第10話 コーヒー一杯、敬語は二種類。
喫茶ロンドには、「いつもの」で注文を済ませる客が七人いる。
問題は、そのうち四人が同じものを頼まないことだった。
「いつもの」
午前十時すぎ、窓際の一人席へ座った徳田が言った。
七十前後。薄い灰色の帽子をかぶり、折り畳んだ新聞を脇へ置いている。玲奈が働き始めてから六日間、毎朝来ていた。
「かしこまりました」
芦屋玲奈は、迷わず厨房へ向かった。
「ブレンドを一つ、お願いいたします」
カウンターの中で、店主の老田が豆を挽きながら聞いた。
「今日は濃いほうか、薄いほうか」
玲奈は止まった。
「二種類、あるのですか」
「徳田さんの“いつもの”は三種類ある」
「増えました」
「昨日は薄め。その前は濃いめ。土曜はミルク付き」
「規則性は?」
「本人に聞け」
玲奈は客席へ戻った。
「恐れ入ります。本日の“いつもの”は、濃いめ、薄め、ミルク付きの、いずれをご希望でしょうか」
徳田は新聞から顔を上げた。
「あんたにコーヒー頼むと、銀行で融資の相談してる気分になるな」
「申し訳ございません」
「断られた」
「何をでしょうか」
「融資を」
「私ではございません」
「分かってるよ。今日は濃いの」
「承知いたしました」
「それだ、それ。その喋り方」
徳田は新聞を畳んだ。
「俺は客だけど、毎朝来てるんだ。もうちょっと普通でいい」
「普通、とは」
「そこから説明しなきゃ駄目か」
*
昼前、玲奈はカウンターの端に大学ノートを開いていた。
表紙には『接遇改善記録』と書いてある。
「作ったんですか」
桐生蒼真が、コーヒーカップを持ったまま覗き込んだ。
「徳田様から、普通に話すようご要望をいただきました」
「徳田さん、だね」
「はい。徳田さんです」
「今、言い直す前に一度飲み込んだでしょう」
「呼び捨てに近づいた気がして」
「“さん”は付いてるよ」
玲奈のノートには、二つの欄があった。
『敬語一種――初来店、商談中、急いでいる方、距離を望む方』
『敬語二種――常連、会話を望む方、店主の知人、融資を断られた方』
蒼真は最後の一項を指した。
「融資は接客上の分類ではないと思う」
「本日の重要情報です」
「重要だけど、記録しないほうがいい情報もある」
玲奈は線を引いて消した。
「では、一種と二種の境界を教えてください」
「正確には、敬語は二種類というより、尊敬語、謙譲語、丁寧語があって、待遇表現として考えるなら――」
「桐生さん」
老田が豆の袋を棚へ戻しながら言った。
「その説明を聞いた客は帰る」
「まだ客にはしてません」
「店員にも長い」
玲奈は新しいページを開いた。
「では、実例を集めます。桐生さんは、どのように話しかけられると心地よいですか」
「僕は、誤解がなければ何でも」
老田が言った。
「一番面倒な答えだ」
「質問の条件が広いんです」
「では、桐生さんは一種にします」
「どういう基準で?」
「説明が長くなる方」
「敬語の距離と説明の長さは別だよ」
「すでに長いので、判断は合っています」
蒼真は反論をやめ、コーヒーを飲んだ。
*
午後一時、立花玲央と神崎大和が店へ入ってきた。
玲央は稽古帰りで、黒いシャツの背中に養生テープの切れ端がついていた。設営を手伝った名残だった。
「いつもの」
「立花さんの“いつもの”は、ブレンドとプリンでよろしいですか」
「今日はナポリタン」
「違うではありませんか」
「注文を聞かれるところまでが、いつもの」
「それは注文ではなく、儀式です」
「いいこと言うね。二種っぽい」
玲奈の手が止まった。
「なぜ、その言葉を」
玲央がカウンターのノートを指した。
「さっき見えた。俺、何種?」
