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ツモ姫  作者: 耀
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あんにゃと鳥

朝。

結咲の家では、いつものように賑やかな一日が始まっていた。

居間の畳の上では、結咲が小さな手で麻雀牌を並べている。

白。

發。

そして、一索イーソー

結咲は特にイーソーの牌がお気に入りらしく、何度も手に取っては嬉しそうに眺めていた。

「あんまり舐めるなよ。」

彰が笑いながら声をかけると、結咲はにこっと笑った。

少し離れた場所では、志希が洗濯物を畳み、一輝は新聞を読み、美季は朝ごはんの残りをつまみ食いしている。

「美季、また食べてる。」

「だっておいしいんだもん。」

「朝ごはん終わったばっかりだろ。」

いつもの家族のやり取りだった。

最近、彰は少しだけ悩んでいた。

自分は本当に結咲を守れているのか。

忍として、まだ未熟だ。

そんなことを考えていると、コトンと音がした。

結咲がイーソーの牌を落としてしまったのだ。

彰は拾い上げようとして手を伸ばす。

その瞬間――。

イーソーの牌が、ふわりと淡く光った。

「……え?」

彰が目を見開く。

次の瞬間、牌の絵から小さな鳥が飛び出した。

緑色の羽。

丸い体。

そして、どこか楽しそうな瞳。

「ピヨ!」

結咲は驚くどころか、嬉しそうに目を輝かせた。

彰は思わず後ずさる。

「な、なんだこれ……!?」

その声に、一輝たちも振り向く。

「どうした?」

「牌から鳥が……。」

「は?」

三人が近づいてくる。

鳥は彰の周りをくるくる飛び回った。

「初めまして、守る人!」

「僕はイーソーの鳥!」

「一索の牌に宿る、小さな案内役さ!」

美季が目を輝かせる。

「しゃべった!」

志希は驚きながらも、結咲が怖がっていないことを確認してほっとした。

一輝は苦笑する。

「結咲の周りは、本当に不思議なことが起きるな。」

イーソーの鳥は翼をぱたぱたさせながら歌い始めた。

♪ ピヨピヨ ピヨピヨ

♪ 小さな姫と守る人

♪ 強い力じゃなくてもね

♪ 大事なのはその心

結咲は大喜びで手を叩く。

「あー! あー!」

鳥は彰の肩にちょこんと止まった。

「君は難しく考えすぎだよ。」

「結咲が一番安心しているのは、誰のそばだと思う?」

彰は結咲を見る。

結咲は、まっすぐ彰を見ていた。

その時。

結咲が小さな手で彰の袖を引っ張った。

「ん?」

彰が顔を近づける。

結咲は一生懸命、口を動かした。

「あ……。」

小さな声。

そして、もう一度。

「あん……にゃ。」

彰は目を見開く。

結咲は嬉しそうに笑って、はっきりと言った。

「あんにゃ!」

イーソーの鳥が空中でくるりと回る。

「ピヨ!」

「それだよ、それ!」

結咲は嬉しそうに両手をぱたぱたさせる。

「あんにゃ! あんにゃ!」

一瞬、居間が静かになった。

そして次の瞬間。

「あははは!」

最初に笑い出したのは美季だった。

「彰、“あんにゃ”だって!」

志希も笑いをこらえきれない。

「かわいい……。」

一輝も肩を震わせながら笑った。

「結咲なりの“あきら”なんだろうな。」

彰は少し赤くなる。

「笑いすぎだろ……。」

美季は結咲の前にしゃがみ込んだ。

「結咲、もう一回言ってみて?」

結咲は嬉しそうに彰を指差す。

「あんにゃ!」

「あはは! 本当に言ってる!」

美季は床を叩いて笑う。

志希も優しく微笑んだ。

「ちゃんと彰のこと呼んでるんだね。」

その時、棚の上からまた歌声が聞こえた。

♪ あんにゃ あんにゃ

♪ 小さな姫の大好きな人

イーソーの鳥が楽しそうに歌っている。

美季は目を輝かせた。

「ねえ、この子飼えない?」

「鳥じゃなくて牌の精霊だろ。」

一輝が冷静に突っ込む。

志希は笑いながらお茶を用意した。

「朝から賑やかだね。」

結咲はぬいぐるみを抱えたまま、彰の膝にちょこんと座る。

「あんにゃ♪」

彰はその小さな頭を優しく撫でた。

「はいはい、あんにゃですよ。」

美季がまた笑う。

「もうそれ、正式名称でいいんじゃない?」

「やめろ。」

居間には笑い声が広がった。

結咲もつられて笑う。

「あんにゃー!」

その声に、家族みんなの顔が自然とほころぶ。

守護者とツモ姫。

そして、彼女を囲む兄姉たち。

賑やかで、少し不思議で、温かい。

そんな何気ない朝の時間が、彰にとって一番守りたいものになっていた。


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