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第7話 母の言葉

 朝日が窓からこぼれ、シェランは大きく伸びをした。すると、机の上の携帯電話が、着信を知らせようと懸命に震えた。事務所にいたときは引っ切りなしに鳴っていた電話だが、今では開くことすら稀になっている。シェランは携帯電話を手に取って、画面を開けた。相手は自分の家からとなっていた。


「もしもし?」

『ああ、よかった。シェラン、あなたね?』


―お母さん

シェランは急に胸が熱くなった。それは、シェランの安否を気遣うものだったのだ。そういえば、事務所をクビにされてからほとんど連絡をしていなかったと、今更ながらに思い出した。不必要に心配をかけてしまったことを、申し訳なく思う。シェランは、母からの質問に答えていた。


『ところで、家に帰ってこないけど、何かあったの?』


それはつまり、今は何をしているのかということなのだろう。シェランは一瞬、言葉に詰まった。何と答えたら良いだろうか、と思案した。


「俺は、やりたいことが見つかったんだ。だから、心配しなくていい。」


何を、と聞かれるかもしれない。シェランは構えた。けれど、母親は敢えてそれを問おうとはしなかった。


『そう…それは良かったわ。いい?やりたい事には、たとえ力不足だと感じても、全力で取り組みなさい。お母さん、応援してる。あなたが頑張る子だって、信じているから…』


シェランは、何か熱いものが胸に込み上げてきた。純粋に自分を思う気持ちが、心の中に染み渡ってくる。それが感情を刺激し、渦巻いた。そして、のどや鼻の方に込み上げ、声にならずにせき止められている。何も言わないシェランに、母はでも、と続けた。


『でも、無理だけはしちゃ駄目よ?体を壊したりなんてしたら、お母さん、怒るから。』

「…分かってるよ。」


シェランは、電話の前で苦笑した。表情までは伝わらないだろうが、その声音の強いことを感じたのだろう。電話の向こうから、母の笑い声が聞こえた。


 そうだ、全力で取り組もう。彼女に全ては伝えられないかもしれない。けれど、自分の気持ちは、自分の力で精一杯伝えなくては。シェランは決意した。母親の言葉を、これほどまでにありがたく感じたのは初めてだった。

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