレスレットがピッタリサイズになったではないか!
凄い!
「サイズがピッタリになるだけじゃないよ」
「え? どういう?? ……」
「「クンクン」」
「おぉう、どうした?」
急に双子お兄ちゃんズが近寄ってきたかと思えばクンクンと匂いを嗅いでくるではないか。
え、俺また匂い増した?
「「……リン! 匂いが減ったぞ!」」
「え! ホント!?」
俺は匂いは分からないので実感がないのだが、横でベルトラン君もうんうんと頷いているので本当なのだろう。
「それは、制御装置ですか。パルフェット様はお持ちだったのですね」
せいぎょそうち??
…………制御装置!!
それって、魔力の!?
「そうそう。シャルルとサロモンは主人に似て生まれつき魔力量が多かったんだけど、私に似ずに魔力操作が苦手でね。幼い頃はよく感情が高ぶると暴発してたんだよ。これはその時使っていた魔力制御の魔道具。今でも、たまに力加減を間違えるからお仕置きで付けてやろうと思って残しておいたんだ」
でた! 魔道具!
…………ていうかちょっと待てよ?
双子お兄ちゃんズは俺の事どんくさいって散々言っていたのに、お前達も魔力操作苦手だったんじゃないか!
俺は勢いよく双子お兄ちゃんズを見ると、双子お兄ちゃんズはパッと視線を外して口笛吹き始める。
…………こいつ等、思っているよりいい性格してやがる。
とりあえず、魔力操作ができるまではこれを付けておくことになった。
ということは、その間俺はまだ生活に必要な物が使えないわけなので、パルフェット様達に助けてもらうのは継続となる。
その後は寝ていたプティ君を起こして一度皆で昼食をし、昼食を終えてから再び魔力操作の特訓をイケメンと子供達と夕方のお仕事の時間まで続けた。
結局その日は魔力操作はできずに終わった。
俺は夕方の子供たちのお仕事を手伝い、今日一日で沢山の慣れない出来事にクタクタになりながら皆で屋敷に戻る。
そうすると、パルフェット様がお風呂を沸かしてあるので子供達とお風呂に入るよう勧めてくれたので疲れをとるためにも喜んで入ることに。
「俺はドゥース様と話があるから一緒に行けない。残念だけど、皆でゆっくりしておいで」
「絶対お前とは入るつもりないからな!」
イケメンがいらない言葉を言ってきたが、無視だ。
ちょっと噛みついたけど。
俺は、ベルトラン君、双子お兄ちゃんズ、プティ君と一緒に風呂に直行した。
双子お兄ちゃんズはいの一番に服を脱ぎ捨て風呂場に駆け込み、俺とベルトラン君はプティ君の服を脱がせて風呂場に向かう。
「おっと……これって、濡れても大丈夫なのか?」
俺の腕に光るブレスレット。
魔道具って、なんか高価な物っぽいよな。
濡れて壊れたら困るし、ここは草花が生えるような場所でもないし、外さないといけないか?
これって外れるものなのかと、試しにブレスレットを引っ張ってみると、ピッタリサイズだったブレスレットはサイズが少し大きくなり簡単に外れた。
「あ、外れた…………」
とても簡単に外れたブレスレット。
外した直後、また魔力が漏れ出て何か起こるかと一瞬しまった! と焦って周りを見るが。
「リンタロウ様ー! どうかされましたかー?」
「「リーン! 早くー!」」
「リンにいちゃー?」
先に風呂場に入った子供達から声をかけられる。
あれ……皆俺の魔力の匂い感じてないっぽい?
……一度魔力を制御したから収まったままになったのか?
子供達から匂いの話は出てこないので魔力は収まっているのだろう。
そう思った俺は、脱いだ服の横に制御装置を置いて風呂場に入った。
中に入ると双子は既に頭をわしゃわしゃと泡立てて洗っており、ベルトラン君もプティ君の頭を濡らして髪を洗ってあげるところだった。
「お待たせ―」
「リーン、シャワー取って―」
「取ってー」
「あぁ、はいはい」
俺は前が見えなくなるまで泡でいっぱいになっている双子お兄ちゃんズに、言われるままシャワーヘッドを手に取って渡そうとした。
バキッ!!
「「「「え?」」」」
「ぅ?」
バキーン!!!
バシャァアアアア!!!!!!
「「「っぶ!!!!!」」」
「うわぁあ!!! リンタロウ様!?」
「っぅきゃぁ!」
シャワーヘッドが…………。
こ・わ・れ・た!!!!!!
シャワーヘッドを持っていた俺と近くにいた双子お兄ちゃんズは壊れたシャワーヘッドから勢いよく溢れるお湯に襲われて、ベルトラン君とプティ君にも余波がかかっている。
「って! リンタロウ様! ブレスレットは!?」
ベルトラン君はそう言うと俺の手から壊れたシャワーヘッドを抜き取る。
すると、ピタッと止まるお湯。
水が出なくなっただけでシャワーヘッドは壊れたままだけど。
「ちょっと!!! 何の音!? シャルル! サロモン! また何かやったんじゃないだろうね!?」
「俺達じゃないぞ! リンだ!」
「濡れ衣だ!」
着替えを持ってきてくれていたパルフェット様が風呂場に駆け付ける。
「ご、ごめんなさぁああああああい!!!!」
どうやら、ブレスレットは水に濡れても火に入れても大丈夫らしい。
俺がブレスレット外した直後、魔力の匂いがしなかったのは制御装置の効果が若干残っていたからだけど。シャワーヘッドを持つ頃には、俺の漏れ出る魔力はシャワーヘッドの魔力耐久量をオーバーしていたので、ぶっ壊してしまったとのこと。
もちろん。
俺はパルフェット様にそれはもう、怒られました…………。
タオル一枚で……。
俺はその事件の後、魔力の制御ができるようになるまでは、保護者の監視下以外での制御装置着脱の権利は無くなり。双子お兄ちゃんズには、濡れ衣を着せられた嫌がらせに破壊神という名で呼ばれるようになりました。
そうそう。
シャワーヘッドはパルフェット様の再生で元通りです。




