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ツモ姫  作者: 耀
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25/31

母が見届けた未来

大三元を巡る戦いの裏で。

一人の女性は、長い間、罪と後悔を抱えて生きていた。

祢音。

影月一族のくノ一として歩んできた彼女は、愛する人も、守りたかった家族も失ったと思っていた。

しかし。

その悲劇の始まりには、誰にも知らされていなかった真実があった。

なぜ祢音は、愛した夫・成幸の一族を知らなかったのか。

成幸は婿として妻の家に入り、祢音が知っていた苗字は本当の血筋を示すものではなかった。

本当の一族名を知ることができなかった祢音。

そして、その血筋を突き止めた影月一族の上層部。

そのすれ違いが。

守るべき者を、敵へと変えてしまった。

皐は生きていた。

結咲と同じ血を継ぐ少女として。

そして。

祢音が失った娘として。

だが。

再会は、失った時間を取り戻すものではなかった。

母として過ごせなかった日々。

共に成長を見守れなかった時間。

それは、決して戻らない。

それでも。

娘の幸せを願う気持ちは消えない。

第20話。

「母が見届けた未来」

これは、失った家族を取り戻す物語ではない。

離れていても。

共に歩めなくても。

大切な人の幸せを願い続ける。

一人の母の物語である。

長い間。

祢音の中に残っていた疑問があった。

なぜ。

自分は愛した人の一族を知らなかったのか。

なぜ。

守るはずだった存在を、敵だと思ってしまったのか。

その答えが。

ようやく明らかになる。

影月一族の古い記録。

彰は一枚の書類を見つめていた。

そこに書かれていた名前。

成幸。

皐の父。

そして。

その本当の一族名。

「……そういうことだったのか。」

彰は気づく。

成幸は、婿として皐の母の家に入っていた。

そのため。

祢音が知っていたのは、婿入り後の苗字だけ。

本当の血筋。

本当の一族名。

それを祢音は知らなかった。

影月一族の上層部だけが。

古い記録から成幸の血筋を特定した。

そして。

判断した。

「大三元に関わる一族。」

「危険な血を持つ者。」

それだけの理由で。

敵と決めつけた。

祢音はその事実を聞き、言葉を失う。

「……私は。」

愛した人のことを。

娘のことを。

何も知らなかった。

知らされなかった。

でも。

知らなかったでは済まされない。

その頃。

皐もまた、過去の記録を調べていた。

自分の一族。

そして。

結咲との繋がり。

皐の一族は。

結咲と同じ血を継ぐ一族だった。

大三元を守る中心は優梨の一族。

しかし。

その力を支える者たちは、他にも存在していた。

皐の一族も、その一つだった。

だから。

影月一族は皐を狙った。

大三元の力を持つ結咲。

そして。

結咲と同じ血を継ぐ少女、皐。

二人の未来を奪おうとした。

「……私のせいだ。」

祢音は呟く。

「私が、何も知らなかったから。」

その時。

彰が言う。

「違う。」

「過去は変えられない。」

「でも、今なら守れる。」

祢音は顔を上げる。

その瞬間。

影月一族の残党が動き出す。

狙いは。

結咲。

そして皐。

長い因縁を終わらせるために。

「行くぞ。」

彰が走る。

隣には陽菜。

そして。

祢音。

「今度こそ。」

祢音は刀を握る。

「私は守る。」

戦いの中。

祢音は皐の前に立つ。

かつて。

守れなかった小さな命。

今。

目の前にいる娘。

「お母さん……。」

皐が呟く。

祢音は振り返らない。

涙をこらえる。

「あなたは。」

「あなたの人生を生きて。」

皐は理解していた。

母が苦しんできたこと。

自分を忘れたわけではなかったこと。

でも。

時間は戻らない。

戦いは終わった。

彰。

陽菜。

祢音。

そして。

結咲と皐。

それぞれの想いが重なり。

二つの命は守られた。

数日後。

祢音は成幸と再び向き合う。

昔、愛した人。

皐の父。

「ありがとう。」

成幸は静かに言う。

「皐を守ってくれて。」

祢音は首を振る。

「私は……。」

「守れなかった。」

成幸は目を伏せる。

「それでも。」

「皐は生きている。」

「それは、お前が愛していた証でもある。」

成幸には。

今の家族がある。

袮音一族が敵になった後。

長い時間を経て。

周囲の勧めで三留と再婚した。

そして。

新しい家族が生まれた。

皐には。

弟がいる。

「お姉ちゃん。」

そう呼ぶ小さな声。

皐が守る新しい家族。

祢音は遠くから、その姿を見る。

皐が笑っている。

弟と歩いている。

父と家族の時間を過ごしている。

胸が痛む。

自分が知らない時間。

自分が一緒に過ごせなかった日々。

でも。

それ以上に。

嬉しかった。

「幸せなんだね。」

祢音は小さく呟く。

夜。

祢音は結咲を見る。

小さな手。

昔の皐と重なる。

「今度は。」

「絶対に守る。」

彰が隣に立つ。

「寂しいですか。」

祢音は少し笑う。

「……少しだけ。」

「でも。」

遠くを見る。

「娘が笑っているなら。」

「それでいい。」

最後。

皐は家族と歩いている。

結咲は彰たちと未来へ進む。

そして。

祢音は少し離れた場所から見守る。

母は。

娘の隣にはいない。

でも。

娘の幸せを願う場所にはいる。

失った家族。

戻らない時間。

それでも。

守れた未来がある。

大三元を巡る物語は。

新たな未来へ進み始める。

祢音は、娘を守るために生きてきたはずでした。

しかし。

知らない真実によって、守るべき相手を傷つける側になってしまった。

それが、祢音にとって一番苦しいことだったと思います。

成幸の一族を知らなかった理由。

それは、ただの隠し事ではありませんでした。

成幸が婿入りしていたこと。

祢音を争いから遠ざけるために、詳しい血筋を伝えられなかったこと。

そして。

影月一族が、その血筋を敵と判断したこと。

いくつものすれ違いが重なり、大切な家族を引き離してしまいました。

でも。

皐は、決して不幸ではありませんでした。

父に守られ。

新しい家族に愛され。

弟たちと笑いながら生きていた。

それを知った祢音は、母として一番苦しい選択をします。

「自分の元へ戻す」のではなく。

「今ある幸せを壊さない」こと。

それは、祢音にとって本当の意味で娘を愛するということでした。

親子とは、いつも隣にいることだけが絆ではありません。

離れていても。

共に過ごした時間が少なくても。

相手の幸せを願える気持ちは、確かに家族の証です。

祢音は、失ったものを取り戻すことはできませんでした。

それでも。

最後に、娘が笑っている未来を守ることができた。

それが、祢音が長い苦しみの中で見つけた答えでした。

そして。

この物語は、ここで終わりではありません。

皐が辿り着いた光一の真実。

結咲に受け継がれる大三元の力。

彰たちが背負う未来。

まだ明かされていない運命が残っています。

祢音が守った未来が。

次の物語へ繋がっていきます。

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