「接客上の記録です。お客様へお見せするものではありません」
「じゃあ、一種が上?」
「上下ではありません」
「二種が上?」
「上下ではないと申し上げています」
大和がソファへ座り、鞄を隣へ置いた。
「お前は、上下がない世界に五分いると体調を崩すのか」
「どっちか上だろ。数字が付いてるんだから」
「電話番号は一番大きい人が偉いのか」
「社長の番号は上に登録するだろ」
「連絡先の並べ方の話になった」
玲奈はノートを閉じた。
「一種は、より正式な敬語を使う方です。二種は、少し親しみのある話し方をご希望の方です」
玲央は大和を見た。
「正式なほうが上じゃん」
「お前は二種だ」
「まだ聞いてない」
「店に入って“いつもの”でナポリタンを要求する人間を、正式に扱う理由がない」
玲奈はノートを胸元へ引き寄せた。
「立花さんは、現在、二種です」
「現在?」
「今後のご希望で変わります」
玲央の目が輝いた。
「昇格がある」
「ありません」
「どうしたら一種になれる?」
「距離を望んでください」
「望む。すごく望む」
「では、ご注文を改めて伺います。立花様、本日は何をお召し上がりになりますか」
「ナポリタン」
「承知いたしました」
「冷たい」
「距離をご希望でしたので」
「二種に戻して」
「早いな」
大和が笑った。
*
その日の夕方、ロンドには一種と二種の噂が広まっていた。
原因は玲央だった。
本人は否定した。
「俺は、ひばりにしか言ってない」
「ひばりさんへ伝えた時点で、街へ放送したのと同じです」
玲奈が言った。
雨宮ひばりは、ソファの背へ頬杖をついていた。足元にはギターケースがある。
「私は三人にしか言ってないよ」
「誰に?」
「名前は知らない。知ってたら、もっと丁寧に伝えた」
「名前を知らない三人へ、なぜ店内の分類を伝えたんですか」
「この店、一種と二種があるんだって言ったら、二人はコーヒー屋の資格だと思って、一人は豆の大きさだと思った」
「一人も正しく伝わっていません」
「だから大丈夫かと思って」
「何が?」
ひばりは少し考えた。
「たしかに」
大和が会社帰りに来たときには、常連の三人がカウンターに並び、自分が何種か尋ねていた。
「私は、一種でしょう」
買い物袋を足元へ置いた女性が言う。
「先月、豆を一袋買ったもの」
「購入額の区分ではございません」
「じゃあ、来店回数?」
隣の男性が聞いた。
「俺は週三回来てるよ」
「回数でもありません」
「二種だと、何か付くの?」
徳田が濃いコーヒーを飲みながら聞いた。
「何も付きません」
「一種は?」
「より丁寧にお話しいたします」
「それ、罰じゃないか」
玲奈は返事に詰まった。
大和がカウンターの隅で、玲央を手招きした。
「面白くなってるな」
「俺のせいじゃない」
「今から、お前のせいにできる」
大和は鞄から名刺用紙を出した。会社で試し刷りに使った残りらしい。
「何するの」
「混乱を目に見える形にする」
「解決する気は?」
「目に見えたら、解決しやすいだろ」
大和はボールペンで用紙へ書いた。
『ロンド常連 二種 立花玲央』
「かっこいい」
「どこがだよ」
「一種も作って」
「お前、さっき二種へ戻っただろ」
「カードなら一種がいい」
美咲が仕事へ向かう前に店を覗いたのは、その瞬間だった。
大和の手元を見て、無言で名刺用紙を取り上げる。
「何、これ」
「会員制度」
玲央が答えた。
「今、生まれた」
大和が補足した。
「今、やめて」
美咲は紙を半分に折った。
「玲奈さん。人を数字で分けるなら、基準を先に説明しないと揉めるよ」
「説明したのですが」
「説明して揉めてるなら、分類が悪い」
「しかし、同じ接客では距離が遠いとおっしゃる方がいます」
