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第4話 慌ただしい朝 賑やかな夜

 まだ闇の残る頃、少女の影は慌ただしく動く。ひやりとした独特の冷気の中、調理場を整え市場へ向かう。慣れた目つきで整然と並べられた食材を見、必要なだけ購入していった。店へ帰れば新たに仕事ができる。食材を整理して冷蔵庫に入れ、今日のオススメメニューを考える。そして今からでもできる仕込みをしておくのだ。


 小刻みに聞こえる包丁の音と鼻腔をくすぐる香りに、シェランは目を覚ました。少女―アクアの用意してくれた部屋から外を覗く。1階の活気を見れば、彼女がすでに働き出していることが分かる。日はようやく地平線を抜けたところだった。シェランは一度伸びをすると、欠伸をしながら下の店舗へ降りていった。


「あ、おはよう。ひょっとして起こしちゃった?」

「いや、大丈夫だ。」


降りてきたことに気づいたアクアが、明るく微笑んだ。シェランは寝ぼけ眼で返事する。実際はまだまだ眠たいのだが、何となく気になったのだ。


「何か食べる? 少し待っててくれれば作るけど…」


アクアは下ごしらえをしながら尋ねた。


「ありがとう、もらうよ。」

「じゃあ、ちょっと待ってね。」


一度下ごしらえを止めると、アクアは手際よく料理を作りはじめた。そのひとつひとつの工程は、料理をしないシェランから見ても手が込んでいることが分かる。自分に妥協を許さない。つまり、それだけこだわりを持って作っているということだ。彼女の料理の美味しさはここにあるのだと、シェランは理解した。お客さんに対する愛情。それこそが、このレストランの賑わいなのだ、と。シェランはそのひとつひとつを噛み締めた。優しい味わいが口の中に広がっていく。同時に、心の中も温まる気がした。この自分に歌わせるために作ってくれたのだと思うと、目頭が熱くなり、慌ててそっぽを向いた。明るくなりはじめた空に、鳥達の歌が響いていた。





 太陽が地平線に向かって沈んでいく頃、少女の経営するレストランは活気づき始める。そんな中シェランは、ふらりと下に現れてピアノを弾いた。客のリクエストに応えたり、自分の歌を披露してみたり。ただの食事場だったところに、音楽という娯楽が加わった。それも、酒場のような騒がしさではなく、むしろ静かな雰囲気だ。短くとも幸せな時間があるように、誰もが思っていた。

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