ゆづきちゃんの温もり
大三元の力を巡る運命は、まだ続いていた。
しかし。
その中で、確かに受け継がれていくものがある。
それは――
誰かを守りたいという想い。
光一は、神様から与えられた特別な世界にいた。
そこは、現実の世界とは違う場所。
争いも悲しみもなく、優しい光に包まれた世界。
大切な人たちを見守るため。
そして、残された想いを未来へ繋ぐため。
神様は光一に、この場所を与えた。
その世界の名は――
和光界
心を癒やし、優しい光で包む場所。
光一はそこから、結咲たちの姿を見守っていた。
小さな手で牌に触れる結咲。
守護者として歩み始めたあきら。
一族の誇りを胸に進む優梨。
そして、兄の想いを受け継ごうとする陽菜。
「みんな……」
光一は静かに微笑む。
自分が残したものは、大三元の力だけではない。
誰かを守ろうとする心。
その想いこそが、未来へ繋がっていく。
その頃。
陽菜は、光一が残した白と発を見つめていた。
兄が最後まで守ろうとしたもの。
それは、大三元の力だけではない。
「お兄ちゃん……」
「私も、誰かを守れる人になりたい」
陽菜は決意する。
光一の想いを受け継ぐため。
結咲を守るため。
陽菜は、くノ一の学校へ通い始めた。
忍術の修行は厳しかった。
何度失敗しても、陽菜は諦めない。
分からないことがある時。
陽菜は、彰へ相談する。
「彰さん」
「守るって、どういうことなんですか?」
彰は答える。
「強くなることだけじゃない」
「大切なものを失わないために、立ち向かうことだ」
陽菜は頷いた。
その言葉を胸に、修行を続ける。
そして。
新たな人物が動き始める。
名前は――
祢音。
祢音は、影月一族のくノ一。
影月一族は、危険な力を監視し、暴走を防ぐ役目を持つ一族だった。
しかし。
祢音は、力によって奪われた悲しみを忘れられずにいた。
過去。
祢音には幼い娘がいた。
守りたかった。
ずっと一緒にいたかった。
しかし。
大三元を巡る争いに巻き込まれ、その小さな命は奪われた。
祢音は、大切な娘を守れなかった苦しみを抱えて生きてきた。
そんな祢音に命令が届く。
「結咲を狙え」
祢音は結咲の元へ向かう。
しかし。
そこにいたのは、恐ろしい力を持った存在ではなかった。
小さな手で牌に触れる少女。
まだ言葉を話せない、小さな命。
「……この子が」
「大三元の力を持つ子……」
祢音には、ただ守られるべき幼い子にしか見えなかった。
その時。
彰が祢音の前に立つ。
「お前は誰だ」
陽菜も警戒する。
「ゆづきちゃんに近づかないでください」
しかし。
結咲は祢音を怖がらなかった。
小さな足で、祢音へ近づいていく。
「ゆづきちゃん!」
陽菜が呼ぶ。
それでも。
結咲は祢音の前へ行き、小さな手を差し出した。
祢音は驚く。
そして。
その手を握った瞬間。
失った娘の記憶が蘇る。
温かな手。
守りたかった命。
「……結咲ちゃん」
祢音の声が震える。
「どうして……」
「どうして私を怖がらないの?」
結咲は答えられない。
まだ話せないから。
それでも。
その手は離れなかった。
祢音の心は苦しみに包まれる。
自分はまた、誰かの大切なものを奪うところだった。
その夜。
祢音は一人で涙を流していた。
「私は……」
「娘も守れなかった」
「これ以上、誰かを傷つけるくらいなら……」
祢音は、自分の命を終わらせようとする。
その時。
小さな足音が聞こえた。
「……結咲ちゃん?」
そこには結咲がいた。
言葉はない。
それでも。
結咲は祢音の手を握る。
「どうして……」
「どうして私を止めるの……」
祢音の涙が落ちる。
結咲は何も言えない。
でも。
その瞳は、祢音に生きてほしいと伝えていた。
祢音は気づく。
失った命は戻らない。
でも。
これから守れる命はある。
「ありがとう……結咲ちゃん」
祢音は決意する。
影月一族の力を。
傷つけるためではなく。
守るために使う。
「私が……結咲ちゃんを守る」
あきらは祢音を見る。
「まだ信用したわけじゃない」
祢音は頷く。
「それでいい」
陽菜は微笑む。
「一緒に、結咲ちゃんを守りましょう」
和光界から、その姿を見ていた光一。
「また一人……」
「想いを繋ぐ人が増えた」
大三元の力は、誰かを支配するためではない。
守りたいと思う心が、人と人を繋ぐ力になる。