「全員を二種類に入れなくても、徳田さんと普通に話せばいいでしょ」
玲奈はノートを見た。
「お一人ずつ覚える、ということですか」
「接客って、そういうものでしょ」
「小森さんは、冷蔵庫の食品を三十七種類に分けています」
「食材は陰で怒らない」
「この店の客は怒るよ」
徳田が言った。
「聞こえてたんですか」
「狭い店だからな」
ロンドでは、誰かの小声はだいたい全員の共有物になる。
美咲は時計を見て、立ち上がった。
「もう行く。玲奈さん、そのノートは客席に置かないこと」
「承知しました」
「今のは一種?」
「小森さんは同居人ですので、分類していません」
「よかった」
「ただし、家では指示が多いため、“店長相当”と記録しています」
「消して」
美咲が出ていくと、ひばりがノートの閉じた表紙へ指を置いた。
「私は何種?」
「まだ決めていません」
「じゃあ、零種がいい」
「零種はございません」
「最初みたいで強そう」
「数字を強さで考えないでください」
「大和は何種?」
「神崎さんは、ご本人が丁寧に扱われると裏があると思う、と」
「言ったな」
「ですから二種です」
「雑に扱ってくれとは言ってない」
「桐生さんは一種です」
「説明が長いから?」
ひばりが聞いた。
「それは最初の理由です。先ほど、ご本人から“誤解がなければ何でもいい”とのご希望をいただきました」
「それで一種?」
「何でもよいとおっしゃる方には、安全なほうを選びます」
大和は頷いた。
「分かる。昼飯を何でもいいって言うやつに限って、出したあと文句言う」
「僕は言わないよ」
答案を読んでいた蒼真が顔を上げた。
「まだ何も出してないのに反論した」
「今のは、僕の話だったから」
玲奈はノートへ小さく書き加えた。
『桐生さん――離れた席の会話も聞いている』
「それ、接客に必要?」
「不用意な発言を避けられます」
「店員じゃなくて、僕の取扱説明書になってきたね」
「一種と二種より、そっちのほうが売れそう」
玲央が言った。
「誰が買うんだ」
「玲奈さん」
「必要ありません。もう書きました」
蒼真は、自分の知らない間に説明書が完成していくノートを見つめた。
*
翌日、玲奈は分類をやめなかった。
代わりに、細かくした。
『敬語一種・会話短め』
『敬語一種・商品説明あり』
『敬語二種・新聞中は話しかけない』
『敬語二種・天気の話まで』
『敬語二種・演劇の話は禁止』
『敬語未確定・“いつもの”が毎回違う』
最後の欄には、立花玲央と書かれていた。
「俺だけ未確定?」
「観測するたび条件が変わります」
「俳優だからね」
「注文の話です」
玲奈は常連に、希望する話し方を一人ずつ尋ねた。
ところが、尋ねられた側も急には答えられない。
「普通でいいよ」
「普通の基準を確認しております」
「じゃあ、丁寧に」
「一種ですね」
「一種って言われると、偉そうで嫌だな」
「では二種に」
「格下げされたみたいでもっと嫌だ」
昼までに、ノートは矢印と訂正線で埋まった。
蒼真は向かいの席で答案を読んでいた。玲奈が五本目の矢印を引いたところで、赤ペンを置く。
「分類は、対象を理解しやすくするためにあるんだけど」
「はい」
「分類を維持するために対象を変え始めたら、順序が逆だと思う」
「どなたかを変えましたか」
「さっきの人、最初は普通に話してほしいだけだったのに、最後は自分を二種だと納得させられて帰ったよ」
玲奈は入口を見た。
「納得は、されていませんでした」
「そこは気づいてたんだ」
「はい。三度、首元を触っていました。不快なときの仕草です」
「じゃあ、どうして続けたの」
「決めておかなければ、また間違えるからです」
玲奈はノートの角を揃えた。
「私は、正解を知らないまま人に接することに慣れていません」
蒼真は何か言いかけた。
老田が空の豆缶を、二人の間へ置いた。
「暇なら補充」
「僕もですか」
「長い話を始めそうなほうも」
蒼真は立ち上がった。
「まだ一文しか話してません」
「顔が三段落だった」
*
午後三時を過ぎた頃、雨が降り始めた。
一番街を歩いていた人たちが、軒先から軒先へ移る。ロンドのある路地にも、傘を持たない人が次々と入り込んできた。
十席ほどの店は、十五分で埋まった。
入口脇には濡れた傘が重なり、椅子の背には上着が掛けられた。新聞を広げる余地も、客同士が距離を取る余地もない。
「ブレンド二つ。片方ミルク」
「紅茶、ストレート」
「すみません、先に会計できますか」
「プリン、まだある?」
玲奈は伝票を切りながら、ノートを開いた。
初めて見る客は一種。
徳田は二種・濃いめ・新聞中は話しかけない。ただし今日は新聞がない。
買い物袋の女性は一種から二種へ変更後、一種へ戻したが、呼称は“様”を嫌う。
玲央は未確定。
「玲奈さん、ブレンド三つ上がった」
老田が言う。
「どちらへお持ちすれば」
「薄いのが徳田さん。普通が奥の二人」
「奥のお二人は、一種でしょうか」
「今はコーヒーの種類だけ考えろ」
玲奈はカップを運んだ。
「大変お待たせいたしました。こちら、薄めに調整いたしましたブレンドコーヒーでございます」
「長い。冷める」
徳田が受け取る。
「こっち、水ください」
「ただいまお持ちいたします」
「会計、先にって言ったんですけど」
「順番に承っておりますので、少々お待ちくださいませ」
「雨、強くなる前に出たいんです」
入口近くの客が立ち上がった。傘立てから一本抜き、違う客の傘だと指摘され、また戻す。
狭い入口に三人が固まった。
そこへ、玲央が透明な名刺入れを掲げて入ってきた。
「二種会員です。席、ある?」
店内が静かになった。
玲央の名刺入れには、大和が前日書いたカードが入っていた。
『ロンド常連 二種 立花玲央』
「会員制度、あるの?」
入口の客が聞いた。
「ありません」
玲奈が即答した。
「でも、カードを」
「個人が勝手に作成したものです」
「一種と二種で、サービスが違うんですか」
別の客も聞く。
「違いません」
「昨日、二種はいつものって言えば通じるって聞いたけど」
ひばりから噂を聞いた三人のうち、一人らしい。
玲央が店内を見回した。
「もしかして、俺、まずいときに来た?」
「要するに、俺が行けばいいんだろ、とは言わないでください」
「まだ何も言ってない」
「言う前のお顔でした」
玲奈はノートを閉じた。
会計を急ぐ客、傘を探す客、サービスの違いを尋ねる客、注文を待つ客。全員へ正しい距離で接しようとして、誰一人前へ進んでいない。
玲奈はノートをカウンターの下へ置いた。
「お会計を先になさる方、こちらへお願いします。傘は、持ち手の色を一緒に確認します。立花さんは入口を塞いでいますので、外へ出てください」
「俺だけ敬語が消えた」
「急いで」
玲奈の声量は変わらなかった。
敬語だけが外れていた。
玲央は反射的に外へ出た。
「桐生さん、会計の列を一列にしてください。神崎さん、傘を一本ずつ見せてください」
「僕は店員では」
「今、決めました」
「経営判断が速いな」
大和が傘立てを抱えた。
「雨宮さん、お水をお願いします」
「どの人?」
「空のグラスがある方、全員です」
「分かりやすい」
ひばりは水差しを持った。
蒼真は入口の客へ、会計の順番を説明し始めた。
「現在、最初にお申し出になった方から――」
「桐生さん、十二文字以内で」
