表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第6話 この気持ちは

 シェランがアクアの店に雇われてから数ヶ月が経っていた。いつしか寒さは和らぎ、かわりに熱気が肌に擦り寄るようになる。シェランは日の当たる街道を歩いていた。腕には日用品の入れられたビニール袋が掛けられている。アクアが料理に専念できるよう、食料品以外の調達はシェランがやっていた。それだけでなく、店の掃除など彼が手伝えることはすべてやっていた。シェラン自身、音楽に専念しろと言われればそれまでなのだが、ちょっとした出来事が作曲のヒントになることも多い。散歩を兼ねて、買い物に出掛けているのだ。


 けれど今、彼の心にあるのはたった一つのこと。タイムスケジュールに縛られ、せわしなく動いていたあの頃とは違う、穏やかな日々。その場をくれたアクアに、シェランは感謝せずにはいられなかった。いや、感謝という言葉では足りない、何か強い感情を抱いている。この気持ちを、どうやって伝えようか――シェランはいつもそのことを考えていた。幸い、自分は音楽家だ。音楽を媒体とした気持ちの伝達ができる。しかし、どうすればこの気持ちを伝えられるのか、分からなかった。どんな詞も、どんな旋律も、自分の心を捉えているように思えないのだ。シェランは探していた。だから、街を歩いて言の葉が舞い降りるのを待っていた。



「お帰り、シェラン。なんだか悪いね、買い物に行かせちゃって。でもありがとう。助かるよ。」

「いいって。俺は数え切れないほどの恩義を受けたからな。」


店へ帰ってきたシェランを迎えたのは、アクアの可愛らしい笑顔だった。その顔を見ると、いっそこのままでもいいように思えてくる。その反面、彼女を強く求める気持ちもあふれ出しそうになる。両者はいつも拮抗しているが、結局決定打のない後者が負けるのであった。口説き文句が見つかれば勝敗も変わるだろうか…およそ答えの見つかりそうにない問を、シェランは静かに自問した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