表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツモ姫  作者: 耀
PR
20/31

守られた記憶

静かな夜。

皐は、父の残した古い記録を見つめていた。

そこには、自分が幼い頃に守られていた理由が書かれていた。

『皐を生かすためには、存在を消すしかない』

『あの子が狙われる限り、普通の人生は送れない』

皐の父は、娘を守るために決断した。

そして。

父の一族もまた、その決断を支えた。

皐を死んだと思わせる。

名前を隠す。

居場所を変える。

全ては、皐を守るためだった。

皐は知っている。

自分は捨てられたわけではない。

父も。

父の一族も。

ずっと自分を守ってくれていた。

だからこそ。

一つだけ、許せないことがあった。

「……母さん。」

皐は呟く。

なぜ。

なぜ自分を守ってくれなかったのか。

父の一族から聞いた話。

自分を狙ったのは、祢音の一族。

そして。

その中に、祢音もいた。

皐はそう信じていた。

その頃。

祢音は結咲のそばにいた。

小さな手で牌に触れる結咲。

その姿を見るたびに、胸の奥が痛む。

「……。」

昔の記憶。

小さな手。

温かな笑顔。

そして。

何度も呼んだ名前。

「皐……。」

祢音は今でも覚えている。

娘の名前を。

忘れることなどできない。

でも。

もう会えないと思っていた。

数日後。

皐は祢音の前に現れた。

「あなたが……祢音ね。」

祢音は警戒する。

「私の名前を知っているの?」

皐は静かに頷く。

「知っている。」

「あなたの一族のことも。」

祢音の表情が変わる。

「……何の話?」

皐は冷たい視線を向ける。

「私は、あなたたちに狙われた。」

「父と父の一族が、私を守ってくれた。」

祢音は言葉を失う。

そんな話は知らない。

自分が知っている過去とは違う。

「あなたの名前は?」

祢音が尋ねる。

少女は少し間を置いて答える。

「……皐。」

その瞬間。

祢音の世界が止まった。

「……皐?」

無意識に、その名前を繰り返す。

忘れたことのない名前。

失った娘の名前。

しかし。

祢音はまだ気づかない。

目の前にいる少女が。

自分がずっと探していた娘だということに。

「どうして……。」

祢音は小さく呟く。

皐は怪訝そうに見る。

「何?」

祢音は首を振る。

「……何でもない。」

皐は祢音を見る。

なぜか分からない。

初めて会ったはずなのに。

なぜか、この人を見ると胸が苦しくなる。

でも。

皐はその感情を否定した。

この人は敵の一族。

そう教えられてきたから。

その様子を見ていた彰。

「……。」

何かがおかしい。

祢音の反応。

皐の名前。

偶然とは思えなかった。

しかし。

まだ確信はない。

その夜。

暗闇の中で、一人の人物が呟く。

「まさか……。」

「皐が生きていたとは。」

その人物の手には、一族の紋章。

それは。

光一と関わったと噂される一族のものだった。

「ならば……。」

「光一が守ろうとした真実も、動き始める。」

祢音は一人、夜空を見る。

「皐……。」

もう一度だけ。

娘の名前を呼ぶ。

しかし。

そのすぐ近くに。

生きた娘がいることを。

まだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