「お会計の方、こちらへ」
「できますね」
「僕にも敬語が薄くなってない?」
玲奈は答えず、伝票を受け取った。
買い物袋の女性は紅茶。カップを右側へ置くと、左手で財布を出しやすい。
奥の二人はブレンド。片方はミルク。注文したとき、ミルクと言った男性は黒い腕時計をしていた。
徳田は濃いめではなく、今日は薄め。すでに届いている。
初来店の客には、余計な説明をせず、必要なことだけ尋ねる。
「お砂糖とミルクは、使いますか」
「砂糖だけ」
「はい」
玲奈は一度もノートを開かなかった。
雨が弱まるまでの四十分で、注文の入れ違いは一つあった。
玲央が外で待たされていたことは、全員が忘れていた。
*
混雑が引いたあと、玲央は濡れた肩で店へ戻ってきた。
「俺、四十分、路地にいたんだけど」
「傘は?」
大和が聞いた。
「持ってない」
「雨宿りに来た客を追い出したんだ」
「会員なのに」
「会員ではありません」
玲奈はカードを名刺入れから抜いた。
「こちらは破棄します」
「記念に取っておきたい」
「誤解の原因です」
「俺が初めてロンドに所属した証明が」
「お前、劇団に所属してるだろ」
「代役候補は所属って言い切ると怒られる」
老田がカウンターへ、洗い終えたグラスを並べた。
「立花。四十分ぶん、皿を拭け」
「なんで?」
「二種会員の特典だ」
「特典って働くほう?」
「常連は忙しいと手伝う」
徳田が席から言った。
「今、初めて聞いた」
「今日できた」
玲央は黒いシャツの袖をまくり、布巾を受け取った。
「カード、返して。これで本当に二種になっただろ」
「ならないよ」
大和はカードを二つに破いた。
「作った本人が壊すんですか」
玲奈が聞く。
「広告は、効果が出すぎたら止めるのも仕事」
「昨日は“目に見えたら解決しやすい”と」
「見えた結果、悪化した」
「すごいですね。悪い意味で」
美咲が使うような調子で玲奈が言った。
大和は少し黙った。
「それ、誰に教わった?」
「神崎さんです」
「返されると腹立つな」
*
閉店後、玲奈は『接遇改善記録』のページを一枚ずつ外していた。
蒼真が向かいで、破られた紙を重ねる。
「全部捨てるの?」
「分類は、やめます」
「記録そのものは役に立つ部分もあったと思う。注文とか、アレルギーとか、本人が覚えてほしいと言ったことなら」
「では、許可をいただいたことだけ書きます」
玲奈は新しいページの上に、『注文記録』と書いた。
「桐生さんは、ブレンド。説明中は冷めても気づかない」
「後半は許可してないよ」
「観察記録です」
「観察記録も許可制にしようか」
玲奈は二本線で消した。
「話し方は、記録しません。その場で決めます」
「間違えることもあるよ」
「はい。そのときは、次に変えます」
老田が厨房の明かりを一つ消した。
「明日も間違えるぞ」
「明日は、今日とは違う間違いにします」
「それなら新人としては上等だ」
玲奈はノートを閉じた。
*
翌朝、徳田はいつもの席へ座った。
「いつもの」
玲奈は水を置いた。
「今日は、どれにしますか」
「そこは覚えてないのか」
「昨日は薄め、一昨日は濃いめ、その前はミルク付きでした。ですから、今日は決めつけません」
徳田は新聞を開いた。
「じゃあ、いつもの」
「三種類ございます」
「普通の濃さ」
玲奈は少し止まった。
「四種類目ですね」
「増やしといて」
「ノートへ書いても?」
「駄目だ。明日は違うのにする」
「では、覚えません」
「それも困るな」
玲奈は厨房へ向かった。
「老田さん、徳田さんの“いつもの”、四種類目です」
「それは、ただの注文だ」
徳田は新聞の向こうで笑った。
(第11話につづく)




