平和
大三元の力を巡る運命の中でも。
結咲には、戦いとは離れた温かな日常があった。
結咲の家には、いつもの優しい時間が流れている。
父。
母。
祖父。
祖母。
曽祖父。
そして。
小さな結咲。
家族に囲まれながら、結咲は少しずつ成長していた。
ある日。
玄関から声が響く。
「ただいま!」
母が振り返る。
「帰ってきたのね」
そこにいたのは、一時留学から帰ってきた三人だった。
長男。
一輝
長女。
志希
次女。
美季
結咲の3つ子の兄と姉。
三人の姿を見た瞬間。
結咲は嬉しそうに手を伸ばす。
「あー!」
一輝が近づく。
「ただいま、結咲」
すると。
結咲は一輝を見て、
「にー」
と声を出した。
「……俺のこと?」
一輝は驚きながら笑う。
志希も近づく。
「私のことも分かる?」
結咲は笑顔で、
「ねー」
と声を出す。
三人は嬉しそうに結咲を囲んだ。
その様子を見ていた陽菜は驚く。
「結咲ちゃん、お兄さんとお姉さんがいたんですね」
陽菜にとって、一輝たちとの出会いは初めてだった。
彰は三人を見る。
「初めましてだな」
一輝が頭を下げる。
「結咲の兄、一輝です」
「長女の志希です」
「次女の美季です」
彰は頷く。
「俺は結咲の守護者だ。」
その夜。
家族みんなで結咲を囲む。
父が優しく抱き上げる。
「結咲、パパだぞ」
結咲は父の顔を見る。
そして。
小さな声で。
「……ぱぱ」
その瞬間。
父の表情が変わる。
「今……」
母が驚く。
「パパって言ったね」
父は嬉しそうに笑う。
「ありがとう、結咲」
次に母が手を伸ばす。
「ママは?」
結咲は母を見る。
「……まま」
母は優しく抱きしめる。
「結咲……」
祖父も嬉しそうに近づく。
「じーじは?」
結咲は祖父を見る。
「……じー」
祖父は笑う。
「呼んでくれたな」
すると。
祖母が優しく声をかける。
「ばぁばも分かるかな?」
結咲は祖母を見る。
いつも抱っこしてくれる人。
いつも笑顔で迎えてくれる人。
そして。
「……ばぁば」
小さな声。
祖母の目に涙が浮かぶ。
「ありがとう、結咲」
家族全員が笑顔になる。
その姿を見守る陽菜。
「結咲ちゃん……」
祢音も優しく微笑む。
「本当に、たくさん愛されているんですね」
彰は静かに頷く。
「守る理由は、力じゃない」
「こういう時間なんだな」
そして。
いつもの家族麻雀が始まる。
父。
母。
祖父。
祖母。
曽祖父。
一輝。
志希。
美季。
そして結咲。
小さな卓を囲む。
勝つためではない。
一緒に笑うための時間。
結咲は牌を見つめる。
小さな手で一枚を選ぶ。
最後の一枚を引く。
ツモ。
完成した役は――
平和
曽祖父は優しく笑う。
「平和とはな」
「穏やかで、争いのない形を表す」
「家族が笑って過ごせること」
「それこそが、本当の平和じゃ」
結咲はまだ全ての意味は分からない。
でも。
大好きな家族の笑顔を見て、
「あー」
と嬉しそうに笑った。
和光界から見守る光一。
「結咲……」
「君が守られている理由が分かったよ」
大三元の力よりも。
特別な運命よりも。
大切なのは。
誰かと笑い合える時間。
それが――
結咲にとっての平和だった。




