初めての人間界
人間界へ行く日、当日。
魔王の部屋にて…。
「おい、ハインツ。はしゃぎすぎだ」
「だって〜、楽しみじゃーんっ」
パンパンの荷物ぶくろを持ったハインツ。
「そんなに、何を持っていくんだ…まったく…」
ヴァルキリアムスとリノラがそれぞれ口を開く。
「ハッハッハ…クラウス、ハインツを見習えっ。せっかくの人間界なのだ。今日までよく働いてくれた。旅行と思って楽しんでだなぁ……」
「そ〜よ〜?3年会えないのは寂しいけど…」
「はぁ〜……もう腹は括りましたから、ご心配なく」
俺を人間界へ行かせるために、これから3年間の業務上のシステムを大幅に変える必要があっただろう。
かなり大変だったはずだ。
今更断るわけにもいくまい。
「ところでお前たち、そのまま人間界へなど行けぬぞ。はやく人間になれ」
「えぇ、後で変わりますよ」
「僕もクラウスと一緒に変わりまーっす⭐︎」
「うむ、よろしい。後のことは行けばわかる。準備は良いか?」
「かまいません」
「はーいっ⭐︎」
「では、いくぞ。クラウス…待っておるぞ…ハインツも頼んだぞ」
「父上……」
「御意!」
心配そうにリノラが見つめる中、ヴァルキリアムスが力強く呪文を唱える。
「ヴァル・エグゼディア・ラ・トランザ!」
クラウスとハインツが光に包まれる。
「チュン……チュン」
鳥の囀る声。
きらめく噴水と水の流れる音。
芳醇な薔薇の庭園の先に見える純白の城。
光が消えると、そこには人間の姿となったクラウスとハインツが立っている。
俺たちは、人間界へ降り立った。




